特定技能所属機関の要件とは?|受入れ企業が必ず満たすべき条件を徹底解説
目次
1.特定技能所属機関とは?
「特定技能所属機関」とは、在留資格「特定技能1号」または「特定技能2号」を持つ外国人を雇用・受入れる日本の企業・団体を指します。
つまり、外国人と雇用契約を結び、直接その労働に従事させる主体が「特定技能所属機関」です。
特定技能制度は、少子高齢化による人手不足を補うために2019年に創設された制度で、受入企業側の適正な体制が厳しく審査されます。
そのため、所属機関となるためには、法令遵守体制・経営基盤・支援実施能力が求められます。
2.特定技能所属機関の基本的な要件
(1)適法な法人・事業主であること
所属機関は、日本国内で適法に事業を行っている法人又は個人事業主である必要があります。
以下のような証明資料が求められます。
- 商業登記簿謄本(法人の場合)
- 開業届または青色申告承認書(個人事業主の場合)
- 定款・会社概要・事業内容の説明資料
これらは企業の実態と継続性を確認するための重要な書類です。
(2)雇用契約の適正性
外国人との雇用契約は、労働基準法・最低賃金法・労働契約法などの関係法令に適合していなければなりません。
具体的には以下の点が審査されます。
- 日本人と同等以上の報酬水準
- 社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への適正加入
- 労働条件通知書の明示(日本語・母国語併記が望ましい)
- 労働時間・休日・残業等が法定基準内
外国人労働者が不利益を受けないよう、入管は契約内容を細かく確認します。
(3)安定した経営基盤
特定技能所属機関は、安定的に雇用・支援を継続できる経営状態であることが求められます。
赤字決算・債務超過・社会保険未納などがある場合は、所属機関として認められません。
【提出書類の例】
- 直近の決算書・確定申告書
- 納税証明書(法人税・消費税など)
- 社会保険料の納付証明書
経営の安定性は、「外国人の生活支援を継続できるかどうか」を判断する重要要素です。
(4)法令遵守体制の整備
所属機関には、入管法・労働法・社会保険法などの法令遵守が求められます。
以下のような違反歴がある場合、所属機関となることはできません。
- 不法就労助長罪(入管法73条の2)に該当する行為
- 労働基準法や労働安全衛生法に基づく重大な違反
- 社会保険料・税金の未納
- 外国人技能実習生に対する人権侵害・監理不全
これらの確認は、入管庁・法務省・厚生労働省の情報共有により行われています。
(5)支援体制を有していること
特定技能1号外国人を受け入れる場合、所属機関は以下の支援業務を実施しなければなりません。
- 生活オリエンテーション(生活ルール・行政手続き案内)
- 住宅の確保支援
- 生活相談対応(母国語対応含む)
- 日本語学習機会の提供
- 各種行政機関への同行支援
これらを自社で実施する場合は、支援担当者の配置と支援計画の提出が必要です。
外部の「登録支援機関」に委託することも可能です。
詳しくは関連記事「特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係る基準とは?」をご覧ください。
3.特定技能所属機関の法的責任と義務
特定技能所属機関は、単に雇用主であるだけでなく、在留資格の維持責任を負います。
以下のような義務を怠ると、受入停止・許可取消のリスクがあります。
義務内容 | 主な内容 |
---|---|
報告義務 | 雇用契約の変更・終了・転籍等を入管庁へ届出 |
支援実施義務 | 支援計画に沿った支援を確実に実施 |
記録保管義務 | 支援記録を3年間保存 |
再発防止義務 | 問題発生時の是正・改善策の報告 |
これらは「特定技能所属機関に係る基準」(法務省告示第3号)に明記されています。
4.欠格事由(受入れができないケース)
所属機関として認められない主なケースは以下のとおりです。
- 不法就労助長罪・人身取引等の刑事罰を受けた者
- 5年以内に技能実習計画の認定取消処分を受けた者
- 社会保険未加入・未納がある事業者
- 登録支援機関の登録取消処分を受けた者
これらは「信頼性欠如」と判断されるため、入管庁は厳しく審査します。
5.支援計画との関係性
所属機関は、受入時に「特定技能外国人支援計画」を作成・提出する義務があります。
これは、外国人の生活支援内容・実施方法・支援担当者などを明確にした計画書です。
- 計画に不備があると許可が下りません
- 計画通りに支援を実施しないと「基準違反」となり、受入停止処分もあり得ます
6.登録支援機関に委託できる範囲
所属機関が支援を自社で行えない場合、登録支援機関に委託することが可能です。
ただし、委託しても「所属機関の責任」が免除されるわけではありません。
委託できる支援業務は以下の通りです。
- 生活オリエンテーション
- 住宅確保・行政手続き支援
- 日本語教育支援
- 相談窓口対応
登録支援機関を選定する際は、登録番号・実績・母国語対応の有無を確認することが重要です。
関連リンク:出入国在留管理庁|登録支援機関
7.出入国在留管理庁の審査ポイント
入管庁は、所属機関の適格性を以下の観点から総合判断します。
- 経営安定性(決算・納税・保険加入)
- 法令遵守体制(違反歴・社内管理体制)
- 支援実施能力(担当者の配置・委託先の適正性)
- 外国人との契約適正(報酬水準・労働条件)
これらを満たしていない場合は、特定技能認定申請が不許可となる可能性があります。
8.よくある質問(Q&A)
Q1.零細企業でも特定技能所属機関になれますか?
A.可能です。ただし、経営の安定性・社会保険加入・法令遵守体制が求められます。赤字決算であっても、継続的に事業を行っている実績があれば許可される場合もあります。
Q2.外国人技能実習生を受け入れていた会社は特定技能も可能ですか?
A.可能ですが、過去5年以内に技能実習計画の認定取消を受けていないことが条件です。また、技能実習生から特定技能への移行も認められます。
Q3.支援を登録支援機関に委託すれば、企業側は何もしなくて良い?
A.いいえ。最終的な責任はあくまで**特定技能所属機関(企業)**にあります。支援委託契約の内容確認・実施状況の把握は企業側の義務です。
Q4.所属機関の変更(転職)は可能ですか?
A.可能ですが、転職先の所属機関が基準を満たしていることが前提です。変更の際は「在留資格変更許可申請」または「在留期間更新許可申請」が必要です。
9.まとめ:特定技能所属機関は「信頼と体制」が鍵
特定技能制度において所属機関は、外国人の労働・生活双方を支える中核的存在です。
入管庁は、制度の信頼性確保のため、企業の体制・法令遵守状況・支援能力を厳しく審査しています。
特定技能所属機関を目指す企業は、以下を徹底しましょう。
- 社会保険・税務の適正管理
- 支援体制(自社・委託)の整備
- 労働契約内容の適法化
- 継続的な支援実施・記録保存
制度の理解が不十分なまま申請すると、不許可リスクが高まります。
不安がある場合は、入管専門行政書士に相談するのが確実です。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |