特定技能1号の在留期間が延長へ?2025年制度改正の全内容まとめ
目次
はじめに
2025年9月30日、特定技能制度(日本)の運用要領および省令が改正され、特定技能1号の在留期間や通算在留期間に関する扱いが大きく見直されました。これは企業・登録支援機関・外国人本人にとって重要な変更点であり、制度の中長期的な運用にも影響を及ぼします。
本記事では、改正内容をわかりやすく整理するとともに、実務面や注意点、Q&Aも交えて解説します。
2025年改正の背景と趣旨
まず、なぜ今回の改正が行われたのか、その背景と目的を押さえておきましょう。
- 出入国在留管理庁(入管庁) は、特定技能制度の継続的な運用改善を図っており、長期在留の可能性を持たせながらも適正管理を強化。
- また、コロナ禍などで生じたやむを得ない事情(休業等)を考慮し、公平性を高める狙いがあります。
主な改正ポイント
1. 在留期間の延長(特定技能1号)
- 改正前:特定技能1号の在留期間は「1年以内が原則」でした。
- 改正後(2025年9月30日運用要領改定):最長3年までの在留が可能に。
- ただし、この「3年まで」はすべての申請・更新に自動適用されるわけではなく、在留資格変更許可申請および在留資格更新申請が対象。
- 一方で、在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる場合)はこの改正の対象外、つまりこれまでの期間設定が適用される可能性があります。
2. 通算在留期間の見直し
「通算在留期間」とは、特定技能1号としての在留を通算した期間のことを指します。改正では、以下のとおり規定が変わりました。
- 原則として、特定技能1号は通算で5年以内が上限。
- しかし、一定の例外が認められるようになり、相当の理由を疎明(証明)すれば、5年を超えて在留できるケースがあります。
- 具体的には以下の期間が 5年の通算期間に含めない ものとして申立て可能:
- 産前産後休業・育児休業。 J
- 病気・ケガによる休業(原則1年以下、労災がある場合は最大3年)。
- 新型コロナウイルスによる再入国困難など、やむを得ない事情。
- また、特定技能2号評価試験等に不合格だった1号外国人について、一定条件下で通算6年まで在留を申請できるようになりました。
この改正は、1号から2号への移行を目指す人や、出産・育児などで長期休業が必要な方にとって非常に重要です。
3. 届出・申請書類の簡略化
- 運用要領改正により、適格性書類(受入機関側の書類) の取扱いが変更されました。
- 具体的には、在留申請時に毎回受入機関のすべての適格性書類を出す必要がなく、年1回の定期届出でまとめて提出する方式が導入されました。
- さらに、一定の要件を満たす機関では、適格性書類の提出が 省略可能 になるケースもあります。
4. 休業申立・通算在留申立の新様式
- 改正に伴い、参考様式第1-30号(休業期間申立書) と 参考様式第1-31号(通算在留期間超過の申立書) が新設されました。
- これらの申立書を使って、通算在留期間の除外申請や超過申請を行う必要があります。
- 疎明資料(医療証明、休業証明、育児・出産に関する書類など)の準備が重要です。
5. 適正管理・保護の強化
- 受け入れ機関(企業)による負担の不正防止への取り組みが強調されています。例えば、借り上げ住宅の敷金・礼金・仲介料・更新料といった費用を外国人本人に過度に負わせることは不可。
- また、納税・社会保険加入状況の確認が従来以上に厳格化され、未加入や未納がある場合は許可・更新に影響が出る可能性があります。
実務上のインパクト・注意点
この改正によって、特定技能1号を受け入れる企業・登録支援機関、そして在留外国人本人にはいくつかの実務・戦略上のポイントがあります。
- 企業(受入機関)側:
- 長期雇用(最大3年許可)を想定した契約設計が可能に。更新見通しを含めて労働条件・雇用契約を整備する必要あり。
- 適格性書類省略が可能な要件を満たすか確認。定期届出への対応体制を整える。
- 休業期間の申立が予想される場合(育休・産休・病気等)、申立様式の準備や支援を事前に見越す。
- 外国人本人側:
- 在留更新申請のタイミングで「3年在留」が得られる可能性がある。ただし初回1年など短期になるケースもあるため、契約内容を確認。
- 通算在留期間申立を検討する場合、証明書類(病院の診断書、会社の休業届・給与記録、育児記録など)を整えておく。
- 2号試験不合格時の「6年まで在留」申請も視野に入るが、要件(得点/誓約など)を満たすか確認。
- 登録支援機関:
- サポート対象者(外国人)の長期在留希望に応じた相談体制を強化。
- 申立書類や疎明資料の作成支援、定期届出の支援をきめ細かく行う。
- 受入機関との契約見直しや更新支援の実務を整理。
Q&A(よくある質問)
以下は、特定技能1号の在留期間改正に関してよくある質問とその回答です。
Q1:今回の改正で、特定技能1号の「最大5年通算」が消えたのですか?
A1:いいえ。通算在留期間の上限が原則として 5年 は残っています。ただし、今回の改正で例外が設けられ、休業期間などを除外できる申立が可能になりました。
Q2:3年の在留許可は誰でももらえるのですか?
A2:3年許可は「在留資格変更許可申請」または「在留資格更新申請」が対象です。必ずしも全員に3年が与えられるわけではなく、審査や個別の事情によって許可期間が決定されます。
Q3:産休や育休で休業した期間も在留計算に入らないというのは本当ですか?
A3:はい、本改正では 産前産後休業・育児休業 の期間を、適切な疎明資料を提出すれば通算在留期間の計算から除外できます。
Q4:病気やケガで休んだら、どれくらいを除外申請できる?
A4:原則として連続1か月を超える休業(1年以内)が除外対象。ただし、労災がある場合は最大3年まで申立可能です。
Q5:特定技能2号の試験に落ちたら、6年目まで在留できるって本当?
A5:はい、一定条件(例:評価試験で合格基準点の8割以上取得・今後の誓約など)を満たす場合、通算6年まで在留を申し立てることができます。
Q6:申立にはどんな書類が必要?
A6:新設された 参考様式第1-30号(休業) や 第1-31号(通算超過) を使い、医療証明、休業届、育児・出産を証明する書類などを準備します。
Q7:企業にはどんな影響がありますか?
A7:長期契約の可能性が出てくるため、雇用契約の見直しや長期受け入れの体制整備が必要。また、負担規制(住居費など)強化や定期届出体制の構築も重要です。
今後の展望と戦略
- 企業戦略:改正を好機と捉え、長期特定技能労働者の受け入れを拡大する。契約や福利厚生を見直し、定着支援を強化。
- 外国人材戦略:在留更新や通算申立てを見据えたキャリア設計を支援。特に子育て・休業を見越したプランニング。
- 支援機関強化:申請サポート・書類作成・届出支援を手厚く。改正点を組み込んだガイドラインやチェックリストを整備。
- 政策モニタリング:今後も制度変更の可能性があるため、入管庁やJITCOのアナウンスを定期チェック。例えば、受け入れ分野の追加・在留条件のさらなる緩和など。
結論
2025年9月の改正は、特定技能1号の在留制度をより柔軟かつ実務的に運用できるようにする重要な転換点です。特に在留期間の延長(最大3年)や通算在留期間の除外規定は、外国人労働者の中長期的な定着を後押しする効果が期待されます。
一方で、申立には十分な資料準備と証明が必要です。企業・支援機関・本人ともに、改正内容を正確に理解し、戦略的な対応を取ることが不可欠です。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |

