社会保険・雇用保険・労働保険は外国人も対象?加入条件と手続きのポイント

はじめに

日本で外国人を雇用する企業が増加するなか、社会保険・雇用保険・労働保険への加入義務は日本人と同様に適用されるのか、多くの企業担当者や外国人従業員が疑問に感じています。実は、外国人であっても雇用契約の内容や勤務形態によっては、日本人と同じように各種保険に加入する必要があります。本記事では、制度の基本から実務上の注意点までをわかりやすく解説します。


1. 外国人従業員に適用される社会保険制度とは?

外国人であっても、日本国内で労働契約を結んで働く場合は、日本人と同じ労働法令が適用されます。そのため、社会保険・雇用保険・労働保険の加入義務は原則として日本人と同様です。

  • 社会保険 … 健康保険と厚生年金保険を指します。
  • 労働保険 … 雇用保険と労災保険を総称します。

つまり、外国人だから特別扱いされることはなく、労働条件が日本人と同じであれば同様に保険加入の対象となります。

参考:厚生労働省「外国人雇用対策」


2. 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件

加入対象となる条件

外国人であっても以下の条件を満たせば加入が義務付けられます:

  • 1週間の所定労働時間が 30時間以上
  • 1か月の所定労働日数が 正社員のおおむね4分の3以上

パートタイムや契約社員でも上記条件を満たせば加入が必要です。

留意点

  • **短期滞在(観光ビザ等)**で働くことはできず、したがって保険加入の対象外です。
  • 本国に年金制度がある外国人も、日本で厚生年金に加入する必要があります。ただし、社会保障協定を締結している国の出身者については、二重加入を避けるための特例があります。

3. 雇用保険の加入条件と外国人雇用の注意点

雇用保険は失業した場合の生活保障や再就職支援のための制度です。外国人も以下の条件を満たせば加入が義務です。

  • 週20時間以上勤務
  • 31日以上の雇用見込み

注意点

  • 在留資格が「就労不可」(例:留学、家族滞在)の場合、原則として雇用保険の対象外です。ただし「資格外活動許可」を得てアルバイトをする場合、要件を満たせば加入することがあります。

4. 労働保険(労災保険・雇用保険)の基本と対象範囲

労働保険には労災保険と雇用保険がありますが、労災保険はすべての労働者が対象となります。国籍を問わず、雇用契約を結んで働くすべての人が対象です。

  • 労災保険 … 業務上・通勤途上の災害によるケガや病気を補償。
  • 雇用保険 … 失業や雇止めに備える制度。

労災保険については、週の労働時間や雇用期間に関わらず必ず適用される点に注意が必要です。


5. 留学生・短期滞在者は加入が必要か?

  • 留学生アルバイト:週20時間以内で資格外活動許可を得ている場合、労災保険の対象にはなりますが、雇用保険は勤務条件によって異なります。
  • 短期滞在者(観光ビザ等):就労不可のため、そもそも雇用保険や社会保険に加入できません。

6. 加入手続きを怠った場合のリスクと罰則

外国人であっても加入義務があるにもかかわらず、会社が手続きを行わない場合、以下のリスクがあります。

  • 会社に対する追徴金・罰則
  • 未加入期間の保険料の一括徴収
  • 従業員からの損害賠償請求リスク
  • 入管法上の信頼性低下(ビザ更新・永住申請に悪影響)

特に永住申請では、社会保険料・税金の適正納付が重視されます。加入義務を怠ることは、従業員本人だけでなく企業にとっても大きな不利益を招きます。

関連記事:永住申請と年金・健康保険料の納付状況|未納があると不許可?注意点を徹底解説【完全ガイド】


7. 実務上のポイント(企業担当者向けチェックリスト)

外国人を採用する際、以下のチェックリストを参考にしてください。

  • 在留資格を確認し、就労可能かどうかを確認
  • 労働時間・雇用期間を確認し、社会保険・雇用保険の対象か判定
  • 雇用契約書に保険加入の有無を明記
  • 社会保障協定国出身者は年金の特例を確認
  • 入社時に在留カード・パスポートを必ず確認

関連記事:外国人就労と在留カードの確認方法|企業担当者が知るべきチェックリスト【完全ガイド】


8. よくある質問(Q&A)

Q1. 外国人技能実習生も社会保険に加入しますか?
A. はい。所定労働時間や雇用期間が要件を満たす場合は、日本人と同様に加入します。

Q2. 永住者や定住者は保険加入に違いがありますか?
A. いいえ。日本で雇用契約を結ぶ以上、在留資格の種類に関わらず加入要件を満たせば義務となります。

Q3. 留学生アルバイトも労災保険は適用されますか?
A. はい。労災保険はすべての労働者に適用されるため、国籍や在留資格を問いません。

Q4. 保険加入を拒否する外国人がいたらどうすればいいですか?
A. 法律上は会社が加入させる義務を負います。本人の希望で加入しないことはできません。


9. まとめ

  • 外国人従業員も、日本人と同様に社会保険・雇用保険・労働保険への加入義務があります。
  • 労災保険はすべての労働者に適用、社会保険・雇用保険は勤務条件に応じて適用されます。
  • 会社が加入を怠ると罰則や信用低下のリスクがあるため、必ず適正な手続きを行うことが重要です。

外国人雇用を進めるうえで、社会保険制度の理解と適切な対応は不可欠です。企業と従業員双方が安心して働ける環境を整えるために、本記事を参考に実務を進めてください。


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「記事監修」
加納行政書士事務所
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代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法