これ一本で完結!「技術・人文知識・国際業務」ビザ取得の教科書

はじめに

日本での就労を目指す外国人の方、また外国人を雇用しようと考えている企業にとって、「技術・人文知識・国際業務」ビザは最も一般的な在留資格の一つです。しかし、その取得要件は多岐にわたり、申請には細心の注意が必要です。

本記事では、2025年現在の最新情報に基づき、「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得要件、申請時の注意点、そして取得を成功させるための秘訣を徹底解説します。

「技術・人文知識・国際業務」ビザとは?

「技術・人文知識・国際業務」ビザは、日本の公私の機関との契約に基づいて行う活動で、以下のいずれかの業務に従事する場合に付与される在留資格です。

  • 技術:理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務
  • 人文知識:法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を要する業務
  • 国際業務:外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務(翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務)

1. 「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得要件

このビザを取得するためには、主に以下の3つの要件を満たす必要があります。

1-1. 学歴・職歴要件

申請者が従事しようとする業務内容に応じた、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 大学卒業:従事しようとする業務に係る科目を専攻して日本の大学を卒業していること、またはこれと同等以上の教育を受けていること。
  • 専門学校卒業:従事しようとする業務に係る専門課程を修了していること。特に、日本の専門学校を卒業している場合は、専門士または高度専門士の称号を有している必要があります。
  • 実務経験:従事しようとする業務に関して、10年以上の実務経験を有すること(国際業務の場合は3年)。ただし、大学等を卒業している場合は実務経験が不要となる場合があります。

ポイント:卒業した学校の専攻科目と、従事する業務内容の関連性が非常に重要です。文系の方がITエンジニアとして申請する場合など、関連性が低いと判断されるケースでは、追加資料の提出を求められたり、不許可になったりする可能性があります。

1-2. 業務内容要件

申請者が日本で行う活動が、「技術・人文知識・国際業務」ビザの対象となる業務である必要があります。具体的には、以下の点が審査されます。

  • 専門性・関連性:従事する業務が、申請者の有する技術、知識、経験と関連性があり、専門性を要するものであること。単純労働や、専門性を要しない業務は対象外です。
  • 正社員としての雇用:原則として、日本の企業に直接雇用され、正規の従業員として働くことが前提となります。契約社員や派遣社員の場合でも許可されるケースはありますが、安定性や継続性が厳しく審査されます。
  • 職務内容の明確性:会社での具体的な職務内容が明確であり、ビザの活動内容と合致していることを客観的に示す必要があります。

1-3. 雇用元(企業)側の要件

申請者を受け入れる企業側にも、以下の要件が求められます。

  • 安定性・継続性:企業の経営状況が安定しており、外国人材を継続的に雇用できる経済的基盤があること。設立間もない企業や赤字経営の企業は、厳しく審査される傾向にあります。
  • 適正な労働条件:外国人材に対して、日本人と同等以上の適正な給与を支払うこと。最低賃金はもちろんのこと、業務内容や経験に見合った報酬が支払われる必要があります。
  • 就労場所の明確性:外国人材が実際に就労する場所が明確であること。バーチャルオフィスのみの企業などは、実体がないと判断される可能性があります。
  • 法令遵守:過去に労働基準法や出入国管理法などの法令違反がないこと。

参考情報:企業の規模や業績によっては、提出書類が一部免除される場合があります。詳細については、出入国在留管理庁のウェブサイトで確認してください。

2. 「技術・人文知識・国際業務」ビザ申請時の注意点

スムーズなビザ取得のためには、以下の点に特に注意が必要です。

2-1. 必要書類の準備と確認

申請には、以下の書類が一般的に必要となりますが、個々のケースによって追加書類が求められることがあります。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 写真
  • パスポート
  • 履歴書
  • 最終学歴の卒業証明書、成績証明書
  • 職務経歴書
  • 雇用契約書の写し
  • 会社の登記簿謄本
  • 会社の損益計算書、貸借対照表
  • 会社の事業内容説明書
  • 理由書(申請理由、業務内容、必要性などを詳細に記述)

重要:提出書類はすべて日本語で、かつ公的な証明書は発行から3ヶ月以内のものを用意するのが原則です。不足書類や不備があると、審査が大幅に遅れたり、不許可の原因となったりします。

2-2. 申請理由書・雇用契約書の重要性

申請理由書と雇用契約書は、審査において特に重要視される書類です。

  • 申請理由書:なぜこの外国人を雇用する必要があるのか、どのような業務に従事させるのか、その業務が申請者の学歴・職歴とどのように関連するのかを、具体的に、かつ論理的に記述する必要があります。
  • 雇用契約書:業務内容、勤務地、勤務時間、給与、雇用期間などが明確に記載されている必要があります。記載内容と実際の業務が乖離しないように注意しましょう。

2-3. 審査期間と追加資料請求

「技術・人文知識・国際業務」ビザの審査期間は、通常1ヶ月~3ヶ月程度ですが、混雑状況や個々のケースによって変動します。審査中に、入管から追加資料の提出を求められることがあります。これは、提出された書類だけでは判断できない点がある場合に発生します。迅速かつ的確に対応することが、スムーズな審査につながります。

2-4. 不許可になった場合の対応

万が一、不許可になった場合でも、再申請が可能です。不許可理由が具体的に通知されるため、その理由を十分に分析し、不足していた情報や不備を補強して再申請に臨むことが重要です。専門家である行政書士に相談することも有効な選択肢です。

3. 「技術・人文知識・国際業務」ビザ取得を成功させる秘訣

  • 早期準備:必要な書類の収集には時間がかかる場合があります。余裕を持って準備を開始しましょう。
  • 専門家への相談:複雑なケースや不安な点がある場合は、外国人雇用に詳しい行政書士などの専門家への相談を強く推奨します。専門家は最新の情報や過去の事例に基づいて、適切なアドバイスや申請サポートを提供してくれます。
  • 企業側の理解と協力:企業側がビザ申請の重要性を理解し、必要な書類の準備や情報提供に積極的に協力することも、成功の鍵となります。
  • 虚偽申請は絶対に避ける:虚偽の情報を記載したり、事実と異なる書類を提出したりすることは、絶対に避けてください。発覚した場合、不許可になるだけでなく、将来のビザ申請にも悪影響を及ぼし、最悪の場合、刑事罰の対象となる可能性もあります。

4. よくある質問(FAQ)

Q1:文系の大学を卒業しましたが、ITエンジニアとして「技術」ビザを申請できますか? A1:専攻と業務内容の関連性が重要になります。情報系の副専攻や、実務経験、資格などにより、業務遂行能力を証明できれば可能性はあります。ただし、一般的には審査が厳しくなる傾向があります。

Q2:設立間もないベンチャー企業でも外国人材を雇用できますか? A2:可能です。ただし、企業の安定性・継続性が厳しく審査されます。事業計画書や資金計画、代表者の経歴などを詳細に提出し、健全な経営であることを示す必要があります。

Q3:国際業務の「翻訳・通訳」は誰でも取得できますか? A3:単に外国語ができるだけでは許可されません。外国の文化に基盤を有する思考・感受性が必要であり、企業内でその能力を活かした専門性の高い業務であることを示す必要があります。

まとめ

「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得は、適切な準備と理解があれば決して難しいものではありません。本記事で解説した要件と注意点をしっかりと把握し、必要に応じて専門家のサポートも活用することで、日本でのスムーズな就労を実現できるでしょう。

外国人材の雇用は、企業のグローバル化と成長に不可欠な要素です。適切な手続きを踏み、優秀な人材を迎え入れることで、貴社の事業発展に貢献できることを願っています。


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「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法