【短期滞在ビザから就労ビザへの変更は可能?】例外条件・手続き・注意点を徹底解説


はじめに:短期滞在から就労ビザへ変更はできるのか?

「観光ビザ(短期滞在)で入国しているけど、そのまま日本で働きたい」
このような相談を多く受けますが、短期滞在ビザから就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)へ直接変更することは、原則として認められていません。

ただし、“やむを得ない特別な事情”がある場合のみ、例外的に変更が許可されることがあります。

この記事では、短期滞在ビザから就労ビザへ変更できる可能性、例外要件、手続きの流れ、そして不許可を避けるための実務ポイントを詳しく解説します。


1.短期滞在ビザとは?在留資格制度の基本

「短期滞在」とは

短期滞在ビザ(Temporary Visitor)は、観光・商用・親族訪問などの目的で入国する際に使われる在留資格です。
在留期間は 15日・30日・90日以内 と短く、就労(報酬を得る活動)は一切認められません。

出典:外務省「査証(ビザ)」

また、このビザで入国する際には「帰国を前提とした一時滞在」が前提とされているため、長期滞在や就労目的への変更は原則認められないという点が制度の基本となっています。


2.短期滞在から就労ビザへの変更が原則できない理由

(1)法的根拠:入管法第20条第3項ただし書

出入国管理法では、「短期滞在」から他の在留資格への変更について、次のように規定されています。

「短期滞在から他の在留資格への変更は、やむを得ない特別の事情がある場合に限り許可できる。」

つまり、短期滞在者が就労ビザに変更できるのは、非常に限定的な特別事情がある場合のみです。

(2)制度趣旨

なぜこのように制限されているのかというと、以下の理由があります。

  • 短期滞在ビザは簡易審査で発給されるため、不正就労防止の観点から制限されている
  • 就労を目的とした入国であれば、本来は「在留資格認定証明書(COE)」を経て適正に審査すべき
  • 入管行政として、査証免除制度の悪用を防ぐ目的もある

したがって、「観光で来たが日本で仕事を見つけたので就労したい」だけでは許可されないのが実務の現実です。


3.例外的に許可されるケースとは?

とはいえ、全てのケースで不可能というわけではありません。
以下のような「やむを得ない特別事情」がある場合に限り、短期滞在からの変更が認められる可能性があります。

(1)在留資格認定証明書(COE)が交付された場合

日本国内に滞在中に、雇用先が**在留資格認定証明書(COE)**を取得した場合、特別に変更が許可されるケースがあります。
この場合でも、入管に対して「帰国が困難な事情」を丁寧に説明する理由書が必要です。

例:コロナ禍で帰国便が欠航し、母国での手続きが困難であった場合など


(2)人道的・不可抗力の事情がある場合

次のような事情がある場合、変更が認められることがあります。

  • 災害・戦争・紛争などにより帰国が物理的に不可能
  • 重病や入院により帰国できない
  • 家族の介護・緊急事態などでやむを得ず日本に滞在する必要がある

このような場合は、診断書・証明書などの客観的資料を添えて理由書を提出します。


4.短期滞在から就労ビザへ変更する際の手続きの流れ

以下は、実際に短期滞在中に就労を希望する場合の手続きステップです。


ステップ①:内定・雇用契約を締結する

まずは、日本の企業から正式な内定または雇用契約書を取得します。
雇用契約書には、職務内容・勤務時間・報酬・勤務地などが明示されている必要があります。

ポイント:業務内容が「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格に適合しているか確認が必要です。
・[技術・人文知識・国際業務ビザとは?](内部リンク)


ステップ②:雇用先が在留資格認定証明書(COE)を申請

企業側が出入国在留管理局に対して**「在留資格認定証明書交付申請」**を行います。
提出書類の例:

  • 会社登記簿謄本・決算書
  • 雇用契約書
  • 外国人本人の履歴書・学歴・職歴証明書
  • 会社の事業内容説明書

COE交付までには通常1〜2か月程度かかります。


ステップ③:短期滞在中にCOEが交付された場合

COEが短期滞在中に交付された場合、入管に**「在留資格変更許可申請」を行うことが可能です。
ただし、これは例外的措置であり、
“短期滞在からの変更を認めてほしい理由書”**の提出が必須です。


ステップ④:変更申請の審査と許可

申請後、入管の審査には2〜4週間程度かかります。
審査結果が「許可」となれば、新しい在留カードが交付され、就労が可能となります。

不許可となった場合は、原則として一度帰国し、COEを使って就労ビザで再入国する方法が必要です。


5.就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の主な要件

「短期滞在から変更を希望する」場合でも、就労ビザ側の要件を満たしていなければ許可されません。

要件項目内容
学歴・職歴要件大学卒業(または同等の専門的知識を持つ職歴)
職務内容通訳、翻訳、貿易業務、システム開発、デザインなど「専門的・技術的」業務であること
報酬要件日本人と同等以上の給与水準であること
会社の継続性・信頼性安定した事業実績・納税実績・法人登記の有無などが審査対象

6.不許可となりやすいケースと対策

不許可理由対策ポイント
「短期滞在中に就職先を探しただけ」入管法上の特別事情に該当しないため不可。必ず帰国して手続きへ。
「業務内容が単純労働」清掃・接客などは就労ビザの対象外。専門性のある職務内容を示すこと。
「会社の経営実態が不明」決算書・事業計画書・法人登記簿で安定した経営を証明。
「理由書が抽象的」「帰国困難の事実」「特別事情の根拠」を具体的資料で証明すること。

7.よくある質問(Q&A)

Q1. 観光ビザで来日中に日本で就職活動をしてもいいですか?
→ 就職活動自体は可能ですが、就労(報酬を得る活動)は不可です。

Q2. 短期滞在中にCOEが発行された場合、必ず変更できますか?
→ いいえ。COEがあっても、変更許可は審査官の裁量です。必ずしも認められるわけではありません。

Q3. 配偶者ビザへの変更は可能ですか?
→ 「日本人の配偶者等」は、個別事情によっては許可されることがあります。


8.まとめ:短期滞在からの就労ビザ変更は“例外的”

項目内容
原則短期滞在から就労ビザへの変更は不可
例外やむを得ない特別事情(帰国困難・人道的理由等)がある場合に限り許可される
確実な方法一度帰国 → COEを取得 → 在外日本公館でビザ申請し再入国
重要書類理由書・COE・雇用契約書・会社資料・証拠書類

9.専門家に相談するメリット

短期滞在からのビザ変更は、法的・実務的に非常に難易度が高い手続きです。
不許可になると再入国手続きが複雑になるため、行政書士・入管専門家への事前相談を強くおすすめします。

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まとめコメント

短期滞在ビザから就労ビザへの変更は、原則禁止・例外的許可という非常に厳しい制度運用がされています。
しかし、COE交付・帰国困難・人道的理由など、特別事情がある場合には変更が認められるケースもあります。
確実な許可を得るためには、専門家による理由書作成と入管対応が不可欠です。

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  「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」  同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  明治大学法科大学院修了 「資格」  行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」  入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法
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 明治大学法科大学院修了
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