特定技能ビザを「漁業」分野で取得するための要件は何ですか?

1,特定技能1号「漁業」とは、どんな制度でしょうか?

 現在、漁業分野においては人手不足が深刻化しています。特定技能1号は、このような人手不足に対応するため、一定の専門性・技術性を持った外国人を受け入れることによって、漁業分野の存続・発展を図り、日本経済や社会基盤の持続可能性を維持することを目的としています。

特定技能分野別運用要領(漁業)930004546.pdf (moj.go.jp)

2,漁業分野での1号特定技能外国人の受入見込数はどの程度でしょうか?

 漁業分野では、2023年までに20,000人の人手不足が推計されています。この人手不足に対応するためには、特定技能外国人を受入れることは避けられないと考えられています。毎年1%の生産性向上や追加的な国内人材確保によって、5年間で12,000人程度の確保が見込まれていますが、なお人手が不足すると考えられています。この背景には、漁業分野で雇用されている従業員の約2割は65歳以上の高齢労働者が占め、この高齢労働者が今後退職していくことが見込まれています。そのため、毎年1,000人の従業員を雇用したとしても、人手不足が解消する可能性を見込めないとされています。また、漁業分野における就業者は277,000人から平成29年には153,000人まで減少し、その減少率は4割を超えています。一方で、漁業分野における有効求人倍率は、漁船員2.52倍、水産養殖作業員2.08倍となっており、深刻な人手不足状況がうかがえます。このような推計に基づき、漁業分野における受入見込数は、2023年までに最大9,000人とされています。またこれを受入れの上限としていますので、過大な受入見込数とはなっていません。

3,特定技能「漁業」では、どんな業務に従事できますか?

 特定技能「漁業」では、以下の主たる業務と関連業務に従事することが認められています。

(1)主たる業務

 特定技能「漁業」では、主たる業務として①漁業及び②養殖業に従事することが認められています。特定技能ビザを取得するためには、それぞれ対応する技能評価試験に合格する必要がります。

①漁業

・漁具の操作・補修

・水産動植物の探索

・漁具・漁労機械の操作

・水産動植物の採捕

・漁獲物の処理・保蔵

・漁業に係る安全衛生の確保業務

②養殖業

・養殖資材の制作・補修・管理

・養殖水産動植物の育成管理

・養殖水産動植物の収穫・処理

・養殖業に係る安全衛生の確保業務

(2)関連業務

 関連業務のみに専ら従事することは認められません。もっとも、主たる業務と合わせて付随的に従事する場合には、関連業務に従事することが認められます。特定技能「漁業」の関連業務としては、以下の業務が挙げられます。

・用具や機械の点検・管理など

・補修作業や清掃作業

・用具や資材などの仕込み・積込み

・炊事・賄い

・自家生産物や加工物等の運搬・陳列・販売

・市場・港などでの選別・仕分け作業

・体験型漁業の際に乗客が行う採捕の補助

4,特定技能「漁業」で外国人を雇用するための要件は何ですか?

(1)外国人が特定技能「漁業」の在留資格を取得していること

 在留資格とは、外国人が日本に在留し、一定の活動を行うことができる資格をいいます。

 特定技能「漁業」の在留資格を取得する為の要件は以下の通りです。

ア 技能水準(試験区分)

 実施する業務に対応する漁業技能測定試験に合格する必要があります。

 なお、漁業に3年以上従事していた者は漁業、養殖業に3年以上従事していた者は養殖業、それぞれの技能測定試験の実技試験を免除されます。

イ 日本語能力水準

①国際交流基金日本語基礎テスト又は②日本語能力試験(N4以上)のどちらかに合格する必要があります。

ウ 実施する業務に対応する第2号技能実習を良好に修了した者は上記ア・イの試験を免除されます。

(2)フルタイムの雇用であること

 必ずフルタイムの雇用である必要があります。

 フルタイムであれば、雇用形態は直接雇用・派遣雇用どちらも認められます。

(3)受入機関に対して特に課す条件を満たしていること

 受入機関一般に課される条件のほか、特定技能「漁業」において特に課される条件は以下の通りです。

ア 受入企業の類型に応じた所定の書類を提出していること

(ア)農林水産大臣または都道府県知事の許可を得て漁業・養殖業を営んでいる場合

 ①許可証の写し、②免許・指令所の写し、③その他免許を受けていることがわかる公的書類の写しといったものを提出する必要があります。

(イ)漁業協同組合に所属して漁業・養殖業を営んでいる場合

 ①漁業協同組合の漁業権の内容である漁業・養殖業を営むことが確認できる書類の写し、②その他漁業協同組合に所属して漁業・養殖業を営んでいることが確認できる書類の写しといったものを提出する必要があります。

(ウ)また、漁船を用いて漁業・養殖業を営む場合は①漁船原簿謄本の写し、②漁船登録票の写しのどちらかの提出が必要です。

イ 協議会の構成員であること

 受入企業は、農林水産省が設置する漁業特定技能協議会に加入する必要があります。特に、漁業分野の特定技能外国人をはじめて受け入れる場合には、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会に加入しなければなりません。

 協議会に加入せずに特定技能外国人を就労させた場合には、不法就労助長罪に処されます。

ウ 協議会において、協議が整った事項への適切な措置を講ずること

 受入企業は、①特定技能外国人の安全管理、②配乗人数の上限や報告、③特定技能外国人の引き抜き防止などといった事項について適切な措置を講ずる必要があります。

エ 協議会に対し必要な協力を行うこと

 受入企業は、上記イの協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。

 派遣雇用の場合は派遣先にこの要件が求められます。

 協議会に対し必要な協力を行わない場合には、不法就労助長罪に処されます。

オ 登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託する場合には、協議会に対し必要な協力行う登録機関に委託すること

 受入企業が、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合には、当該登録支援機関は上記イの協議会に必要な協力をする必要があります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法