特定技能ビザを「ビルクリーニング」分野で取得するための要件は何ですか?

1,特定技能1号「ビルクリーニング」とは、どんな制度でしょうか?

 現在、ビルクリーニング分野においては人手不足が深刻化しています。特定技能1号は、このような人手不足に対応するため、一定の専門性・技術性を持った外国人を受け入れることによって、ビルクリーニング分野の存続・発展を図り、日本経済や社会基盤の持続可能性を維持することを目的としています。

特定技能分野別運用要綱(ビルクリーニング)

2,ビルクリーニング分野での1号特定技能外国人の受入見込数はどの程度でしょうか?

 ビルクリーニング分野においては、ビル・建物清掃員の有効求人倍率が2.95倍となっていることに鑑みても人手不足が深刻化しています。これに対して、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(「建築物衛生法」)の適用対象とある特定建築物は年々増加し、清掃が必要となる建築物が年々増加するに伴い人手不足は年々深刻化している状況です。平成27年度国勢調査の結果では、ビル・建物清掃員の職種の構成は、女性が70.9%、65歳以上の高齢者が37.2%を占めています。これは、業界が女性や高齢者の雇用を推進してきた結果ですが、今後高齢者の退職や女性がビル・建物清掃員を希望しなくなっている現状から、ビルクリーニング分野の人手不足は一層深刻化していくこと予想されます。このような人手不足によって、適切なビルクリーニングが行われなくなれば、建築物の衛生環境の悪化に伴う利用者の健康被害が生じる恐れが懸念されています。そこで、特定技能外国人を受入れることによって、人手不足に対処する必要性が避けられなくなっています。なお、ビルクリーニング分野における受入見込数は、最大で37,000人となっています。またこれを受入れの上限として運用されていますので、過剰な受入見込数とはなっていません。

3,特定技能「ビルクリーニング」では、どんな業務に従事できるでしょうか?

特定技能「ビルクリーニング」では、以下の主たる業務と関連業務に従事することが認められています。

(1)主たる業務

 特定技能「ビルクリーニング」では、多数の人が利用する建物内部の清掃が認められています。具体的には、ビル内部において、場所・部位・建材・汚れ等の違いに対して、方法・洗剤・用具等を適切に選択して清掃作業を行うといったことが認められています。また、清掃作業のほか、客室のベッドメイク作業を行うことも認められます。

 注)なお、「建築物」には「住宅」(戸建て、共同住宅の専有部分等)は含まれません。もっとも、共同住宅の共有部分(ロビー、廊下等)は「建築物」に含まれます。

(2)関連業務

関連業務のみに専ら従事することは認められません。もっとも、主たる業務と併せて付随的に従事する場合には、関連業務に従事することが認められます。関連業務としては、以下のような業務が主たる業務と併せて従事することが認められています。

  ①客室以外のベッドメイク作業

  ②ベッドメイク作業を除く客室の整備作業

  ③建物外部洗浄作業(外壁・屋上等)

  ④建築物内外の植栽管理作業(灌水作業等)

  ⑤資機材の運搬作業(他の現場への移動等)

  ⑥資機材倉庫の整備作業

4、特定技能「ビルクリーニング」で外国人を雇用するための要件は何でしょか?

(1)外国人が特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を取得していること

在留資格とは、外国人が日本に在留し、一定の活動を行うことができる資格をいいます。

特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を取得するための要件は以下の通りです。

ア、技能水準(試験区分) 

ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験に合格する必要があります。

多数の者が利用する建築物(住宅を除く)の内部を対象に、場所・部位・建材・汚れ等の違いに対し、自ら判断で、方法・洗剤・用具を適切に選択して遂行できるレベルであることを認定する試験です。

イ、日本語能力水準

①国際交流基金日本語基礎テスト又は②日本語能力試験(N4以上)に合格する必要があります。

なお、ビルクリーニング職種。ビルクリーニング作業の第2号技能実習を良好に修了した者は上記ア・イの試験が免除されます。

(2)直接雇用であること

 雇用形態は直接雇用に限られます。派遣雇用は出来ません。

 ビルクリーニング分野において1号特定技能外国人を派遣し、又は派遣された者を受入れた場合には、以後5年間は特定技能外国人の受入ができなくなります。

(3)受入機関に対して特に課す条件を満たしていること

 受入機関一般に課される条件のほか、特定技能「ビルクリーニング」において特に課される条件は以下の通りです。

ア、建築物清掃業又は建築物環境衛生管理業の登録を受けた営業所で受け入れること

 受入企業は、都道府県知事により、建築物清掃業又は建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所で1号特定技能外国人を受入れる必要があります。

 もっとも、登録を受けた営業所において1号特定技能外国人を受入れた企業が清掃業務を委託しているホテル等の現場で清掃業務に従事することは差し支えありません。

 また、1号特定技能外国人の受入後に業務に従事する営業所が変更になった場合は14日以内に届出が必要です。これを怠った場合は、刑事罰に処せられます。

イ、ビルクリーニング分野特定技能協議会の構成員であること

 受入企業は、厚生労働大臣が設置するビルクリーニング分野特定技能協議会の構成員である必要があります。

 初めてビルクリーニング分野1号特定技能外国人を受入れる場合は、当該1号特定技能外国人の入国後4か月以内にビルクリーニング分野特定技能協議会に加入しなければなりません。4か月以内に加入していない場合には、1号特定技能外国人を受入れることは出来ません。その状態で特定技能外国人を就労させると不法就労助長罪に処せられます。

ウ、上記イの協議会に対する協力を行うこと

 受入企業は、上記イの協議会に対し、以下の必要な協力を行う必要があります。

 ①特定技能外国人の受入に係る状況の全体的な把握

 ②問題発生時の対応

 ③法令遵守の啓発

 ④特定技能所属機関の倒産時における特定技能外国人に対する転職支援

 ⑤就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析

 必要な協力を行わない場合には、1号特定技能外国人を受入れることは出来ません。その状態で特定技能外国人を就労させると不法就労助長罪に処せられます。

エ、厚生労働大臣に対する協力を行うこと

 受入企業は、ビルクリーニング分野への特定技能外国人の受入に関して、厚生労働大臣が行う必要な調査、指導、情報の収集、意見の聴取、その他の業務に対して必要な協力を行う必要があります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/

  代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法