【外国人インターンシップ受け入れ完全ガイド】特定活動9号の注意点と適法な運用方法
目次
1.外国人インターンシップ受け入れの基本とは
日本企業が外国人留学生や海外大学生をインターンシップとして受け入れる場合、国内法上の位置付けを明確にすることが重要です。
インターンシップは「教育の一環」として行われる場合と、「労働」に該当する場合があり、その性質によって必要な在留資格が異なります。
特に、報酬を伴う場合や、企業の実務に密接に関与する内容である場合には、在留資格「特定活動(9号)」の取得が必要です。
一方、大学の単位取得を目的とした無報酬の実習であれば、「留学」ビザでの活動の範囲内で行うことも可能です。
2.外国人インターンシップに必要なビザ(在留資格)
外国人インターンシップに利用される主な在留資格は以下のとおりです。
在留資格 | 主な対象 | 報酬 | 主な根拠 |
---|---|---|---|
留学 | 日本の大学・専門学校に在籍する学生 | 無報酬(または資格外活動許可あり) | 入管法別表第一 |
特定活動(9号) | 海外大学に在籍する学生が日本企業で実習 | 無報酬/有報酬 | 法務省告示第46号(特定活動告示9号) |
技術・人文知識・国際業務 | 卒業後の就労インターン・実務研修 | 有報酬 | 就労系在留資格 |
つまり、「海外大学に在籍中の学生」が日本企業で報酬を得るインターンシップを行う場合は、原則として「特定活動9号」の許可が必要になります。
3.インターンシップ受け入れ時の主な注意点
外国人学生をインターンとして受け入れる場合、以下の点に特に注意が必要です。
(1)活動内容の適法性
インターンシップの目的が教育的か、単なる労働力提供かを明確に区別する必要があります。
教育の一環としての体験的活動であれば問題ありませんが、業務の一部として労働を行う場合には、労働法・最低賃金法・社会保険法の適用が生じます。
(2)大学と受け入れ企業の間の契約
海外大学のカリキュラムの一部として行われる場合、大学と企業間で「実習協定書」を締結し、
実習目的・期間・報酬・指導体制などを明確にしておく必要があります。
(3)報酬の有無による扱い
報酬が発生する場合は、必ず労働契約に基づく雇用関係とみなされる可能性があるため、在留資格審査は厳格になります。
(4)在留期間の管理
特定活動9号の期間は最長で「1年以内」とされます。期間超過は不法残留・不法就労助長罪に該当するおそれがあります。
(5)適切な受入れ体制の確立
企業側は、外国人学生が安全かつ教育的に活動できるように指導担当者の配置・日本語対応環境・住居支援などの整備が求められます。
4.無報酬・有報酬での扱いの違い
区分 | 主な内容 | 必要なビザ | 注意点 |
---|---|---|---|
無報酬インターン | 大学の単位取得を目的とした教育的実習 | 留学ビザで可 | 交通費・宿泊費は可だが給与は不可 |
有報酬インターン | 実務を伴うインターン(報酬あり) | 特定活動(9号) | 事前の入管審査が厳格・労働法適用あり |
「報酬」とみなされる範囲には、給与だけでなく、交通費や宿泊費の一部支給も含まれる場合があります。
報酬の有無にかかわらず、活動内容が企業の利益に直結する場合は労働と判断される可能性が高いため、慎重な運用が求められます。
5.インターンシップ受け入れ機関が守るべき義務
企業が外国人インターンを受け入れる場合、以下の義務や配慮が必要です。
- 実習計画書の作成
- 実習協定書(大学との取り決め)の締結
- 労働関係法令の遵守(労基法・最賃法など)
- 健康・安全確保措置
- 日本語・生活支援の提供
- 在留カード・旅券の写しの保管
- 在留資格外活動許可の確認(留学ビザの場合)
これらを怠ると、入管法第73条に基づく**不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)**に問われるおそれがあります。
6.不法就労と見なされるリスク
インターンシップで最も多いトラブルは、**「留学ビザの資格外活動の範囲を超えている」**というケースです。
たとえば、以下のような場合には不法就労と判断される可能性があります。
- 無報酬のはずが実際に給与を支払っていた
- 学業に関係のない業務を行っていた
- 資格外活動許可を取らずに勤務していた
- 在留期限を過ぎて活動を続けていた
企業側も「知らなかった」では済まされません。必ず事前に入管への確認とビザ申請を行いましょう。
7.外国人学生受け入れ手続きの流れ
- 受入れ候補者の選定(大学を通じて募集)
- 実習内容・期間の確定
- 実習協定書・受入れ計画書の作成
- 特定活動ビザ(9号)申請書の作成・提出
- 入管審査(約1~2か月)
- 許可後、在留カード交付
- 実習開始・期間中の管理(指導記録の保管)
ビザ申請時には、大学の推薦書・成績証明書・企業パンフレット・受入れ計画書などの提出が必要になります。
8.よくある質問(Q&A)
Q1:インターンシップ生に交通費や宿泊費を支払っても大丈夫ですか?
A:実費弁償としての支給であれば問題ありませんが、実質的に報酬とみなされる場合は「特定活動9号」の許可が必要です。
Q2:日本の大学に在籍する留学生も特定活動9号でインターンできますか?
A:原則として、国内大学の学生は「留学」ビザの資格外活動許可で対応可能です。ただし、フルタイムや報酬を得る実務研修の場合は別途審査が必要です。
Q3:インターンシップ受け入れ企業に罰則はありますか?
A:不法就労助長罪が適用される場合があります。企業には在留資格確認義務があり、違反すると刑事罰を受ける可能性があります。
Q4:どこに申請すればいいですか?
A:受入れ企業所在地を管轄する**出入国在留管理局(入管)**に申請します。必要書類や様式は法務省の公式サイトからダウンロードできます。
9.まとめ:適法な受け入れ体制でリスクを防ぐ
外国人インターンシップの受け入れは、国際交流や人材育成の観点から非常に有意義な制度ですが、ビザの種類・報酬の有無・契約内容を誤ると不法就労に直結します。
特に、特定活動9号の申請には専門的な知識が求められるため、行政書士などの専門家に相談することが安全です。
法令遵守と教育的配慮を両立させ、外国人学生が安心して学べる環境を整えることが、企業の信頼性向上にもつながります。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |