特定技能ビザを「素形材産業」分野で取得するための要件は何でしょうか?
目次
1,特定技能1号「素形材産業」とは、どんな制度でしょうか?
現在、素形材産業分野においては人手不足が深刻化しています。特定技能1号は、このような人手不足に対応するため、一定の専門性・技術性を持った外国人を受け入れることによって、素形材産業分野の存続・発展を図り、日本経済や社会基盤の持続可能性を維持することを目的としています。
定技能分野別運用要綱(素形材産業分野)
2,素形材産業分野での1号特定技能外国人の受入見込数はどの程度でしょうか?
素形材産業分野では、2017年では約30,000人の人手不足が生じていると推計されています。そして、2023年では62,000人の人手不足が見込まれています。この人手不足に対応するためには、特定技能外国人を受入れることは避けられないと考えられています。一方で、素形材産業分野の有効求人倍率は2.83倍となっており、人手不足が顕著であることがうかがえます。このような人手不足の推計を受けて、素形材産業分野における受入見込数は最大で21,500人とされています。またこれを受入れの上限としていますので、過大な受入見込数となっていません。
3,特定技能「素形材産業」では、どんな業務に従事できますか?
特定技能「素形材産業」では、以下の主たる業務と関連業務に従事することが認められています。
(1)主たる業務
特定技能「素形材産業」では、以下の技能水準(試験区分)と同じ13区分の業務に従事することが認められています。
①鋳造②鍛造③ダイカスト④機械加工⑤金属プレス加工⑥工場板金⑦めっき⑧アルミニウム陽極酸化処理⑨仕上げ⑩機械検査⑪機械保全⑫塗装⑬溶接
(2)関連業務
関連業務のみに専ら従事することは認められません。もっとも、主たる業務に伴って付随的に従事する場合には、関連業務に従事することが認められます。
関連業務に該当する例としては、①原材料・部品の調達・搬送作業、②各職種の前後工程作業、③クレーン・フォークリフト等運転作業、④清掃・保守管理作業などが挙げられます。
4,特定技能「素形材産業」で外国人を雇用するための要件は何ですか?
(1)外国人が特定技能「素形材産業」の在留資格を取得していること
在留資格とは、外国人が日本に在留し、一定の活動を行うことができる資格をいいます。特定技能「素形材産業」の在留資格を取得するための要件は以下の通りです。
ア、技能水準(試験区分)
素形材産業では、以下の13区分の試験を実施
①鋳造②鍛造③ダイカスト④機械加工⑤金属プレス加工⑥工場板金⑦めっき⑧アルミニウム陽極酸化処理⑨仕上げ⑩機械検査⑪機械保全⑫塗装⑬溶接
各区分の試験内容は、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業と共通(製造分野特定技能1号評価試験として実施)
イ、日本語能力水準
国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験(N4以上)に合格する必要があります。
ウ、なお、形材産業分社の2号技能実習を良好に修了した者は、上記ア、イの試験が免除されます。
(2)直接雇用であること
特定技能「素形材産業」はフルタイムの直接雇用に限ります。派遣形態で雇用することはできません。
(3)事務所要件:製造3分野における受け入れ可能な事業所の日本標準産業分類
素形材産業分野の1号特定技能外国人が活動を行う事業所が、日本標準産業分野に掲げる産業のうち次のいずれかに掲げるものを行っていることが求められます。
素形材産業
2194鋳型製造業(中子を含む)
225鉄素形材製造業
235非鉄金属素形材製造業
2424作業工具製造業
2431配管工事用付属品製造業(バルブ、コックを除く)
245金属素形材製品製造業
2465金属熱処理業
2534工業窯炉製造業
2592弁・同付属品製造業
2651鋳造装置製造業
2651金属用金型・同部分品、付属品製造業
2929その他の産業用電気機械器具製造業(車両用、船舶用を含む)
3295工業用模型製造業
(4)日本産業分類に掲げる産業該当性
日本産業分類に掲げる産業を行っているとは、1号特定技能外国人が業務に従事する事業場において、直近1年間で前期の①~⑬に掲げるのもについて製造品出荷額等が発生していることを指します。要するに売り上げが発生していること。
製造品出荷額とは、直近1年間における製造品出荷額、加工賃収入額、くず廃物の出荷額及びその他収入額の合計であり、消費税及び酒税、たばこ税、揮発油税及び地方揮発税を含んだ額のことを指します。
①製造品の出荷とは、その事業所の所有に属する原材料によって製造されたもの(原材料を他企業の国内事業所に支給して製造されたものを含む)を、直近1年間中にその事業所から出荷した場合をいいます。また、次のものも製造品出荷に含みます。
ア、同一企業に属する他の事業所へ引き渡したもの
イ、自家用使用されたもの(その事業所において最終製として使用されたもの)
ウ、委託販売に出したもの(販売済みでないものを含み、直近1年中に返品されたものを除く)
②加工賃収入額とは、直近1年中に他企業の所有に属する主要原材料によって製造し、あるいは他企業の所有に属する製品又は半製品に加工、処理を加えた場合、これに対して受け取った又は受け取るべき加工賃をいいます。
③その他収入額とは、上記①②及びくず廃物の出荷額以外(例えば、転売収入(仕入れて又は受け入れてそのまま販売したもの)、修理料収入額、冷蔵保管量及び自家発電の余剰電力の販売収入額等)の収入額をいいます。
(5)受入機関に対して特に課す条件
特定技能で受入れを行う企業には、受入機関に求められる一般的な条件とともに、「素形材産業分野」において特に課される条件があります。
①経産省が組織する協議会に参加し、必要な協力を行うこと
素形材産業分野の特定技能外国人を受け入れる場合には、当該特定技能外国人に係る在留書申請の前に、経済産業省が組織する製造業特定技能外国人材受け入れ協議・連絡会の構成員にならなければなりません。協議・連絡会においては、構成員の連携の緊密化を図り、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるよう、制度や情報の周知、法令順守の啓発、地域ごとの人手不足の状況を把握し、必要な対応を行っています。
「協議・連絡会の活動内容」
・特定技能外国人の受入れに係る制度の趣旨や優良事例の周知
・特定技能所属機関等に対する法令順守の啓発
・就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
・地域別の人手不足の状況の把握・分析
・人手不足状況、受入れ状況等を踏まえた大都市圏等への集中回避に係る対応策の検討・調整(特定地域への過度な集中が認められる場合の構成員に対する必要な要請等を含む)
・受け入れの円滑かつ適正な実施のために必要なその他の情報・課題等の共有・協議等
②経産省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
構成員は、協議・連絡会が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の聴取、現地調査その他の業務に対し、必要な協力を行わなければなりません。
製造業における特定技能外国人材の受け入れについて(経済産業省)
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |