介護ビザ(在留資格「介護」)で転職はできますか?必要な手続きは何ですか?
結論から言うと、在留資格「介護」を持っていても転職は可能です。
しかし、転職する際にはいくつかの重要な手続きが必要です。これらの手続きを怠ると、最悪の場合、在留資格を失い、日本に滞在できなくなるリスクもあります。
ここでは、介護ビザ(在留資格「介護」)を持つ外国人が転職する際に必要な手続きを徹底的に解説します。
目次
1. 介護ビザ(在留資格「介護」)の基本情報と取得のメリット
まずは、介護ビザ(在留資格「介護」)がどのようなものか、その基本情報を理解しましょう。この在留資格は、日本の介護施設や事業所で専門的な介護業務を行う外国人のために設けられた就労ビザの一種です。
(1) 在留資格「介護」とは?
この在留資格を取得するためには、日本の介護福祉士の国家資格を持っていることが必須です。これにより、単なる労働力としての受け入れではなく、高度な専門知識と技術を持つ人材として認められます。
項目 | 詳細 |
在留期間 | 5年、3年、1年、3か月のいずれか。更新が可能で、在留期間の更新回数に制限はありません。 |
活動内容 | 介護福祉士として、介護施設や事業所において、介護および介護の指導を行う活動。訪問介護や夜勤など、介護に関する業務全般に従事できます。 |
申請条件 | ・日本の介護福祉士の国家資格がある ・日本の機関(企業)と契約している ・日本人と同等かそれ以上の報酬を受ける |
(2) 介護ビザを取得する3つの大きなメリット
介護ビザは、他の介護分野の在留資格(特定技能や技能実習など)と比べて取得のハードルが高いとされていますが、その分、多くのメリットがあります。
① 業務内容に制限が少ない
特定技能ビザや技能実習ビザでは、訪問介護や夜勤が認められないケースがありますが、介護ビザであれば、介護福祉士の専門知識を活かして、介護業務全般を行うことができます。これにより、自身のキャリアプランに合わせて、幅広い職場で働くことが可能になります。
② 家族と一緒に日本に滞在できる
介護ビザで働く外国人は、「家族滞在ビザ」を申請することで、配偶者と子どもを日本に呼び寄せることができます。家族が一緒に暮らせることは、精神的な安定につながり、日本での生活の満足度を高める上で非常に重要な要素です。ただし、兄弟姉妹や両親は対象外となるため注意が必要です。
③ 永住権取得のチャンスがある
介護ビザは更新回数に制限がないため、長期にわたり日本で働き続けることができます。一般的に、永住権を申請するためには「10年以上日本に住んでいて、そのうち5年以上就労資格または居住資格を持っていること」が主な条件とされています。介護ビザで5年以上働き、更新を重ねて10年以上日本に滞在できれば、永住権の申請条件を満たす可能性が高まります。
2. 外国人が転職する際に必要な手続きの流れ
外国人の方が転職する際には、日本人の転職とは異なるいくつかの手続きが必要です。これらは転職の成功を左右する重要なプロセスです。
(1) 契約機関に関する届出(義務)
就労ビザを持つ外国人が転職する場合、現在の所属機関との契約が終了したこと、または新しい所属機関と契約を締結したことを、事由が発生してから14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る義務があります。
- 届出が必要な事由:
- 現職の会社との契約が終了したとき(退職)
- 新しい会社と契約を結んだとき(転職)
- 契約機関の名称や所在地が変更されたとき
- 契約機関が消滅したとき
- 届出の方法:
- オンライン: 出入国在留管理庁の電子届出システムを利用するのが最も便利です。24時間365日いつでも手続きができます。初めて利用する場合は、事前に利用者情報の登録が必要です。
- 郵送: 届出書と在留カードのコピーを同封し、指定された宛先(東京出入国在留管理局在留調査部門届出受付担当)に送付します。追跡可能な方法で送付するのがおすすめです。
- 窓口: 最寄りの出入国在留管理局の窓口で、在留カードを提示して提出します。
(2) 就労資格証明書交付申請(推奨)
**「就労資格証明書」**は、あなたが持つ在留資格でどのような活動(仕事)ができるのかを証明する文書です。取得は義務ではありませんが、転職先への信頼性を高め、スムーズな採用につなげるために非常に役立ちます。
新しい雇用主は、この証明書を確認することで、あなたが合法的にその職務に就けることを確実に判断できます。これにより、不法就労のリスクを避け、安心して雇用することができます。
- 申請書類:
- 就労資格証明書交付申請書
- 在留カードの提示
- パスポートまたは在留資格証明書の提示
- 新しい勤務先や活動内容がわかる資料(労働条件通知書など)
- 手数料(1,200円)
(3) 在留期間更新許可申請(必要な場合)
在留期間の満了日が近い場合は、転職と同時に在留期間の更新手続きも必要になります。一般的に、在留期間が満了する日の3か月前から申請が可能です。
- 申請書類:
- 在留期間更新許可申請書
- 写真
- パスポートおよび在留カード
- 住民税の課税・納税証明書(過去1年間の所得・納税状況がわかるもの)
- 転職後に初めて更新する場合は、新しい勤務先に関する資料(労働条件通知書、会社の概要がわかる案内書など)
この手続きを怠り、在留期間が過ぎてしまうと、不法滞在となり、強制退去の対象になる可能性があるため、絶対に忘れないようにしましょう。
(4) 在留資格変更許可申請(重要なケース)
もし転職後の仕事内容が、現在の在留資格「介護」で認められている活動範囲外である場合は、在留資格の変更が必須となります。
- 転職の例と必要な変更:
- 介護職 → 営業職・ITエンジニア:「介護」→「技術・人文知識・国際業務」へ変更
- 介護職 → 会社の経営者:「介護」→「経営・管理」へ変更
この手続きは、新しい職務に就く前に行うのが基本です。変更許可を得る前に転職すると、現在の在留資格で認められていない活動を行うことになり、不法就労とみなされます。
- 申請書類:
- 在留資格変更許可申請書
- 写真
- パスポートおよび在留カード
- 介護福祉士登録証の写し(変更前の在留資格が介護であることの証明)
- 新しい職務内容や労働条件を明記した書類
- 新しい勤務先の事業内容がわかる資料
- 手数料(4,000円)
3. 転職活動における注意点とリスク
転職はキャリアアップのチャンスですが、外国人にとっては特別なリスクも伴います。以下の注意点をよく理解しておきましょう。
(1) ビザ審査中の転職はリスクが高い
在留資格の変更や更新を申請し、審査中の期間に転職することは、法律上禁止されていません。しかし、これは非常にリスクの高い行動です。
- 提出情報との矛盾: 審査官は、申請時に提出された情報を基に審査を進めます。転職によって勤務先や業務内容が変わると、提出した情報と矛盾が生じ、審査が一時停止したり、最悪の場合、不許可になったりする可能性があります。
- 不法就労のリスク: もし新しい職務が、現在の在留資格で認められた活動範囲外である場合、在留資格の変更許可が下りる前に働き始めると、不法就労となります。
どうしても審査中に転職しなければならない事情がある場合は、必ず入国管理局にその旨を事前に相談し、慎重に対応することが重要です。
(2) 企業側も知っておくべきこと
外国人材を雇用する企業側も、いくつかの手続きと責任があります。
- ハローワークへの届出: 外国人を雇用する企業は、雇用保険の加入有無に関わらず、**「外国人雇用状況届出書」**をハローワークに提出する義務があります。この届出を怠ると、30万円以下の罰金が科せられる場合があります。
- 在留資格の確認: 企業は採用前に、外国人が就労できる在留資格を持っているか、そしてその在留資格でその職務に就けるかを確認する義務があります。就労資格証明書を提示してもらうことで、この確認を確実に行うことができます。
4. まとめ:介護ビザで転職を成功させるために
介護ビザは、専門職として日本で長期的に働くことを可能にする非常に価値のある在留資格です。このビザを持つあなたが転職を考える際は、以下のポイントを必ず押さえてください。
- 期限厳守: 新しい会社との契約が始まったら、14日以内に所属機関に関する届出を提出しましょう。
- 業務内容の確認: 新しい仕事が現在の在留資格「介護」の範囲外である場合は、必ず在留資格変更許可申請が必要です。
- 就労資格証明書の活用: 取得は義務ではありませんが、転職をスムーズに進めるための強力なツールです。積極的に取得を検討しましょう。
- ビザ更新のタイミング: 在留期間が満了する日が近い場合は、新しい勤務先で在留期間更新許可申請を忘れずに行いましょう。
これらの手続きを適切に行うことで、あなたは合法的に日本で働き続け、キャリアの可能性をさらに広げることができます。ご自身の在留資格と活動内容を常にリンクさせておくことが、安定した日本での生活の鍵となります。
もし、あなたの転職に関する個別の状況についてさらに詳しい情報が必要な場合は、遠慮なくお尋ねください。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |