1,「技術・人文知識・国際業務」ビザの学歴要件は何ですか?

 技術人文知識国際業務ビザの許可要件の1つとして、学歴要件があります。学歴要件として以下の学校を卒業している必要があります。

「学歴要件」

・大学(短大を含む)を卒業したもの
 大学は国内外どちらの大学でも問題ありません。
・専門学校を卒業したもの
 専門学校の場合は、日本国内の専門学校を卒業している必要があります。専門士の称号を取得している必要があります

 上記の通り、日本の専門学校卒業者の場合、この学歴要件を充足しているとして申請します。

2,外国の専門学校を卒業している場合でも学歴要件をクリアできますか?

(1)外国の専門学校は不可

 上記1で検討した通り、海外の専門学校卒業者の場合は、技術人文知識国際業務ビザの学歴要件を充足することができません。技術人文知識国際業務ビザの学歴要件は、大学同等以上の教育を要求しています。海外の専門学校の場合は、日本の教育制度とは異なるため、大学同等以上の教育とは認められず、学歴要件を充足できません。

(2)実務経験要件を充足する必要

 外国の専門学校を卒業している外国人が、技術人文知識国際業務ビザを取得するためには、実務経験要件を充足する必要があります。実務経験要件を充足するためには、「技術」「人文知識」の分野では10年以上、「国際業務」の分野では3年以上の職歴があることが必要です。外国の専門学校で業務と関連する分野を学んでいる場合は、実務経験年数に含むことも認められます。また、実務経験と日本で従事する業務は、相当程度の関連性(事実上一致している)がある必要があります。

3,専門学校卒業者の場合は審査が厳しくなりますか?

(1)大学卒業者と比較して審査が厳格

 専門学校卒業者の場合は、大学卒業者と比較して審査が厳格になります。幅広い教養や専門性を修得できる大学と比較して、専門学校で修得できる専門性や知識は、大学と比較して限定的となります。大学と専門学校とのこのような違いにより、以下の点において審査が厳格となります。

(2)専攻科目と職務内容との関連性を厳格に審査

 大学卒業者の場合、大学での専攻内容と職務内容との関連性は柔軟に判断されています。これに対して、専門学校卒業者の場合は専門学校での専攻内容と職務内容との関連性は、相当程度の関連性が要求されています。このように専門学校卒業者の場合は大学卒業者に比べて学校での専攻内容と職務内容の関連性が厳格に審査されています。

 そこで、どの程度の関連性が要求されるかが問題となりますが、専門学校での履修科目のうち3割以上の科目が従事する予定の業務内容と関連していることが要求されることとなります。また、就学状況も審査の対象となりますので、成績や出席率が低い場合は不許可となる可能性が高まりますので注意が必要となります。

 この専攻科目と職務内容との関連性の証明責任は申請者側にあります。その証明のためには、卒業証明書や成績証明書のみならず、専門学校のシラバスや教科書をコピーして提出することも有益と考えます。

4,どんな場合に専門学校卒業者は許可・不許可となりますか?

 下記の許可事例では、専門学校で学んだ専門知識と業務との間に関連性が認められる場合には、許可されています。不許可事例では、技術人文知識国際業務ビザで許容される範囲外の業務である場合や、専門学校で学んだ専門性と業務との間に関連性が認められない場合には、不許可とされています。なお、美容師や保育士といった業務は、専門学校で学んだ専門性と関連性があると言えますが、そもそも技術人文知識国際業務ビザで従事できる業務範囲に該当せず、またこれを認める就労ビザは現在のところ存在しません。

(1)許可事例

①翻訳通訳学科において、通訳概論、言語学、通訳演習、通訳実務、通訳技法等を専攻科目として履修したものが、出版社において出版物の翻訳を行うとして申請があったもの。
②国際教養学科において、卒業単位が70単位であるところ、経営学、経済学、会計学等のほか、日本語、英語、ビジネス文書、ビジネスコミュニケーション等文章表現等の取得単位が合計30単位認定されており、日本語能力試験N1に合格している者が、渉外調整の際の通訳を行うとして申請があったもの。

(2)不許可事例

①CAD・IT学科において、専門科目としてCAD、コンピュータ言語、情報処理概論等を履修し、一般科目において日本語を履修したが、日本語の単位取得が、卒業単位の約2割程度しかなく、当該一般科目における日本語の授業については、留学生を対象とした日本語の基礎能力の向上を図るものであるとして、不許可となったもの。
②国際コミュニケーション学科において、日本語の文法、通訳技法等を履修した者が、新規開拓を計画中ですとする海外事業分野において、日本語が堪能である申請人を通訳人として必要とする旨の雇用理由書が提出されたが、申請人の成績証明書及び日本語能力を示す資料を求めたところ、日本語科目全般についての成績は、すべてC判定(ABCの3段階評価の最低)であり、その他日本語能力検定等、日本語能力を示す資料の提出もないことから、適切に翻訳通訳を目的とした業務を行うものとは認められず不許可となったもの。
③翻訳通訳学校において、日英通訳実務を履修した者が、ビル清掃会社において、留学生アルバイトに対する通訳及びマニュアルの翻訳に従事するとして申請があったが、留学生アルバイトは通常一定以上の日本語能力を有しているものであり、通訳の必要性が認められず、また、マニュアルの翻訳については常時発生する業務ではなく、通訳についても業務量が認められず不許可となったもの。

5,専門学校卒業者の場合の技術人文知識国際業務ビザ申請の必要書類は何ですか?

 出入国在留管理庁は、企業規模や性格によって1~4のカテゴリーを分け、各カテゴリーによって必要となる書類は異なってきます。以下では各カテゴリーの必要書類について検討していきます。

(1)すべてのカテゴリーの必要書類

 以下の書類はすべてのカテゴリーにおいて必要となる書類です。申請人を海外から呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書交付申請を行い、留学ビザなど何らかの在留資格を有している場合は、在留資格変更許可申請を行います。専門学校卒業の場合は、専門士の称号を取得していることを証明する必要があります。

「すべてのカテゴリーの必要書類」

・申請書(在留資格認定証明書交付申請書又は在留資格変更許可申請書)
・証明写真
・パスポートと在留カード
・返信用封筒
・手数料納付書
・専門士または高度専門士の学位を証明する文書
 「専門士または高度専門士の学位を証明する文書」は、「称号授与書」などの専門学校を卒業して学位を取得していることを証明する文書です。

(2)カテゴリー1の必要書類

 上場企業や公共団体などはカテゴリー1に分類されます。カテゴリー1に該当する会社で就労する場合は、以下のいずれかの書類が必要になります。

「カテゴリー1の必要書類」

・四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)
・主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し)
・高度専門職省令第1条第1号各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)であることを証明する文書(例:補助金交付決定通知書の写し)
・上記「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(例:認定証の写し)

(3)カテゴリー2の必要書類

 前年分の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の源泉徴収税額が1,000万円以上の団体・個人がカテゴリー2に分類されます。カテゴリー2に該当する会社で就労する場合は、以下の書類が必要になります。

「カテゴリー2の必要書類」

・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
・在留申請オンラインシステムに係る利用申出の承認を受けていることを証明する利用申出に係る承認のお知らせメールなどの文書

(4)カテゴリー3の必要書類

 前年分の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の源泉徴収額が1,000万円未満の団体・個人がカテゴリー3に分類されます。カテゴリー3に該当する会社で就労する場合は、以下の書類が必要になります。

「カテゴリー3の必要書類」

1,前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
2,申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
①労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書
a)日本法人である会社の役員に就任する場合
・役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し
b)外国法人内の日本支店に転勤する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合
・地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書
3,申請人の学歴及び職歴その他の経歴等を証明する文書
①申請にかかる技術又は知識を要する職務に従事した機関並びに期間を明示した履歴書
a)学歴又は職歴等を証明する次のいずれかの文書
・大学等の卒業証明書又はこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定証(レベル「A」、「B」または「C」に限る)
・在職証明書等で、関連する業務に従事した期間を証明する文書(大学、高等専門学校、高等学校又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む)
・IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書又は資格証書(共通して必要な書類の4を提出している場合は不要)
・外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書
4,登記事項証明書
5,事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
・勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む)等が詳細に記載された案内書
・その他の勤務先の作成した上記に準ずる文書
6,直近の年度の決算文書の写し

(5)カテゴリー4の必要書類

 カテゴリー1,2,3に該当しない期間がカテゴリー4に分類されます。カテゴリー4に該当する会社で就労する場合は、以下の書類が必要になります。

「カテゴリー4の必要書類」

1,前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
2,申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
①労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書
a)日本法人である会社の役員に就任する場合
・役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し
b)外国法人内の日本支店に転勤する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合
・地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書
3,申請人の学歴及び職歴その他の経歴等を証明する文書
①申請にかかる技術又は知識を要する職務に従事した機関並びに期間を明示した履歴書
a)学歴又は職歴等を証明する次のいずれかの文書 ・大学等の卒業証明書又はこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定証(レベル「A」、「B」または「C」に限る)
・在職証明書等で、関連する業務に従事した期間を証明する文書(大学、高等専門学校、高等学校又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む)
・IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書又は資格証書(共通して必要な書類の4を提出している場合は不要)
・外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書
4,登記事項証明書
5,事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
・勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む)等が詳細に記載された案内書
・その他の勤務先の作成した上記に準ずる文書
6,直近の年度の決算文書の写し(新規事業の場合は事業計画書)
7,前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料
①源泉徴収の免除を受ける機関の場合
・外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料
②上記を除く機関の場合
a)給与支払事務所等の開設届出書の写し
b)次のいずれかの資料
・直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(徴収日付印のあるものの写し)
・納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi
https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法