養子縁組による日本人の配偶者等ビザ取得|特別養子と普通養子の違いを徹底解説

はじめに

外国人が日本に在留するためには、適切な**在留資格(ビザ)**を取得する必要があります。その中でも「日本人の配偶者等ビザ」は、日本人の配偶者や実子が取得できる在留資格として広く知られています。
しかし「養子縁組によって日本人の子となった外国人」も、この在留資格を取得できる場合があるのをご存じでしょうか。

この記事では、

  • 日本の養子縁組制度(普通養子縁組・特別養子縁組)の違い
  • 養子縁組によって「日本人の配偶者等」ビザを取得できるケース
  • ビザ申請時の必要書類と注意点
  • 永住権や将来の在留資格への影響

について、専門的な観点から詳しく解説します。

外国人の養子を迎えたい日本人、または養子縁組をきっかけに日本での在留を希望する外国人にとって、必ず役立つ情報となります。


1.「日本人の配偶者等」とは?

(1)在留資格の範囲

在留資格「日本人の配偶者等」は、入管法別表第二に規定されており、以下の者が該当します。

  • 日本人の配偶者
  • 日本人の実子(出生による子)
  • 特別養子縁組によって日本人の子となった者

つまり、普通養子縁組の養子は含まれず、特別養子縁組の場合のみ対象となります。

(2)法務省の見解

法務省入国管理局も公式に以下のように説明しています。

「日本人の配偶者等」には、日本人の配偶者、日本人の実子、および特別養子縁組によって日本人の子となった者が含まれる。

参考:出入国在留管理庁 在留資格「日本人の配偶者等」


2.養子縁組制度の基礎知識

(1)普通養子縁組とは

  • 年齢制限:原則なし
  • 実親との関係:存続する(養子は養親と実親の両方の子となる)
  • 戸籍上:養子であることが明記される
  • 相続:養親・実親双方の相続権を持つ

つまり、普通養子縁組では「実親との法的親子関係が残る」ため、日本人の実子と同等の扱いにはなりません。このため、普通養子縁組による外国人養子は「日本人の配偶者等」ビザの対象外です。

(2)特別養子縁組とは

  • 対象:原則として6歳未満(事情により15歳未満まで可)
  • 実親との関係:完全に消滅し、養親のみが親権を持つ
  • 戸籍上:実子と同様に扱われ、養子縁組の事実も記載されない
  • 相続:養親の実子と全く同じ権利を持つ

特別養子縁組は、子どもの福祉を最優先とし、養親の実子と全く同じ法的地位を与える制度です。
そのため、外国人が日本人と特別養子縁組をした場合、在留資格「日本人の配偶者等」の対象となります。


3.養子縁組と「日本人の配偶者等」ビザの関係

(1)普通養子縁組の場合

  • 外国人が日本人と普通養子縁組をしても、「日本人の配偶者等」ビザは取得できません。
  • 多くの場合は「定住者ビザ」が検討されます。

(2)特別養子縁組の場合

  • 日本人と特別養子縁組をした外国人は、日本人の「実子」と同じ扱いを受けるため、「日本人の配偶者等」ビザを取得可能です。
  • 審査では、特別養子縁組の成立を証明する家庭裁判所の審判書や戸籍謄本が必要です。

(3)実務上の注意点

  • 養子縁組の目的が「ビザ取得のため」と判断されると、不許可となる可能性があります。
  • 入管は「養子縁組の真実性」「生活の実態」を厳しく審査します。

4.申請に必要な書類(例)

  • 養親(日本人)の戸籍謄本
  • 特別養子縁組審判確定証明書(家庭裁判所)
  • 養子(外国人)の出生証明書・パスポート
  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 養親の身元保証書
  • 経済力を証明する書類(課税証明書・所得証明書など)

5.永住申請・将来への影響

  • 「日本人の配偶者等」ビザを取得すれば、永住申請の要件を満たしやすくなります。
  • 原則として 在留3年以上で永住申請が可能(通常は10年必要)。
  • 特別養子縁組での「日本人の子」の場合、より早期に永住許可を得られる可能性があります。

6.よくある質問(Q&A)

Q1:普通養子縁組でも「日本人の配偶者等」ビザを取れますか?
A:取れません。普通養子縁組では「日本人の実子」とは扱われないため、定住者ビザが検討されます。

Q2:養子縁組した外国人の年齢に制限はありますか?
A:特別養子縁組は6歳未満に限定されます。年齢制限を超えると特別養子縁組はできません。

Q3:養子縁組すれば必ずビザが下りますか?
A:いいえ。入管は「養子縁組の真実性」「養親の扶養能力」を厳しく審査します。偽装目的と判断されれば不許可となります。

Q4:将来的に永住権や帰化は可能ですか?
A:「日本人の配偶者等」ビザを取得すれば、永住申請や帰化申請の要件を満たしやすくなります。特別養子縁組の場合は有利に働くケースが多いです。


まとめ

  • 普通養子縁組では「日本人の配偶者等」ビザは取得できない
  • 特別養子縁組なら「日本人の実子」と同じ扱いとなり、ビザ取得可能
  • 養子縁組を理由とするビザ申請は入管による厳格な審査を受ける
  • 将来的な永住申請や帰化の道も開ける

外国人を養子として迎える場合や、養子縁組によって日本での生活を希望する方は、専門家への相談を強くおすすめします。

関連記事

無料相談

まずは、無料相談に、お気軽にお申込み下さい。ご相談の申し込みは、「お問い合わせページ」から承っております。なお、無料相談は事前予約制とさせて頂いています。
 
「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法