目次
1,特定技能制度とは、どんな制度ですか?
特定技能制度とは、一定の専門性・技術性を有し即戦力となると考えられる外国人を受け入れることによって、人手不足が深刻となっている産業分野の人手不足に対応するために2019年に新たに創設された制度です。本制度の創設にあたっては、技能実習制度であった問題点の反省や単純労働者の受入・移民政策といった批判もあったため、制度設計は非常に緻密となっています。このような背景もあり、特定技能ビザの申請にあたっては、出入国在留管理庁に提出する書類は、他の就労ビザに比較して膨大な量となり、許可要件に則した書類収集や作成が必要となってきます。
2,特定技能外国人として認められるための要件は何ですか?
特定技能外国人として特定技能ビザを取得する為には、申請人は以下の要件を充足している必要があります。
①18歳以上であること ②健康状態が良好であること ③技能水準を満たしていること ④退去強制の円滑な執行に協力する外国政府が発行した旅券を所持していること ⑤保証金の徴収をされていないこと ⑥外国の機関に費用を支払っている場合は、額・内訳を十分に理解して機関との間で合意 していること ⑦送出し国で順守すべき手続きが定められている場合は、その手続きを経ていること ⑧食費、居住費等外国人が定期に負担する費用について、その対価として供与される利益の内容を十分に理解したうえで合意しており、かつ、その費用の額が実費相当額その他の適正な額であり、明細書その他の書面が提示されていること。 ⑨分野に特有の基準に適合すること(分野所轄省庁の定める告示で規定) |
3,特定技能ビザ申請に学歴や経歴は影響しますか?
(1)学歴や経歴は要件となっていない
上記2で検討した通り、特定技能ビザ申請では申請人の学歴や経歴は要件とされていません。よって、申請人が大学や専門学校を卒業している必要はありません。もっとも、即戦力として活躍することが期待されているため、上記2③にあるように、一定の技能水準に達している必要があります。そして、技能水準に達していると認められるためには、相当程度の知識や経験を有していることが必要です。よって、学歴や経歴は要件とされていませんが、申請する特定産業分野に関する学歴や経歴がある場合には、有利に働くことが期待できます。
(2)特定技能評価試験の合格が要件
上記2③の通り、特定技能ビザの要件として、技能水準に達していることが要求されます。そして、この技能水準は技能評価試験によって測られます。よって、特定技能ビザにおいては学歴や経歴は要件とされていませんが、「特定技能評価試験」と「日本語能力試験」に合格することが要件とされています。この特定技能評価試験は、各産業分野によって試験内容は異なってきます。なお、技能実習2号を良好に修了した技能実習生が、特定技能ビザに変更申請する場合は、上記試験は免除されます。
4,申請書の経歴欄の記載は審査対象ですか?
(1)履歴書は不要
特定技能制度の開始当初は、ビザ申請の必要書類の1つとして申請人の履歴書が必要とされていました。現在では申請書の様式が変更され、申請書の経歴欄に外国人の経歴を記載するようになり、履歴書の提出は不要になっています。この経歴欄には、主に申請人の職歴を記載します。
(2)経歴詐称は不許可
経歴欄の記載は、正確に記載する必要があります。虚偽の経歴を記載した場合は、当然に不許可になります。この経歴欄に記載した経歴が証明資料と整合しない場合や、過去の申請内容と矛盾する場合は、虚偽の経歴と見なされ不許可になります。
技能実習ビザから特定技能ビザへ変更する場合は、特に注意が必要です。過去の申請内容、つまり技能実習ビザを申請した際の申請書や証明書類の内容は、入管に記録が残っています。この時に技能実習ビザ申請の際に記載した経歴と特定技能ビザへ変更する際の経歴の間に齟齬が生じた場合は、どちらか一方が虚偽と見なされ不許可になります。
特に技能実習ビザの場合は、監理団体など第三者が申請書を作成し、前回の申請内容が本人もわからない場合があります。そして、技能実習ビザ申請の際に、学歴や職歴を偽装して申請している場合も少なくない実情があります。もちろん、特定技能ビザ申請で、このような技能実習ビザ申請時の経歴詐称が明らかとなった場合は不許可になる危険性があります。
5,技能実習ビザ取得時の経歴詐称が明らかになった場合はどうすれば良いですか?
(1)虚偽申請の不利益
特定技能ビザ申請時に正確な経歴を記載しても、技能実習ビザ申請時に経歴を詐称していた場合は、両者に齟齬が生じ虚偽申請をみなされ不許可となります。また、不許可になるにとどまらず、在留資格を取り消される可能性もあります。そして、在留資格を取り消された場合は、指定期間内に日本から出国する必要があります。この指定期間内に出国しなかった場合は退去強制処分に処せられ、退去強制処分に処せられた場合は処分の日から5年間は日本に入国することができません。
(2)対処法
技能実習ビザ申請において監理団体などの第三者が申請した場合であっても、経歴を偽って申請した場合は虚偽申請になります。そして、技能実習ビザ申請の誤った経歴と整合するように、特定技能ビザ申請において虚偽の経歴で申請をした場合も、さらに虚偽申請となります。この場合は、技能実習ビザ申請の内容と特定技能ビザ申請の内容に矛盾は生じることは当然として、特定技能ビザ申請においては正確な経歴を記載する必要があります。そのうえで、技能実習ビザ申請の内容と特定技能ビザ申請の内容との間に矛盾が生じた理由を、理由書などで説明していく必要があります。そして、今回申請した内容が正確であることを、証明資料などを提出して立証していく必要があります。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |