特定技能外国人が失職した場合どうなりますか?転職できますか?
目次
1,特定技能ビザ(在留資格「特定技能」)とは、どんなビザですか?
特定技能制度とは、一定の専門性・技術性を有し即戦力となると考えられる外国人を受け入れることによって、人手不足が深刻となっている産業分野の人手不足に対応するために2019年に新たに創設された制度です。この特定技能制度によって、人手不足が深刻をされている14の産業分野の存続・発展を実現し、日本経済社会の持続可能性を維持することを目的としています。
本制度の創設にあたっては、技能実習制度であった問題点の反省や単純労働者の受入・移民政策といった批判もあったため、制度設計は非常に緻密となっています。このような背景もあり、特定技能ビザの申請にあたっては、出入国在留管理庁に提出する書類は、他の就労ビザに比較して膨大な量となり、許可要件に則した書類収集や作成が必要となってきます。
在留資格「特定技能」は1号と2号に分かれます。その内容は以下の通りとなります。
特定技能1号 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格 「相当程度の知識または経験を必要とする技能」とは「特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準」であることを意味します。 |
特定技能2号 | 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格 「熟練した技能」とは「相当程度の知識または経験を必要とする技能」を超える専門性を意味します。 |
2,特定技能外国人が失職した場合、どうなりますか?
特定技能外国人が自己都合によらない理由による失職、つまり勤務先の倒産やリストラといった会社都合で失職した場合は、以下のような形で在留の継続が認められます。
(1)特定技能ビザの在留期限到来前
特定技能ビザの在留期限到来前の場合は、就職活動を行っているのであれば、現在有している特定技能ビザで在留期限まで在留を継続することができます。
特定技能ビザは従事できる業務が限定されているため、転職期間中にアルバイトすることはできません。アルバイトをする場合は資格外活動許可を取得する必要があります。資格外活動許可を取得した場合は、週28時間までアルバイトをすることが認められます。
なお、正当な理由なく3か月以上「特定技能」に係る活動を行っていない場合は、在留資格を取り消されてしまいます。就職活動を行っていない場合は取り消される危険があります。
(2)特定技能ビザ在留期限到来後
特定技能ビザの在留期限が到来した場合は、失職しているため特定技能ビザを更新することはできません。特定技能外国人が在留期限到来後も就職活動目的で在留の継続を希望する場合は、在留資格「特定活動」への変更が認められています。もっとも、この場合に認められる在留期間は4か月です。
また、この就職活動を目的とした特定活動ビザは更新することは認められていません。この特定活動ビザは就労が認め有れていないため、アルバイトをすることはできません。資格外活動許可を取得することによって、週28時間までアルバイトをすることが認められます。この場合の資格外活動許可は、「特定技能」時と「特定活動」時を合わせて90日以内となるように調整して許可されます。
特定活動ビザへ変更するためには、以下の要件を満たしている必要があります、
・就職活動を行っていることが証明できること(退職証明書、ハローワークカードなどを提出) ・在留状況に問題がないこと |
(3)失業保険の受給
失業保険の受給に関し、日本人と外国人とで取扱いに差異はありません。日本人と同じように失業保険を受け取ることができます。詳しくは、ハローワークにお問い合わせください。
3,特定技能外国人は転職できますか?
(1)転職できる産業分野
特定技能外国人が転職する場合は、特定技能の対象となる14分野に自由に転職できるわけではありません。特定技能ビザを取得するためには、上記1で検討した、特定技能外国人は「相当程度の知識または経験を必要とする技能」(1号)、または、「熟練した技能」(2号)を有することが要件となります。したがって、特定技能外国人の転職は、原則として同じ産業分野の転職に限定されます。また、同一産業分野も場合でも、複数の業務(主たる業務)があり、必要となる技能が異なる場合があります。この場合、転職先の業務は、特定技能外国人が有している技能に対応した業務(主たる業務)に従事する必要があります。つまり、転職前と転職先の主たる業務が、同じである必要があります。なお、以下の(2)の場合は他の産業分野に転職することもできます。
(2)他の産業分野に転職できる場合
他の産業分野の場合でも、業務区分が同じと評価された場合は転職することも認められます。業務区分とは、特定産業分野をさらに細分化した区分けのことです。基本方針は、①同一の業務区分、②試験等で技能水準の共通性が確認されている業務区分の場合は、転職が認められるとしています。
例えば、製造3分野(素形材産業、産業機械製造業、電機・電子情報関連産業)は、異なる産業分野になります。しかし、この製造3分野は、多くの点で従事する業務に共通性を有しています。製造3分野では「製造分野特定技能1号評価試験」という共通の評価試験を実施しています。よって、上記②の異なる産業分野間で技能水準の共通性が確認されている業務区分となります。つまり、製造3分野は産業分野としては異なりますが、業務区分で共通性を有しています。このように、業務区分に共通性と認められる場合は、産業分野が異なる場合でも転職が可能になります。
例) 製造分野特定技能1号評価試験の「溶接」の業務区分の技能試験に合格した者は、素形材産業の「溶接」区分から産業機械製造業の「溶接」区分に転職可能。 ただし、異なる特定産業分野に転職する場合は、在留資格変更許可手続きが必要になります。 |
4,ポイント
①特定技能外国人の失職 就職活動をしている場合は一定期間日本に在留可能 ②特定技能外国人の転職 原則:同一産業分野内でのみ転職可能 例外:異なる産業分野間でも、業務区分が同一なら転職可能 |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |