特定技能外国人支援計画の不履行リスク|改善命令を受けたときの正しい対応方法


1.特定技能支援計画とは

(1)支援計画の意義

特定技能制度では、外国人材が日本で安心して働き・生活できるように、
**受入れ企業(特定技能所属機関)**が支援計画を策定・実行する義務があります。

この支援計画は、**「1号特定技能外国人支援計画」**と呼ばれ、
以下の10項目の「義務的支援」を必ず含める必要があります。

支援項目概要
① 事前ガイダンス入国前に生活や契約内容を説明
② 出入国時の送迎空港⇔住居への送迎
③ 住居確保支援適切な住宅を確保するための支援
④ 生活インフラ契約支援携帯・銀行・公共料金等の契約支援
⑤ 日本語学習機会の提供学習機会の提供または支援
⑥ 相談・苦情対応体制苦情・悩みを受け付ける窓口設置
⑦ 日本人との交流促進地域交流やイベント参加支援
⑧ 雇用終了時の転職支援契約終了時に転職を支援
⑨ 定期面談原則3ヶ月に1回、生活状況を確認
⑩ 面談記録・届出面談結果の記録・届出義務

参考:出入国在留管理庁|特定技能制度概要

登録支援機関に委託することも可能ですが、
最終責任は受入れ企業自身にある点を忘れてはいけません。


2.支援計画不履行によるリスクとは

(1)行政指導・報告徴収

支援計画を実施していない、記録がない、支援内容が不足しているなどの不備があると、
入管庁から指導・助言・報告徴収が行われます。
報告を怠る、虚偽報告を行うと行政罰の対象になる可能性もあります。


(2)改善命令・公表

指導後も改善が見られない場合、
出入国在留管理庁長官から「改善命令」が発出されます。

改善命令を受けた企業名は**公表(公示)**され、
社会的信用の低下・採用への影響など重大なリスクを伴います。


(3)登録支援機関登録の取消・停止

支援不履行が続いた場合、登録支援機関は登録取消業務停止命令を受けることもあります。
また、受入企業も再申請時に「不適正支援実績」として審査上不利になることがあります。


(4)刑事罰・行政罰の可能性

悪質な場合、入管法第71条の3に基づき
30万円以下の罰金または6か月以下の懲役が科されることがあります。
また、外国人の在留資格取消・受入停止(最大5年)といった重大な行政処分にも発展します。


(5)企業信用の低下

改善命令や行政処分は、取引先・金融機関・外国人材紹介機関にも共有されます。
結果として、

  • 新規採用・契約の停止
  • 登録支援機関との提携解消
  • 銀行融資への影響
    など、経営上の大きなダメージにつながる可能性があります。

3.改善命令とは?法的根拠と運用

(1)法的根拠

改善命令は、関連省令に基づく行政処分です。
入管庁は、所属機関や登録支援機関に対して、
「改善すべき事項」を命じ、期限内に是正報告を求めます。


(2)命令の性質

改善命令は法的拘束力を持つ行政処分であり、
命令に従わなければ、さらに登録取消や受入停止が行われる場合があります。

命令内容・企業名は原則として公示され、
企業の信頼性に直結するため、迅速な対応が求められます。


(3)聴聞・弁明の機会

命令前には、行政手続法に基づき「聴聞」や「弁明」の機会が与えられることがあります。
事実誤認や軽減理由を主張できる場であり、
行政書士・弁護士の同席による対応が推奨されます。


4.改善命令を受けた場合の対応方法

ステップ①:命令内容の正確な把握

  • 命令書に記載された違反事実・改善内容・期限を確認
  • 不明点は速やかに入管庁へ照会
  • 記録・証拠・社内体制を整理して事実関係を把握

ステップ②:内部調査と原因分析

  • 支援実施記録・面談記録・届出履歴を確認
  • 誰が・いつ・どの支援を怠ったのかを明確化
  • 登録支援機関に委託している場合は責任分担を整理

ステップ③:是正措置・改善報告書の作成

  • 命令の趣旨に沿った是正計画書を作成
  • 実施スケジュール・責任者・記録管理方法を明記
  • 実行後、証拠(写真・報告書・研修資料など)を添付して報告

ステップ④:弁明・再聴聞への対応

  • 改善意思を明確にし、誠実に対応
  • 法的観点からの主張整理は専門家の助言を受けることが望ましい

ステップ⑤:再発防止策の策定

  • 定期的な社内チェック体制を構築
  • 支援担当者の教育・研修を実施
  • 外部の行政書士や登録支援機関と連携し、第三者監査を導入

5.再発防止のための実務ポイント

  1. 支援実施の記録化
     → 支援実施日・担当者・内容を必ず記録に残す。
  2. 社内マニュアル整備
     → 支援業務を属人化させず、標準化する。
  3. 定期的な内部監査
     → 年1回、行政書士など外部専門家による監査を推奨。
  4. 行政届出のダブルチェック
     → 期限管理シートを活用し、届出遅延を防止。

6.よくある質問(Q&A)

Q1:改善命令を受けると、すぐに登録支援機関の登録が取り消されますか?
A:いいえ。改善命令に誠実に対応し、是正措置を完了すれば、即時取消とはなりません。
 ただし、命令に従わない場合は取消対象になります。


Q2:改善報告書の提出期限を過ぎてしまった場合は?
A:期限延長は原則認められませんが、やむを得ない事情がある場合は速やかに相談してください。


Q3:改善命令を受けた企業名は公開されますか?
A:はい。入管庁のHPで「特定技能所属機関に対する改善命令処分について」として公表されます。


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まとめ

特定技能支援計画の不履行は、「行政処分」「信用失墜」「人材確保困難」という三重のリスクをもたらします。
改善命令を受けた場合には、迅速な原因分析と誠実な是正対応が不可欠です。

特に、

  • 支援記録の保存
  • 社内教育の徹底
  • 外部専門家との連携
    を行うことで、再発防止と信頼回復を図ることができます。

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  「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」  同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  明治大学法科大学院修了 「資格」  行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」  入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法