「造船・船用工業」分野の特定技能ビザと技能実習制度の違いとは?|制度の比較と選び方ガイド
目次
はじめに
日本の造船・船用工業は、国際競争力を維持するために優秀な人材確保が欠かせません。しかし、少子高齢化や国内人材の不足により、外国人材の受け入れが重要な柱となっています。そこで登場するのが 「技能実習制度」 と 「特定技能ビザ制度」 です。どちらも外国人が造船分野で働くための制度ですが、その目的や仕組み、在留期間には大きな違いがあります。
この記事では、造船・船用工業分野における 特定技能1号・2号ビザと技能実習制度を徹底比較 し、企業・外国人双方にとってどちらが適しているのかを詳しく解説します。
1. 技能実習制度とは?
1-1 制度の目的
技能実習制度は、本来「国際貢献」を目的として、開発途上国の人材に日本の技術や知識を移転するために設けられた制度です。労働力確保ではなく「人材育成」が主眼とされています。
1-2 在留期間
- 技能実習1号:1年
- 技能実習2号:2年
- 技能実習3号:2年
➡ 最長 5年間
1-3 就労内容
- OJT(現場での実地訓練)が基本
- 受け入れ企業は「技能実習計画」を作成し、監理団体による指導を受ける必要があります
1-4 特徴
- 労働者保護よりも「育成目的」が強いため、労働条件に制約が多い
- 転職は原則不可
- 実習修了後は帰国が基本
2. 特定技能ビザとは?
2-1 制度の目的
特定技能は、労働力不足の解消 を目的に2019年4月に新設された制度です。特に造船・船用工業分野では、深刻な人手不足を補うための重要なビザと位置づけられています。
2-2 区分
- 特定技能1号:一定の技能と日本語能力を持つ外国人。単純作業を含む就労可。最長5年。
- 特定技能2号:熟練した技能を持つ外国人。家族帯同可。更新に制限なし=永続的な就労も可能。
2-3 在留期間
- 1号:最長5年(更新可能)
- 2号:更新制限なし(永住申請への道も開ける)
2-4 特徴
- 労働者としての位置付けが明確
- 転職可(同一分野内)
- 家族帯同可能(2号の場合)
3. 「造船・船用工業」分野での両制度の位置づけ
造船業は、船体ブロックの組立、溶接、仕上げ作業など幅広い職種を含みます。この分野は日本政府が特に人材不足を認めている分野であり、特定技能制度の導入により外国人雇用が大きく広がりました。
- 技能実習 → 技能習得が主目的、最長5年で帰国
- 特定技能1号 → 即戦力として就労、在留最長5年
- 特定技能2号 → 熟練技能者として無期限就労可、家族帯同可
4. 技能実習制度と特定技能制度の比較表
項目 | 技能実習制度 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|---|
目的 | 技能移転(国際貢献) | 労働力不足の解消 | 熟練技能による労働力確保 |
在留期間 | 最長5年 | 最長5年 | 更新制限なし |
家族帯同 | 不可 | 不可 | 可能 |
転職 | 原則不可 | 可能(同分野内) | 可能 |
活動範囲 | 実習計画に基づく | 制限なし(分野内作業可) | 制限なし |
将来性 | 帰国が前提 | 永住に直接つながらない | 永住申請が可能 |
5. 制度のメリット・デメリット
技能実習制度
- メリット:受け入れ実績が多く制度が安定
- デメリット:人材の定着が難しい、転職不可、労務トラブルが多い
特定技能1号
- メリット:即戦力、転職可能、労働者保護が強化
- デメリット:在留は5年まで、家族帯同不可
特定技能2号
- メリット:無期限就労、家族帯同可、永住権取得可能
- デメリット:高い技能水準が必要
6. どちらを選ぶべきか?(企業側の視点)
- 短期的な労働力補充 → 技能実習制度
- 中長期的な人材確保 → 特定技能1号・2号
特に造船分野では、熟練工不足が深刻であるため、将来的に 特定技能2号の人材育成を見据えた受け入れ が重要です。
7. よくある質問(Q&A)
Q1:技能実習から特定技能へ移行できますか?
A:はい、可能です。技能実習を修了した人材は、試験免除で特定技能1号に移行できます。
Q2:造船分野で特定技能2号を取得する条件は?
A:所定の技能評価試験に合格する必要があります。詳細は 日本海事協会公式ページ を参照ください。
Q3:特定技能1号の在留5年後はどうなりますか?
A:原則帰国ですが、2号へ移行できれば在留継続が可能です。
Q4:企業にとってのコストは?
A:技能実習は監理団体費用が発生しますが、特定技能は直接雇用のためコスト削減につながる場合があります。
8. 専門家からのアドバイス
造船・船用工業分野においては、技能実習制度は依然として活用されていますが、中長期的な人材戦略を考えるなら特定技能制度が有利 です。特に、2号へのステップアップを目指すことで、熟練した外国人材を日本に定着させることが可能になります。
まとめ
- 技能実習は「育成目的」、特定技能は「労働力確保目的」
- 在留期間や転職可否、家族帯同の有無に大きな違い
- 造船・船用工業分野では、特定技能2号が人材定着のカギ
今後の造船業界の発展のためには、技能実習と特定技能をうまく使い分け、外国人材が安心して働ける環境を整えることが重要です。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |