【永住許可/独立生計要件】完全ガイド|世帯年収で判断されるのか?入管基準を徹底解説
目次
1.永住許可の「独立生計要件」とは?
永住許可を申請するためには、入管法第22条第2項に基づき、次の3つの基本要件を満たす必要があります。
- 素行が善良であること(素行善良要件)
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
- 永住が日本の利益に合致すると認められること(国益要件)
このうち「独立生計要件」は、本人または世帯として安定的に生活できる経済基盤を持っているかが問われます。
つまり、国や自治体の公的扶助(生活保護など)に依存せず、日本社会で自立した生活を維持できることが求められるのです。
2.判断は「世帯年収」か「個人年収」か?
結論から言えば、独立生計要件は「世帯年収」で判断されるのが原則です。
(1)個人年収のみが重視されるケース
単身で生活している方、または扶養する家族がいない方の場合、本人の収入状況が審査対象となります。
この場合、安定した職業に就き、継続的に生活できるかが重要視されます。
(2)世帯年収として判断されるケース
配偶者(日本人・永住者・就労ビザ保持者など)と同居している場合や、夫婦共働きの家庭では、世帯全体の収入が合算して審査されます。
例えば、申請者の収入が少なくても、配偶者が安定した収入を得ていれば、「生計が独立している」と判断されることがあります。
ポイント
永住許可の独立生計要件は、**「世帯として自立した生活が可能か」**という観点から評価される。
3.年収の目安と審査基準
永住許可において明確な「年収ライン」は法律上定められていません。
しかし、実務上の運用としては以下のような目安が存在します。
家族構成 | 年収目安(安定した収入) |
---|---|
単身者 | 約300万円以上 |
夫婦2人 | 約400万円以上 |
夫婦+子1人 | 約500万円以上 |
夫婦+子2人 | 約600万円以上 |
この数値はあくまで目安であり、職業の安定性・勤続年数・貯蓄額・住宅状況なども合わせて総合的に判断されます。
例:申請者が派遣社員や契約社員であっても、同一企業に長期勤続している場合や、毎年安定した収入がある場合はプラス評価されます。
4.配偶者の収入も合算されるケース
入管の実務では、以下のようなケースでは世帯収入合算で判断される傾向があります。
- 申請者が専業主婦(主夫)で、日本人配偶者がフルタイム勤務
- 申請者がパート勤務で、配偶者が正社員で安定収入
- 共働き世帯で、合算年収が安定基準を超える場合
(事例)
外国人配偶者:契約社員勤務(年収200万円)
日本人配偶者:会社員(年収350万円)
世帯合計550万円 → 独立生計要件を十分満たす。
注意点
・世帯収入を証明するためには、両名の課税証明書・納税証明書・源泉徴収票の提出が必要です。
・別居している場合は、合算対象外とされる場合もあります。
5.年収が低い場合の具体的な対策
独立生計要件に不安がある場合でも、次のような補強資料を提出することで許可の可能性を高められます。
(1)貯蓄・資産を証明する
銀行の残高証明書、不動産の登記簿謄本、定期預金証明などで「生活に困らない資産がある」ことを示す。
(2)配偶者からの援助証明
やむを得ない事情で一時的に収入が少ない場合は、生活費援助誓約書や送金記録などを提出する。
(3)安定的な職歴を示す
転職回数が少なく、長期にわたり同じ職場で働いていることはプラス評価。
勤続年数3年以上が望ましいとされています。
(4)扶養家族が少ない場合の説明
年収が少なくても、扶養家族がいない場合や住宅ローンがない場合は支出が少ないため、生活維持可能と説明できます。
6.実際の永住申請における審査のポイント
独立生計要件における審査は、単に「年収」だけではなく、以下の要素が総合的に判断されます。
審査ポイント | 具体的な評価項目 |
---|---|
収入の安定性 | 職業、勤続年数、雇用形態、給与明細 |
支出状況 | 扶養家族数、住宅費、生活費 |
納税状況 | 住民税・所得税・年金・健康保険の滞納の有無 |
貯蓄・資産 | 預貯金、財産、住宅保有の有無 |
家族の収入 | 配偶者・世帯主の収入を合算 |
一時的に収入が減少していても、全体として安定した生活が維持できていれば、許可される可能性があります。
7.申請時に提出すべき主な書類一覧
独立生計要件を証明するためには、以下の書類の提出が求められます。
- 在職証明書
- 源泉徴収票(過去3年分)
- 住民税課税・納税証明書(過去3年分)
- 健康保険証の写し
- 年金加入証明書
- 預貯金通帳写し(必要に応じて)
- 配偶者の課税証明書・源泉徴収票(同居している場合)
8.よくある質問Q&A
Q1. 無職期間がある場合は不利になりますか?
→ 一時的な無職期間でも、全体的に安定した生計が確認できれば許可の可能性はあります。
職歴の空白期間には理由書を添付するのが望ましいです。
Q2. フリーランスや自営業者でも申請できますか?
→ 可能です。確定申告書、損益計算書、取引先との契約書などを提出し、安定的な収入を証明する必要があります。
Q3. 生活保護を受けていた期間があると不許可になりますか?
→ 原則として不利になります。ただし、一時的な受給や特別な事情がある場合は、説明資料を添付して誠実に申告しましょう。
Q4. 配偶者が主たる収入源でも申請者本人名義で申請できますか?
→ はい。生計を同一にしている配偶者が安定収入を持つ場合、独立生計要件を満たすと判断されます。
9.まとめ:安定した生計基盤の証明がカギ
永住許可における「独立生計要件」は、本人または世帯としての生活の安定性が最重要ポイントです。
単に個人年収だけでなく、配偶者の収入や家計全体のバランスも重視されます。
まとめポイント
- 判断は「世帯年収」が基本
- 年収目安は家族構成により300〜600万円程度
- 配偶者の収入・貯蓄・勤続年数で補強可能
- 納税・社会保険の履行も必須項目
安定的な生活基盤を示し、「今後も日本で自立して生活できる」ことを明確に証明することが、永住許可取得の第一歩です。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |