特定技能1号ビザを、「宿泊」分野で取得する為の要件は何でしょうか?

1,特定技能1号「宿泊」とは、どんな制度でしょうか?

現在、宿泊業分野においては人手不足が深刻化しています。特定技能1号は、このような人手不足に対応するため、一定の専門性・技術性を持った外国人を受け入れることによって、宿泊業分野の存続・発展を図り、日本経済や社会基盤の持続可能性を維持することを目的としています。

特定技能分野別運用要綱

2,宿泊分野での1号特定技能外国人の受入見込数はどの程度でしょうか?

 宿泊分野での1号特定技能外国人の受入見込数は最大22,000人とされ、これを受入れの上限とされています。宿泊分野では約3万人の人手不足が生じていると推計されています。さらに、令和5年度までには、宿泊分野で約10万人の人手不足が生じると予測されています。政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」で、2030年には訪日外国人旅行者6,000万人を目標としています。今後見込まれる訪日外国人旅行者の増加に伴い、宿泊分野における人手不足状況は顕著なものになっていくと予測されます。そこで、宿泊分野で一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れ、フロント・広報・接客・企画などの宿泊業務に従事する外国人の必要性が生じています。なお、上記の受入見込数は、生産性向上や国内人材確保を行っても、なお不足すると見込まれる数に基づいて算出されているため、過剰な受入見込数とはなっていません。

3,特定技能「宿泊」では、どんな業務に従事することができるでしょうか?

 特定技能「宿泊」では、以下の主たる業務と関連業務に従事することが認められています。

①主たる業務

 特定技能「宿泊」では、宿泊サービスの提供に係る業務に従事することが認められます。その例としては、宿泊施設におけるフロント・企画、広報・接客・レストランサービス、が挙げられます。

②関連業務

 関連業務のみに専ら従事することは認められません。もっとも、主たる業務と合わせて付随的に従事する場合には、関連業務に従事することが認められます。特定技能「宿泊」の関連業務の例として、旅館やホテルの施設内の土産物売店における販売業務、旅館やホテルの施設内の備品の点検・交換業務、などが挙げられます。

4,特定技能「宿泊」で外国人を雇用するための要件は何でしょか?

①外国人が特定技能「宿泊」の在留資格を取得していること

 在留資格とは、外国人が日本に在留し、一定の活動を行うことができる資格をいいます。特定技能「宿泊」の在留資格を取得するための要件は以下の通りです。

A,技能水準(試験区分)

 宿泊特定技能測定試験に合格する必要があります。フロント、企画・広報、レストランサービスなどの業務について、定期的な内容であれば独力実施できる能力が求められます。

B,日本語能力水準

 国際交流基金日本語能力テスト、又は日本語能力試験(N4以上)のどちらかに合格する必要があります。

②直接雇用であること

 フルタイムの直接雇用に限られます。派遣雇用は認められません。宿泊分野において1号特定技能外国人を派遣し、又は派遣された者を受け入れた場合には、以後5年間は特定技能外国人の受入ができなくなります。

③受入機関に対して特に課す条件を満たしていること

 受入機関一般に課される条件のほか、特定技能「宿泊」において特に課される条件は以下の通りです。

A,受入企業及び就労施設が所定の要件を満たしていること

受入企業及び就労施設は、以下の4つを満たしている必要があります。  

・旅館業法2条2項に基づく旅館・ホテル営業の形態で旅館業を営んでいること

・旅館業法3条1項の許可を受けていること

・風営法2条6項4号に規定されている施設(ラブホテル等)に特定技能外国人を就労させないこと

・風営法2条3項に規定する接待を特定技能外国人に行わせないこと

 受入企業が上記の要件を満たさずに特定技能外国人を就労させると、資格外活動罪や不法就労助長罪といった犯罪が成立します。また、特定技能外国人の受入後に業務に従事する事業所が変更になった場合は、14日以内に届け出が必要です。この届出を怠った場合、刑事罰に処されます。

B,協議会の構成員であること

 受入企業は、国土交通大臣が設置する宿泊分野特定技能協議会に加入する必要がります。特に、宿泊分野の特定技能外国人をはじめて受け入れる場合には、特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会に加入しなければなりません。協議会に加入せずに特定技能外国人を就労させた場合には、不法就労助長罪に処せられますのでご注意ください。

C,協議会に対し必要な協力を行うこと

 受入企業は、上記Bの協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。協議会に対し必要な協力を行わない場合には、不法就労助長罪に処されますのでご注意ください。

D,国土交通省に対し必要な協力を行うこと

 受入企業は、国土交通省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行う必要があります。国土交通省に対し必要な協力を行わない場合には、不法就労助長罪に処されますのでご注意ください。

E,登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託する場合には、当該登録機関が所定の要件を満たしていること        

 受入企業が、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合には、当該登録支援機関も受入企業と同時に上記B,C、Dの条件を満たしている必要があります

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/

  代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法