特定技能外国人を雇用する企業が知るべき義務と支援内容のすべて

特定技能外国人の雇用を検討している企業の皆様へ。労働力不足解消の切り札として注目される特定技能制度ですが、外国人を雇用する企業には様々な「義務」と、活用できる「支援」があります。本記事では、特定技能外国人を雇用する企業が知るべき情報を網羅的に解説し、制度を円滑に活用するためのポイントをお伝えします。

はじめに:特定技能制度とは?

特定技能制度は、国内で人材を確保することが困難な特定の産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるための在留資格です。2019年4月に施行され、現在では16分野(2025年6月時点)で外国人の受け入れが可能となっています。

特定技能外国人を受け入れることで、企業は労働力不足の解消に加え、職場の多様性向上やグローバル化の推進といったメリットを享受できます。しかし、その一方で、外国人を雇用する企業には、適切な労働環境の提供や生活支援など、多岐にわたる義務が課せられます。

特定技能外国人を雇用する企業の「義務」

特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、労働関係法令の遵守はもちろんのこと、特定技能制度独自の様々な義務が課せられます。これらの義務を怠ると、特定技能外国人の受け入れができなくなるだけでなく、企業活動にも重大な影響を及ぼす可能性があります。

1. 特定技能雇用契約の締結と適切な労働条件の確保

  • 日本人と同等以上の報酬の確保: 特定技能外国人の報酬額は、同等の業務に従事する日本人と同等以上である必要があります。これは、不当な低賃金労働を防ぎ、公正な労働条件を保障するための重要な規定です。
  • 労働基準法等の遵守: 労働時間、休憩、休日、時間外労働、深夜労働、年次有給休暇など、労働基準法その他の労働関係法令に則った労働条件を確保しなければなりません。
  • 社会保険・労働保険への加入: 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険への加入は必須です。これは、日本人労働者と同様に、外国人の社会保障を確保するための義務です。

2. 特定技能外国人支援計画の策定と実施

特定技能所属機関は、特定技能外国人が日本で安定して生活し、仕事に集中できるよう、きめ細やかな支援を行うための「特定技能外国人支援計画」を策定し、実施する義務があります。この支援は、登録支援機関に委託することも可能です。

支援計画で義務付けられている主な支援内容:

  • 事前ガイダンスの実施: 入国前に、労働条件、日本での生活情報、相談窓口などについて十分な説明を行います。
  • 出入国時の送迎: 入国時と帰国時の空港などへの送迎を行います。
  • 住居の確保・生活に必要な契約に関する支援: 適切な住居の確保をサポートし、銀行口座の開設、携帯電話の契約、公共料金の手続きなど、生活に必要な契約を支援します。
  • 生活オリエンテーションの実施: 日本での生活ルール(ゴミの出し方、交通ルールなど)、医療機関の利用方法、災害時の対応などについて説明します。
  • 公的機関への各種手続の同行: 転入届、住民票の取得、税金関係の手続きなど、役所での手続きに同行し、支援します。
  • 日本語学習の機会の提供: 日常生活や業務に必要な日本語能力の習得をサポートするため、日本語学習の機会を提供します。
  • 相談・苦情への対応: 仕事や生活に関する相談、苦情に対し、適切に対応できる体制を整えます。必要に応じて、通訳を介して対応します。
  • 日本人との交流促進: 地域社会や日本人従業員との交流の機会を設けることで、孤立を防ぎ、日本での生活への適応を促します。
  • 非自発的離職時の転職支援: 特定技能外国人が非自発的に離職した場合、新たな就職先を探す支援を行います。

3. 出入国在留管理庁への各種届出

特定技能所属機関は、特定技能外国人の雇用状況や支援状況について、定期的に出入国在留管理庁へ届け出る義務があります。

  • 特定技能外国人受入れ状況に係る届出: 四半期ごとに、特定技能外国人の在籍状況や支援状況などを報告します。
  • 支援計画変更に係る届出: 支援計画の内容に変更があった場合に届け出ます。
  • 特定技能雇用契約変更に係る届出: 雇用契約の内容に変更があった場合に届け出ます。
  • その他、変更が生じた場合の各種届出: 外国人の氏名や住所の変更、失踪など、特定技能外国人に係る情報に変更が生じた場合は速やかに届け出ます。

4. 適切な労務管理と安全衛生の確保

  • 労働時間の適正な管理: タイムカードや勤怠管理システムなどを活用し、労働時間を正確に把握し、過重労働を防止します。
  • 安全衛生教育の実施: 業務の安全確保のため、危険作業に関する教育や安全衛生に関する研修を日本語または母国語で実施します。
  • 健康診断の実施: 法令に基づき、定期健康診断を実施し、外国人の健康状態を管理します。

特定技能外国人を雇用する企業が活用できる「支援」

特定技能制度では、企業が義務を果たすだけでなく、外国人材を効果的に活用するための様々な支援が用意されています。これらの支援を上手に活用することで、特定技能外国人の定着率向上や企業の負担軽減に繋がります。

1. 登録支援機関の活用

特定技能所属機関は、特定技能外国人支援計画の実施を「登録支援機関」に委託することができます。登録支援機関は、出入国在留管理庁に登録された専門機関であり、特定技能外国人への支援を代行します。

登録支援機関を利用するメリット:

  • 企業の負担軽減: 支援計画の策定・実施に関する業務を委託することで、企業の担当者の負担を大幅に軽減できます。
  • 専門的な支援の提供: 登録支援機関は、特定技能制度や外国人支援に関する専門知識と経験を持っています。これにより、外国人材が安心して日本で生活できるよう、質の高い支援が期待できます。
  • 法的リスクの低減: 法令遵守の観点からも、専門家である登録支援機関に依頼することで、法令違反のリスクを低減できます。

2. 各種相談窓口の利用

特定技能外国人材の受け入れに関する疑問や課題が生じた場合、様々な相談窓口を利用できます。

  • 出入国在留管理庁の相談窓口: 特定技能制度全般に関する情報提供や相談に対応しています。
  • 外国人材受入れ支援センター(FASEC): 特定技能外国人の雇用に関する企業からの相談に対応しています。(外国人在留支援センター
  • 全国のハローワーク: 外国人材の紹介や雇用に関する相談に乗っています。

特定技能外国人の雇用成功のためのポイント

義務を理解し、支援を最大限に活用することに加え、特定技能外国人の雇用を成功させるためには、以下の点も重要です。

  • 明確なコミュニケーション: 業務内容や職場のルール、期待される役割などを明確に伝え、外国人材が安心して働ける環境を整えることが重要です。
  • 異文化理解の促進: 外国人の文化や習慣を理解し、尊重する姿勢を持つことが、良好な人間関係を築き、定着率を高める鍵となります。
  • 段階的な日本語教育: 業務に必要な日本語だけでなく、日常生活で役立つ日本語の習得もサポートすることで、外国人材の日本での生活の質が向上し、企業へのエンゲージメントも高まります。
  • キャリアパスの提示: 将来的なキャリアパスや技能評価の機会を提示することで、外国人材のモチベーション維持に繋がります。

まとめ

特定技能外国人の雇用は、企業にとって新たな活力を生み出す大きなチャンスです。しかし、その恩恵を最大限に享受するためには、企業が負うべき「義務」を正確に理解し、利用できる「支援」を積極的に活用することが不可欠です。本記事で解説した内容を参考に、特定技能外国人が能力を最大限に発揮できるような、より良い雇用環境を構築していきましょう。

ご不明な点や具体的なご相談は、専門家や登録支援機関にご連絡いただくことをお勧めします。


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「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法