「自動車運送業分野」における特定技能ビザ(在留資格「特定技能」)取得の要件とは何ですか?
特定技能ビザは日本の在留資格の一つであり、2024年には特定技能1号の対象産業分野に「自動車運送業」が新たに加わりました。
1.特定技能ビザに「自動車運送業分野」が追加された背景
特定技能ビザは、対象となる職業分野が法律で指定されており、自動車運送業分野は2024年に追加された比較的新しい分野です。この追加の背景には、同年問題として知られる物流・運送業界の課題があります。
(1)物流・運送業における「2024年問題」
2024年問題とは、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働上限が「960時間」に制限されること、ならびに改正改善基準報告の適用による影響を指します。この規制はドライバーの労働環境改善には有効ですが、時間外労働の減少により輸送能力が不足する可能性があります。
現時点で物流・運送業界はトラックドライバーが不足しており、2024年には輸送能力が14.2%不足すると試算されており、2030年には34.1%に達する見込みです。こうした背景から、外国人材の受入れによる労働力確保が急務とされています。
(2)特定技能分野としての追加決定
2024年3月、閣議決定により特定技能1号の職業分野として以下4分野が新規に追加されました。
- 自動車運送業
- 鉄道
- 林業
- 木材産業
特に自動車運送業の追加は、2024年問題の解決策として期待されています。2024年12月19日の上乗せ基準告示施行により、企業は要件を満たした外国人の受入れを開始できるようになりました。
(3)在留資格「特定技能」とは
特定技能は、2018年に制度化され、2019年から適用されています。外国人が日本国内で働き、滞在するための在留資格であり、同時に企業側にもメリットがあります。
- 即戦力の外国人材確保
特定技能は、日本国内で人材不足が深刻な産業分野で、即戦力とみなされる外国人の雇用を認めています。企業は専門的な知識や技能を持った外国人を安定的に確保できます。 - 自動車運送業は特定技能1号のみ
特定技能には1号と2号がありますが、自動車運送業の対象は1号のみです。2号はより高度な技能を要求され、取得要件が厳格です。 - 転職可能で経験を積める
在留中に要件を満たせば転職が自由であり、多様な業務経験を積むことができます。 - 将来的な2号への拡張可能性
今後、自動車運送業も特定技能2号に追加される可能性があります。2号に該当すれば、在留期間の更新上限がなくなり、家族帯同も可能です。ただし試験難易度や経験年数の条件が厳しくなります。
(4)特定技能1号の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 在留期間 | 法務大臣が分野ごとに指定、主に4か月・6か月・1年 |
| 在留期間更新 | 通算5年まで |
| 対象産業分野 | 16分野 |
| 経験年数 | 不問 |
| 日本語試験 | 必須(N4相当) |
| 技能試験 | 必須(各分野) |
| 家族帯同 | 不可(2025年時点) |
日本国内での実務経験がなくても、試験に合格すれば資格取得が可能です。在留期間の更新上限を超えた場合は、他の在留資格への変更が必要になります。
2.自動車運送業分野の特定技能ビザ
特定技能は分野ごとに取得条件や試験内容が異なり、自動車運送業分野も個別に確認が必要です。
(1)自動車運送業分野の種類
- トラック運送業
- タクシー運送業
- バス運送業
日本の運転免許取得や新任運転者研修など、準備期間が必要な場合があります。在留資格を「特定活動(自動車運送業準備)」に変更して準備することも可能です。
各分野の概要と準備期間
| 分野 | 主な業務 | 準備期間 |
|---|---|---|
| トラック運送業 | 運行管理下で貨物輸送、積付け、車両点検、乗務記録作成等 | 6か月 |
| タクシー運送業 | 運行管理下で旅客輸送、車両点検、乗務記録作成、接客 | 1年 |
| バス運送業 | 運行管理下で旅客輸送、車両点検、乗務記録作成、接客 | 1年 |
(2)取得要件(外国本人)
特定技能共通要件
- 日本語能力試験(N4相当)合格
- 分野別特定技能試験合格
- 18歳以上
- 健康状態良好
- 特定技能1号としての在留期間通算4年以内(バス・タクシー)または4年半以内(トラック)
自動車運送業特有の要件
- 日本の運転免許証取得
- 新任運転者研修修了(タクシー・バスのみ)
海外免許は不可で、未取得者は日本国内で取得する必要があります。
(3)業務内容
| 分野 | 主な業務 | 関連業務 |
|---|---|---|
| トラック運送業 | 運行前後の車両点検、貨物輸送、安全管理、乗務記録作成、積付け | 車内・営業所清掃、運賃精算、その他付随業務 |
| タクシー運送業 | 車両点検、旅客輸送、安全管理、乗務記録、乗客対応 | 車内・営業所清掃、運賃精算、その他付随業務 |
| バス運送業 | 車両点検、旅客輸送、安全管理、乗務記録、乗客対応 | 車内・営業所清掃、運賃精算、その他付随業務 |
(4)特定技能評価試験
- 受験方法:出張方式またはCBT方式
- 試験時間:学科+実技で80分
- 学科試験:30問、〇×式
- 実技試験:20問、三肢択一
- 合格基準:学科・実技とも正答率60%以上
- 合格証明書有効期限:受験日から10年
試験範囲と水準
| 分野 | 試験範囲 | 水準 |
|---|---|---|
| トラック運送業 | 運行業務、荷役業務、安全衛生 | 貨物輸送の点検・積付け・乗務記録作成ができるレベル |
| タクシー運送業 | 運行業務、接遇業務、安全衛生 | 旅客輸送の点検・安全運行・乗務記録作成・接客ができるレベル |
| バス運送業 | 運行業務、接遇業務、安全衛生 | 乗合・貸切バス業務の点検・安全運行・乗務記録作成・接客ができるレベル |
3.受入企業側が確認すべきこと
(1)特定技能受入のメリット
- 即戦力人材を安定確保
- 人数制限なしで受入可能
- 人材コストの軽減
(2)雇用までの流れ
- 受入企業が要件を満たす
- 募集・面接
- 雇用契約締結
- 在留資格を「特定技能自動車運送業準備」に変更(必要時)
- 新任運転者研修実施(タクシー・バス)
- 特定技能1号申請
- 申請後、業務開始
(3)受入企業の要件
- 自動車運送業分野特定技能協議会への加入
- 新任運転者研修実施(タクシー・バス)
- 運転者職場良好度認定制度または安全性優良事業所(トラック)の認証取得
協議会加入の流れ
- 国土交通省HPから必要書類取得
- 地方運輸局に提出して申請
- 承認後、入会証明書取得
研修・認証制度
- 新任運転者研修:タクシー・バス運転者に必須、安全運転基礎習得
- 運転者職場良好度認定:法令遵守、労働時間・休日、心身健康、安心・安定、多様性確保等を審査
- 安全性優良事業所(Gマーク):トラック運送業向け、安全性・法令遵守を評価
まとめ
自動車運送業分野の特定技能ビザにおけるポイントは以下の通りです。
- 分野はトラック・タクシー・バスの3種類で、個別の評価試験がある
- 日本語試験、年齢、健康状態が共通要件
- 自動車運送業特有の要件として日本運転免許証取得や新任運転者研修修了が必要
- 学科試験は〇×式、実技試験は三肢択一、各60%以上で合格
- 受入企業側も協議会加入や認証制度取得が必要
- 外国人本人は要件を満たす企業に雇用され、試験合格後に特定技能資格を取得
![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |
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