1、在留資格「特定技能」に移行する特例措置とは何ですか?

 在留資格「技能実習」や「留学」などで日本に在留している外国人が、特定技能ビザの要件を満たしている場合は、在留資格「特定技能」へ変更申請することが認められます。下記2で検討する通り、特定技能ビザの申請の必要書類は、申請人並びに会社共に膨大な量になります。したがって、申請の準備に必要な時間は、他の就労系のビザに比べても長くなります。また、特定技能ビザの審査期間は1~2か月程度です。これらの時間を総合すると、特定技能ビザに変更するためには、3~4か月の期間が必要となります。現在保有している在留期間の期間満了前に特定技能ビザへ変更できない場合は、帰国しなければならなくなります。

 そこで、現在保有している在留資格の期間満了までに特定技能ビザへの変更が難しい場合には、一定の要件と満たすことによって移行準備の特例措置が受けられます。この特例措置を受けることが認められた場合は、在留資格「特定活動(移行準備)又は(雇用維持支援)」が付与されます。

2,技能実習ビザや留学ビザから特定技能ビザへ変更する場合の必要書類は何ですか?

 技能実習ビザや留学ビザから特定技能ビザへ変更する際に必要となる書類は、以下の通りです。

(1)申請人(外国人)の必要書類

 特定技能ビザへの変更許可申請する場合に、申請人である外国人は以下の書類を用意する必要があります。このほかにも、特定の分野ごとに必要となる書類もあります。

・在留資格変更許可申請書
・特定技能外国人の報酬に関する説明書
・特定技能雇用契約書の写し
・雇用条件書の写し
・賃金の支払い
・雇用の経緯に係る説明書
・徴収費用の説明書
・健康診断個人票
・受診者の申告書
・申請人の住民税の納税証明書
・申請人の給与所得の源泉徴収票の写し
・申請人の国民健康保険被保険者証の写し
・申請人の国民健康保険料(税)納付証明書
・申請人の国民年金保険料領収書の写し又は申請人の被保険者記録照会(被保険者記録照会回答票を含む)のいずれか
・前回申請時に履行すべきであった公的義務に係る書類
・公的義務履行に関する誓約書
・1号特定技能外国人支援計画書
・登録支援機関との支援委託契約に関する説明書
・2国間取決めにおいて定められた遵守すべき手続きに係る書類(カンボジア、タイ、ベトナムが対象国) ・特定技能外国人として業務に従事するために必要な技能試験及び日本語試験に合格していること、または、技能実習2号良好修了者等の試験免除であることを証明する資料

(2)会社(受入機関)の必要書類

 会社(受入機関)は以下の書類を用意する必要があります。この他にも、受入機関の種類(上場企業、個人事業主)によって必要となる書類もあります。

①受入機関(会社)の必要書類

・特定技能所属機関概要書
・登記事項証明書
・業務執行に関与する役員の住民票の写し
・特定技能所属機関の役員に関する誓約書
・社会保険料納入状況回答書または健康保険
・厚生年金保険料領収書の写し
・税務署発行の納税証明書
・公的業務履行に関する説明書

②初めて特定技能外国人を受入れる場合

・労働保険料等納付証明書(未納なし証明書)
・法人住民税の市町村発行の納税証明書

③特定技能外国人を受入れ中の場合

労働保険事業組合に事務委託していない場合
・労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(事業主控)の写し及び申告書に対応する領収証書(口座振替結果通知ハガキ)の写し
・法人住民税の市町村発行の納税証明書
労働保険事務組合に事務委託している場合
・労働保険事務組合が発行した直近2年分の労働保険料等納入通知書の写し及び通知書に対応する領収書(口座振替結果通知ハガキ)の写し
・法人住民税の市町村発行の納税証明書

3,特例措置の対象者は誰ですか?

(1)特例措置の種類

 在留期間内に変更が困難な場合の在留資格「特定技能」に移行する特例措置には、以下の3種類があります。各々の特例措置によって、対象となる者は異なってきます。

・特定活動(特定技能1号への移行準備)
・特定活動(雇用維持支援)
・特例期間

(2)特例措置の対象者

①特定活動(特定技能1号への移行準備)

対象者:技能実習生・留学生
 技能実習ビザや留学ビザで、日本に在留する外国人が在留期限までに特定技能ビザへの変更が困難な場合に特例措置を受けることができます。この場合は、在留資格「特定活動(特定技能1号への移行準備)」が付与されます。

②特定活動(雇用維持支援)

対象者:技能実習生・特定技能外国人・就労ビザ外国人・卒業した留学生
 会社都合など自己都合によらない解雇などになった外国人は、特定活動(雇用維持支援)の対象となります。

③特例期間 

対象者:在留資格を有する外国人
 在留資格を保有して日本に滞在する外国人が、在留資格の更新・変更手続きをした際、審査が期間満了日までに終了しない場合に適用されます。

4,在留資格「特定活動(特定技能1号への移行準備)」の要件や必要書類は何ですか?

技能実習ビザや留学ビザで、日本に在留する外国人が在留期限までに特定技能ビザへの変更が困難な場合に特例措置を受けることができます。この場合は、在留資格「特定活動(特定技能1号への移行準備)」が付与されます。この特例を受けるためには以下の要件を充足している必要があります。

(1)特定活動(特定技能1号への移行準備)の要件

 特定活動(特定技能1号への移行準備)が認められるためには、以下の7つの要件を充足している必要があります。

①申請人の在留期間の満了日までに「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行うことが困難である合理的な理由があること
②申請に係る受入れ機関において特定技能外国人として「特定技能1号」に該当する業務に従事するために同在留資格への在留資格変更許可申請を予定していること
③申請人が申請に係る受入れ機関との契約に基づいて在留資格「特定技能1号」で従事する予定の業務と同様の業務に従事すること
④申請人が特定技能外国人として就労する場合に支払われる予定の報酬と同額であり、かつ、日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること
⑤申請人が特定技能外国人として業務に従事するために必要な技能試験及び日本語試験に合格していること
※技能実習2号良好修了者等として試験免除となる場合も含む
⑥申請に係る受入れ機関又は支援委託予定先が申請人の在留中の日常生活等に係る支援を適切に行うことが見込まれること
⑦申請に係る受入れ機関が、申請人を適切に受け入れることが見込まれること

(2)特定活動(特定技能1号への移行準備)の必要書類

「必要書類」

・在留資格変更許可申請書
・写真
・受入機関が作成した説明書
・雇用契約書および雇用条件書等の写し
・特定技能外国人として業務に従事するために必要な技能試験及び日本語試験に合格していること、または、技能実習2号良好修了者等の試験免除であることを証明する資料

(3)特定活動(特定技能1号への移行準備)の在留期間と就労の可否

 特定活動(特定技能1号への移行準備)では、4か月の在留期間が付与されます。また、特定活動(4か月・就労可)という在留資格が付与されるので、就労することも認められます。したがって、4か月間は働きながら特定技能ビザへの変更準備をすることができます。なお、この特例措置は4か月が上限となっているため、更新申請することはできません。

 特定技能1号ビザへ変更した場合、特定技能ビザの在留期間の上限5年間に特例措置で認められた4か月も含まれます。よって、特定技能1号ビザで在留できる期間は、4年8か月となります。

5,特定活動(雇用維持支援)の要件や必要書類は何ですか?

 会社都合など自己都合によらない解雇などになった技能実習生や特定技能外国人は、特定活動(雇用維持支援)の対象となります。

(1)特定活動(雇用維持支援)の要件

特定活動(雇用維持支援)が認められるためには、以下の要件を充足している必要があります。

①解雇などをされた理由が、自己都合ではなく、受入機関の経営状況悪化などであること
②外国人と新たな受入れ機関との雇用契約が成立してから、申請手続きを行うこと
③新たな受入れ機関は、特定技能制度の12分野に属するものであること。また、12分野のうち、「素形材・産業機関・電気電子情報関連製造業」分野で再就職が認められるのは、当該分野で活動していた特定技能外国人および当該分野へ試験免除で移行できる職種・作業の技能実習を行っていた技能実習生であること

(2)特定活動(雇用維持支援)の必要書類

「必要書類」

・申請書  
 在留資格変更許可申請書又は在留期間更新許可申請書
・受入機関が作成した説明書 ・雇用契約に関する書面(雇用契約書、雇用条件書の写し)
・受入機関が作成した賃金の支払いに関する書面
・従前の監理団体等が作成した技能実習生の現況に関する説明書
※技能実習を修了し、帰国が困難となった場合のみ提出が必要

(3)特定活動(雇用維持支援)の在留期間

 特定活動(雇用維持支援)では、最長1年間の在留期間が付与されます。また、特定活動(雇用維持支援)は在留期間の更新も認められています。在留資格更新時に4か月の期間が付与されます。

6,特例期間の要件や必要書類は何ですか?

 特例期間は、在留資格を保有して日本に滞在する外国人が、在留資格の更新・変更手続きをした際、審査が在留期間満了日まで終了しない場合に適用されます。

(1)特例期間の要件

 30日を超える在留資格を有している場合に特例期間が適用されます。30日を超える在留資格には、短期滞在も含まれます。30日以下の在留資格の場合は、特例期間は適用されません。

(2)特例期間の必要書類

 特例期間の適用を受けるために、特別に必要とされる書類はありません。特例期間は、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請を行う場合に、在留期間が満了した場合に適用されます。在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請が受理されると、在留カードの裏面に申請中であることが記載されます。この記載がされることによって特例期間を受けることが認められます。

(3)特例期間の在留期間

 特例期間では、以下①又は②のうちいずれか早い方の在留が認められます。なお、特例期間中に変更又は更新が不許可になった場合は、出国準備のための特定活動に変更されます。出国準備のための特定活動では、30日又は31日の在留が認められるので、その間に出国しなければなりません。

①在留期間更新許可申請もしくは在留資格変更許可申請の審査終了までの期間
②保有する在留資格の在留期間満了日から2か月
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法