特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係る基準とは?【完全ガイド】
目次
1.特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係る基準とは?
特定技能外国人を受け入れる企業(=特定技能所属機関)は、
「特定技能外国人支援計画」を作成し、入管に提出・認定を受ける必要があります。
その際、入管法第2条の5第6項および特定技能省令第3条に基づき、
支援計画の「適正な実施の確保に係る基準」が定められています。
つまりこの基準とは、
特定技能外国人が安心して日本で働けるように、
受け入れ機関が適正に支援を行うために遵守すべきルール
を指します。
2.支援計画が必要な理由
特定技能制度は、外国人が日本の人手不足分野で即戦力として働くための制度ですが、
日本語や生活習慣の違いから、外国人が適応できずにトラブルになる例もあります。
そのため入管庁は、受け入れ企業に対し以下を義務付けています。
- 外国人が安心して日本で生活・就労できる環境を整備する
- 労働条件の不利益変更や人権侵害を防止する
- 適切な支援を行う体制を整える
このために作成・実施するのが特定技能外国人支援計画です。
3.特定技能所属機関の義務
特定技能所属機関(=受け入れ企業)は、次の2つの義務を負います。
- 支援計画の作成・実施義務
外国人ごとに支援計画を策定し、計画に基づいた支援を実行すること。 - 適正な実施の確保義務
入管庁が定めた基準(=適正な実施確保基準)に従って行うこと。
基準を満たさない場合、認定が取り消される可能性もあります。
4.支援計画の具体的内容(10項目)
特定技能外国人支援計画には、次の10項目の支援が含まれます。
支援項目 | 内容概要 |
---|---|
① 事前ガイダンス | 来日前に業務内容・生活ルールを説明 |
② 出入国時の送迎 | 空港から職場・住居への送迎支援 |
③ 住居確保・生活支援 | 住宅探しの補助、口座開設など |
④ 生活オリエンテーション | 日本のルール・防災・交通安全説明 |
⑤ 日本語学習機会の提供 | 学習支援または教材の提供 |
⑥ 相談・苦情対応 | 母国語相談・問題発生時の対応 |
⑦ 日本人との交流促進 | 地域行事やボランティア参加支援 |
⑧ 転職支援 | 契約終了時の新たな職場情報提供 |
⑨ 離職時の住居支援 | 解雇・退職時の住居確保支援 |
⑩ 定期面談・報告 | 外国人本人と定期的な面談・報告義務 |
これらを自社で行うことが難しい場合、
登録支援機関に委託することが可能です。
5.適正な実施の確保に係る基準の詳細
出入国在留管理庁が定める「適正な実施の確保に係る基準」では、
以下の6つのポイントが重視されています。
(1)安定した経営基盤
- 受け入れ機関が継続的に事業を運営できる経営基盤を有すること
- 社会保険や労働保険への加入が義務付けられていること
(2)人員体制・支援能力
- 支援計画を適切に行える体制・人員を有していること
- 支援担当者が外国人と円滑に意思疎通できる能力を持つこと
(3)法令遵守
- 入管法・労働基準法・最低賃金法などの法令を遵守していること
- 過去に不正行為や違反がないこと
(4)適切な支援の実施
- 支援内容を計画通りに実行し、証拠資料を保存していること
- 外国人からの苦情・相談に誠実に対応していること
(5)記録・報告義務
- 支援の実施状況を記録し、入管庁に報告できる体制を持つこと
(6)改善命令への対応
- 入管庁からの指導・改善命令に誠実に従う体制があること
公式の運用基準は、
出入国在留管理庁「特定技能制度運用要領」
で確認できます。
6.出入国在留管理庁による監督・罰則
入管庁は、特定技能所属機関に対して定期的な報告や立入調査を行います。
次のような場合には厳しい処分が下されます。
- 支援計画を実施していない
- 報告義務を怠った
- 不正・虚偽申請を行った
処分内容は以下の通りです。
違反内容 | 主な処分 |
---|---|
支援計画の不履行 | 認定の取り消し |
報告怠慢・虚偽報告 | 指導・改善命令・認定取消 |
悪質な違反 | 公表・特定技能受入停止 |
7.登録支援機関との関係
自社で支援計画を実施することが難しい場合、
登録支援機関に業務委託することができます。
登録支援機関は、入管庁に正式登録された専門機関であり、
支援内容のすべてまたは一部を代行可能です。
ただし、委託しても所属機関の責任は免れません。
8.支援計画不備によるリスク
支援計画が不十分であると、次のようなリスクが生じます。
- 入管からの認定拒否・不許可
- 支援機関登録の取消し・公表
- 外国人の在留資格取り消しにつながるケースも
そのため、支援計画の作成時には専門家(行政書士など)によるチェックが不可欠です。
9.実務上の注意点と行政書士によるサポート
(1)外国人本人の理解を重視
支援内容は外国人本人が理解できる言語で説明する必要があります。
翻訳文書・通訳支援が必要なケースもあります。
(2)支援記録の保存
支援を行った証拠(メール・面談記録など)を5年間保存することが推奨されています。
(3)行政書士サポートの活用
専門の行政書士に依頼することで、
- 支援計画の作成
- 登録支援機関との委託契約書作成
- 入管提出書類の整備
などをスムーズに行えます。
10.よくある質問(Q&A)
Q1.支援計画は全員分必要ですか?
はい。特定技能外国人1人ごとに支援計画を作成しなければなりません。
Q2.支援を登録支援機関に委託した場合、報告義務はありますか?
あります。委託しても所属機関が最終責任を負うため、報告・確認義務は残ります。
Q3.小規模企業でも支援計画を作成できますか?
可能です。ただし、体制や支援能力を証明できる資料(支援担当者リストなど)が必要です。
Q4.支援計画は更新時も提出が必要ですか?
はい。在留期間の更新時には、最新の支援計画を提出します。
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まとめ
特定技能外国人支援計画の「適正な実施の確保に係る基準」は、
外国人が安心して働ける環境を守るための法的ルールです。
受け入れ機関は、単に雇用するだけでなく、
生活・就労の両面で支援する責務を負っています。
適切な支援体制を整え、入管庁の基準を満たすことが、
外国人労働者の安定雇用と企業の信頼確保につながります。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |