永住権の住居要件は何年の在留で満たすのでしょうか?

1,住居要件を満たすためには何年の在留が必要でしょうか?

 永住権の許可要件の1つに住居要件があります。住居要件とは一定の間に日本に在留しており、今後も在留を継続する予定であることを意味します。したがって、日本に在留していない海外に住む外国人は永住申請することは出来ません。

 住居要件

 原則として引き続き10年以上日本に在留していることが必要です。さらに、この10年以上の在留期間のうち、就労系の在留資格(「技能実習」並びに「特定技能1号」を除く)をもって就労し、引き続き5年以上在留していることが必要となります。

 例えば、10年間日本に在留しているが、大学・大学院で6年間留学の在留資格をもって在留し、その後就労系の在留資格に変更し4年間就労している場合、就労系の在留資格をもって5年以上在留していないため、この住居要件を満たすことができません。この場合、あと1年就労系の在留資格をもって、就労していることが必要となります。

 さらに、就労系の在留資格をもって5年以上在留している場合の起算が問題となります。この5年は、永住申請の時点を起算点として直近の5年間を意味します。例えば、大学で留学の在留資格をもって4年間在留し、卒業後就職して2年間就労系の在留資格をもって在留し、その後大学院に入学して留学の在留資格をもって2年間在留し、大学院修了後就職して3年間就労系の在留資格をもって在留していたとします。この場合、就労系の在留資格をもって5年間日本に在留していますが、直近の5年間は2年間が留学の在留資格で3年間が就労系の在留資格での在留であることから、「引き続き」5年以上就労系の在留資格をもって在留したとは認められず、住居要件を満たしません。「引き続き」と認められるためには、直近5年間継続して就労系の在留資格で就労している必要があります。

2,引き続き10年以上とは、どのような意味でしょうか。

 上記の通り、永住権の許可要件の1つである住居要件を充足するためには、原則として引き続き10年以上日本に在留していることが必要です。この「引き続き」とは在留が継続していることを意味します。10年以上日本に在留している場合であっても、出国が多い場合は、途切れることなく日本に在留しているとは認められなくなる可能性があります。一つの基準としては1回の出国で連続して90日以上、また1年の合計出国数が150日以上となった場合は、「引き続き」日本に在留しているとは認められなくなり、住居要件を満たさなくなる可能性が高いです。 

 もっとも、再入国許可(みなし再入国許可を含む)を得て出国する場合は在留が継続していると認められます。しかし、再入国許可を得ずに出国した場合や、再入国許可を受けていても期限内に再入国せず再入国許可が失効した場合は、在留が継続しているとは認められません。

3,原則10年在留に関する特例とは、どのようなものでしょうか?

 住居要件とは原則10年以上引き続き日本に在留していることですが、この要件には特例があります。下記の①~⑤に該当する場合には居住要件が緩和されます。

①日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った結婚生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していること。その実子等の場合は1年以上日本に継続して在留していること。

②「定住者」の在留資格で5年以上継続して日本に在留していること

③難民の認定を受けた者の場合、認定後5年以上継続して日本に在留していること

④高度専門職に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの。

ア、「高度人材外国人」として3年以上継続して日本に在留していること。

イ、3年以上継続して日本に在留している者で、永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を         行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。 

⑤高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの。

ア、「高度人材外国人」として1年以上継続して日本に在留していること。

イ、1年以上継続して日本に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。

4,住居要件の判断で在留年数以外に考慮される事項はあるでしょうか?

 住居要件とは、日本に生活の基盤があるという事です。したがって、在留年数以外の事情も総合的に考慮され判断されます。例えば、長期出国があった場合その理由すなわち合理的な理由があったか否か、家族状況(未成年の子供が日本の学校で教育を受けているか等)、日本における資産の有無(不動産の所有等)などの事情も総合的に考慮され判断されます。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法