特定技能受入れ機関が提出する届出(随時・定期)とは?|提出書類・期限・注意点を専門家が徹底解説
目次
【この記事の結論】
特定技能の受入れ機関には、
- 「随時届出」
- 「定期届出」
の2種類の届出義務が課されています。
これは、受入れ機関が法律を守った適切な受入れを継続できているかを確認するための制度で、届出漏れや虚偽記載があると受入れ停止・不許可・罰則につながる重大事項です。
1.特定技能の届出(随時・定期)とは何ですか?
特定技能制度では、
- 受入れ機関(企業)
- 登録支援機関(委託を受けた支援会社)
に対し、
外国人の活動状況や会社の体制を継続的に報告する義務が課されています。
その届出が以下の2種類です。
随時届出(法務省令第10条)
外国人の状況や企業側に変更が生じたときに、その都度提出する届出。
定期届出(法務省令第9条)
1年に1回以上、外国人の支援状況や労働条件をまとめて提出する届出。
特定技能は、「外国人が不適切な労働環境に置かれていないか」「企業が適正に継続できる体制か」を監督するための制度のため、届出は非常に重視されています。
2.随時届出とは|提出が必要になるケース一覧
随時届出は、変更があればすぐ提出する形式で、種類が非常に多いのが特徴です。
以下、提出が必要な主なケースです。
【随時届出(提出必須のケース一覧)】
(1)外国人の雇用条件に変更があった場合
- 給与の変更
- 役職配置の変更
- 就業場所の変更
- 勤務時間・休日の変更
※特に給与変更は最も提出漏れが多く、指導の対象になります。
(2)外国人の在留カード情報が変わった場合
- 住所変更
- 在留カード更新
- 在留資格変更(特定技能 → ほかのビザ等)
(3)外国人に関する重大な事情が発生した場合
- 退職・解雇
- 失踪
- 病気・事故・休業
- 傷病手当金の受給
(4)受入れ機関側の変更があった場合
- 会社名変更
- 代表者変更
- 事業所の新設・移転
- 法人番号の変更
- 資本金の変更
- 決算情報の変更
(5)外国人支援を委託している場合
- 登録支援機関の変更
- 委託契約書の内容変更
随時届出は提出漏れが起きやすく、「知らなかった」と言っても免責されません。
3.定期届出とは|毎年必ず必要な届出
定期届出は1年に1回以上の提出が義務化されている報告書です。
【定期届出の内容】
(1)支援状況の報告
- 事前ガイダンスを実施したか
- 生活オリエンテーションを実施したか
- 日本語学習支援を行ったか
- 行政手続き支援が適切に行われたか
- 定期面談の実施報告
(2)労働条件の報告
- 給与の支払い状況
- 社会保険加入状況
- 労働時間等が適正か
(3)生活環境の状況
- 住居の確保
- 生活上のトラブルの有無
- 相談対応の記録
(4)外国人本人の活動状況
- 職務内容が適正か
- 技能測定試験の進捗(2号への移行可否)
毎年1回の書類になりますが、分量が多く、提出間違いが非常に多い届出です。
4.提出期限と提出方法(オンライン対応可)
随時届出
変更から 14日以内 に提出。
定期届出
外国人を受け入れてから1年経過する日までに提出
(例:2024年6月1日に受入 → 2025年5月31日まで)
提出方法
- 出入国在留管理庁オンライン申請システム(推奨)
- 出入国在留管理局への郵送
- 直接持参
5.受入れ機関が提出すべき主な書類一覧
【随時届出:主な書類】
- 変更届出書
- 契約書(雇用契約書の変更がある場合)
- 給与台帳・就業規則(必要に応じて)
- 在留カードの写し
- 登録支援機関との委託契約書(変更時)
【定期届出:主な書類】
- 支援実施状況報告書
- 支援記録(日本語学習支援・相談記録など)
- 出勤簿
- 給与台帳
- 社会保険加入証明
- 住居の契約書(支援内容と関連する場合)
6.届出漏れ・虚偽記載のリスクとペナルティ
特定技能の届出は非常に厳格です。
【届出漏れの主なリスク】
(1)次回の特定技能申請が不許可になる
- 同じ企業が追加で採用できない
- 更新審査で足止めされる
(2)受入れ停止措置(最長5年)
特定技能外国人を一切受け入れられなくなる重大処分。
(3)行政指導・改善命令
繰り返すと受け入れ停止につながる。
(4)悪質な場合は罰金・刑事罰の可能性
- 虚偽の届出
- 賃金未払い
- 社保未加入 など
特に「随時届出漏れ」が最も多く、不許可リスクの原因になります。
7.登録支援機関に委託している場合の注意点
登録支援機関に支援を外注していても、
届出義務は受入れ企業側にも残ります。
【よくある誤解】
登録支援機関に任せているから、届出はすべて外部がやってくれる。
これは誤りです。
【実際】
- 定期届出 → 登録支援機関が作成することが多い
- 随時届出 → 企業が提出するケースが多い
特に「給与変更」「住所変更」などは企業しか把握できない情報なので、登録支援機関に任せることはできません。
8.【実務ポイント】許可率を下げないための届出管理方法
行政書士の実務経験からみても、特定技能でトラブルになる企業には共通点があります。
(1)給与変更時に提出を忘れる
年1回の昇給で提出漏れする企業が非常に多い。
(2)外国人の退職・転職届出を忘れる
14日以内の提出が必要。
(3)支援記録が不十分
- 日本語学習支援
- 行政手続き支援
- 相談対応
などの記録がないと、無支援扱いになることがあります。
(4)経営状況報告の準備不足
決算書に赤字が続くと不許可の原因になります。
(5)届出管理シートを作るとミスが激減
- 図表の作成
- 提出期限の管理
- 年次の支援記録管理
これらを整理することで、許可率は大幅に改善します。
9.よくある質問(Q&A)
Q1. 随時届出と定期届出をどちらも提出しないとどうなりますか?
A. **最悪の場合、受入れ停止処分(最長5年)**になる可能性があります。
Q2. 在留カードの更新だけでも随時届出は必要ですか?
A. 必要です。
住所変更・在留カード番号変更なども届出対象です。
Q3. 給与が上がる場合も届出が必要ですか?
A. 給与が上がっても下がっても提出必須です。
Q4. 登録支援機関に全て任せれば安心ですか?
A. 企業側にも届出義務が残ります。
特に「随時届出」は企業が行う場面が多いです。
Q5. 外国人が退職した場合はどうすればよいですか?
A. 14日以内に「特定技能雇用契約終了届」を提出します。
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参考リンク
![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |
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