帰化要件の1つ「素行要件」とは?審査基準・注意点を徹底解説【完全ガイド】

はじめに

外国人が日本に帰化して日本国籍を取得するためには、国籍法第5条に定められた一定の要件を満たす必要があります。その中でも特に重視されるのが「素行要件」です。

素行要件は「過去から現在に至るまでの生活態度や法令遵守の状況」を審査するものであり、たとえ就労や年収が安定していても、この要件を満たさなければ帰化は許可されません。

本記事では、行政書士としての実務経験と、法務省や入管の公式情報をもとに、帰化申請における素行要件の具体的な内容・判断基準・注意点を徹底解説します。


1. 帰化申請における素行要件とは?

(1)法的根拠

素行要件は、国籍法第5条第1項第4号において次のように規定されています。

「素行が善良であること」

つまり、帰化申請者は日本において「日常生活における行動や態度が法令に従っており、社会的に適切である」と認められる必要があります。

(2)素行要件の意味

「素行が善良」とは単に犯罪歴がないだけでなく、以下のような広い範囲で評価されます。

  • 刑事処罰歴の有無(刑罰、交通違反など)
  • 納税義務の履行状況(所得税・住民税・消費税など)
  • 社会保険料・年金保険料の納付状況
  • 生活態度(借金・暴力・ギャンブル問題など)
  • 家族の素行(配偶者や子の重大違反がある場合)

2. 素行要件の判断基準

法務局が帰化審査を行う際、特に注目されるのは以下の点です。

(1)犯罪歴・前科

  • 懲役・禁錮刑を受けている場合は、刑の執行終了後5年以上経過していることが必要。
  • 罰金刑や執行猶予付き判決の場合も、相当期間が経過していなければ不許可となる可能性が高い。
  • 軽微な違反(例:交通違反)でも、繰り返しの場合は「法令遵守意識が低い」と判断される。

(2)交通違反

  • 一度のスピード違反や駐車違反は大きな問題にならない場合が多い。
  • しかし、累積点数が多い場合や飲酒運転などは帰化審査に強い悪影響を与える。

(3)税金の納付状況

  • 所得税・住民税・消費税などの滞納がないことが必須。
  • 納税を延滞していた場合は、完納証明を提出してもすぐには帰化許可が下りにくい。
  • 税金を期限通り納めているかが「素行の善良さ」を判断する重要指標。

(4)社会保険・年金の納付

  • 国民健康保険料・厚生年金保険料・国民年金保険料の滞納も要注意。
  • 継続して未納があると「日本社会の一員としての義務を果たしていない」とされる。

(5)借金や生活態度

  • 借金そのものは問題ではないが、返済を怠って督促や差押えを受けている場合は不利に。
  • 反社会的勢力との関与があれば不許可の可能性が高い。

3. 素行要件を満たさない場合の不許可事例

ケース1:交通違反の繰り返し

帰化申請直前に複数回スピード違反をしていたため、「法令遵守意識に欠ける」とされ不許可。

ケース2:税金の滞納

住民税を数年間滞納しており、完納したのは申請直前。信用性が低いと判断され、不許可。

ケース3:年金未納

国民年金を長期間払っていなかったため、「社会的義務を果たしていない」とされ不許可。


4. 素行要件を満たすための準備

(1)違反歴の確認と改善

  • 交通違反がある場合は、違反から一定期間が経過していることが重要。
  • 無事故・無違反の期間を長く維持することで信頼を得られる。

(2)税金の適正な納付

  • 所得税・住民税を期限通りに納付する。
  • 滞納がある場合はすぐに納付し、できれば数年の完納実績を作ってから申請する。

(3)社会保険料・年金の支払い

  • 未納がある場合は、分割納付でもよいので計画的に完納する。
  • 領収書や納付証明書を保管しておくと申請時に有利。

(4)生活態度の健全化

  • 借金は返済計画を立て、延滞をなくす。
  • 家族の行動も影響するため、家庭内での法令遵守を徹底する。

5. 帰化申請における素行要件と他の要件との関係

帰化には素行要件のほかにも以下の要件があります。

  • 居住要件(原則10年以上日本に在留していること)
  • 生計要件(安定した収入・生活基盤があること)
  • 日本語能力要件(日常生活に支障がない程度の日本語力)

その中でも素行要件は、他の要件を満たしていても不許可になる可能性が高い重要ポイントです。


6. よくある質問(Q&A)

Q1. 交通違反が一度だけありますが帰化できますか?

A. 軽微な違反で一度だけであれば、大きな問題になる可能性は低いです。ただし、申請書類に正直に記載しましょう。

Q2. 税金を滞納していましたが、完納しました。帰化できますか?

A. 完納は必要条件ですが、直前に支払っただけでは「素行善良」とは判断されにくいです。数年間の納付実績を作ってからの申請がおすすめです。

Q3. 借金があっても帰化は可能ですか?

A. 借金自体は問題ありませんが、延滞や差押えがあると不利になります。計画的に返済し、信用情報を維持することが重要です。

Q4. 家族に犯罪歴があると帰化できませんか?

A. 本人に直接関係がなければ必ずしも不許可にはなりません。ただし、配偶者や同居家族の重大な違反はマイナスに評価される場合があります。


7. まとめ

  • 素行要件は、帰化申請において「日本社会の一員として法令や義務を果たしているか」を判断する重要な基準。
  • 税金や保険料の納付、交通違反の有無、生活態度まで広範にチェックされる。
  • 一度の違反や遅延でも、繰り返しや直前の完納はマイナス評価となる。
  • 帰化を目指すなら、数年間の健全な生活実績を積んでから申請することが最善の方法。

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「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法