特定技能ビザを「農業」分野で取得するための要件は何でしょうか?

1,特定技能1号「農業」とは、どんな制度でしょうか?

 現在、農業分野においては人手不足が深刻化しています。特定技能1号は、このような人手不足に対応するため、一定の専門性・技術性を持った外国人を受け入れることによって、農業分野の存続・発展を図り、日本経済や社会基盤の持続可能性を維持することを目的としています。

特定技能分野別運用要綱(農業分野) 930004544.pdf (moj.go.jp)

2,農業分野での1号特定技能外国人の受入見込数はどの程度でしょうか?

 農業分野における1号特定技能外国人の受入見込数は、令和5年度までで最大36,500人とされています。また、これを受入見込数の上限とされています。

 農業労働力支援協議会による「新たな外国人材の受入れ制度に関する基本的な考え方」によれば、雇用就農者数は約7万人不足しているとされています。また、農業就農者の世代間バランスは、基幹的農業従事者の68%が65歳以上、49歳以下は11%となっています。今後、65歳以上の農業従事者の退職が見込まれるなか、農業分野の人手不足状況は、より一層深刻化していくと見込まれています。農業分野における雇用労働力は、平成17年から10年間で約9万人増加し平成27年には22万人となっています。その一方で平成29年度の農業分野の有効求人倍率は1.94倍となっており、人手不足が顕著であることがうかがえます。

  このような人手不足状況において、我が国の農業の持続的な発展を図るためには、農業について基本的な知識を有する特定技能外国人を受け入れる必要性が生じています。なお、上記受入見込数は国内人材確保や生産性向上を図っても、なお不足すると見込まれる数を条件として算出されているため、過剰な受入見込数とはなっていません。

3,特定技能「農業」では、どんな業務に従事することができるでしょか?

 特定技能「農業」では、以下の主たる業務と関連業務に従事することが認められています。

 ①主たる業務

 特定技能「農業」では、A耕種農業全般、B畜産農業全般に係る業務に従事することが認められます。各々、技能測定試験(下記4)に合格する必要があります。

 A, 耕種農業とは、栽培管理、農産物の集出荷・選別などの業務のことです。なお、実施する業務に栽培管理の業務は必ず含まれている必要があります。

 B, 畜産農業とは、飼養管理、畜産物の集出荷・選別などの業務のことです。なお、実施する業務に飼養管理の業務は必ず含まれている必要があります。

 ②関連業務

 関連業務のみに専ら従事することは認められません。もっとも、主たる業務をあわせて付随的に従事する場合には、関連業務に従事することが認められます。特定技能「農業」の関連業務の例としては、農畜産物の製造・加工、運搬、販売作業、冬場の除雪作業などが例として挙げられます。

4,特定技能「農業」で外国人を雇用する条件

①外国人が特定技能「農業」の在留資格を取得していること

 在留資格とは、外国人が日本に在留し、一定の活動を行うことができる資格をいいます。特定技能「農業」の在留資格を取得するための要件は以下の通りです。

A,技能水準(試験区分)

 実施する業務に対応する農業技能測定試験に合格する必要があります。

B,日本語能力水準

 国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験(N4以上)のどちらかに合格する必要があります。

C,実施する業務に対応する2号技能実習を良好に修了した者は上記A,Bの試験を免除されます

②フルタイムの雇用であること

 必ずフルタイムの雇用である必要があります。フルタイムであれば、雇用形態は直接雇用・派遣雇用のどちらも認められます。

③受入機関に対して特に課す条件を満たしていること。

 受入機関一般に課せる条件のほか、特定技能「農業」において特に課される条件は以下の通りです。

A,労働者を6か月以上継続して雇用した経験を有すること

 a, 直接雇用の場合、受入企業がこの要件を満たす必要があります。「継続して6か月」であることが重要で、短期間の雇用の累積合計が        6か月以上あったとしても認められません。

 b, 派遣雇用の場合、派遣先がこの要件を満たす必要があります。また、派遣雇用の場合には、継続した6か月以上の雇用経験がなくても、「派遣先責任者講習」「その他労働者派遣法における派遣先の講ずべき措置等の解説が行われる講習」を受講した者を派遣先責任者として選任している場合はこの要件を満たします。

B,協議会の構成員であること

  受入企業は、農林水産省が設置する農業特定技能協議会に加入する必要があります。特に、農業分野の特定技能外国人をはじめて受け入れる場合には、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会に加入しなければなりません。協議会に加入せずに特定技能外国人を就労させた場合には、不法就労助長罪に処されしまいます。

C,協議会に対し必要な協力を行うこと

  受入企業は、上記Bの協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。派遣雇用の場合は派遣先にこの要件が求められます。協議会に対し必要な協力を行わない場合は、不法就労助長罪に処せられてしまいます。

D,登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託する場合には、協議会に必要な協力を行う登録機関に委託すること。

  受入企業が、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合には、当該登録支援機関は上記Bの協議会に必要な協力をする必要があります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法