偽装雇用によるビザ不許可とリスク|就労ビザ申請で注意すべきポイント【完全ガイド】
目次
はじめに
日本で働く外国人が増加する中、**就労ビザの不正取得を目的とした「偽装雇用」**が大きな問題となっています。偽装雇用は一見「就労契約が成立している」ように見せかけて、実際には実体のない雇用や、就労資格と関係のない仕事に従事させる行為を指します。
入管当局はこの問題に厳格に対応しており、偽装雇用が発覚するとビザ不許可だけでなく、企業側・外国人側双方に大きなリスクが及びます。
本記事では、偽装雇用の具体例、ビザ申請に与える影響、リスク、そして正しい対応策について詳しく解説します。
1.偽装雇用とは?定義と背景
偽装雇用とは、在留資格(就労ビザ)を得るために虚偽の雇用契約や勤務実態を装う行為です。
背景には以下の事情があります。
- 外国人本人が「本当は働けない業種」での就労を希望
- 企業側が「人材不足」を理由に入管法を軽視
- ブローカーによる不正仲介
法務省・出入国在留管理庁も警告している通り、偽装雇用は**「不法就労助長罪」や「在留資格取消し」**に直結する重大な違法行為です。
参考:出入国在留管理庁|不法就労等外国人対策の推進について
2.偽装雇用によるビザ不許可の典型例
2-1 実態のない会社での雇用契約
存在だけするペーパーカンパニーを利用し、外国人を雇用しているように見せかけるケース。
2-2 資格外の業務への従事
例:技術・人文知識・国際業務ビザを持ちながら、単純労働(工場ライン・清掃など)を行う。
2-3 給与水準の不自然な設定
「就労ビザを得るためだけの高額給与を提示」しているが、実際には支払われていない。
2-4 就労先が変わっているのに申請していない
転職後に正しく在留資格変更をせず、架空の元雇用契約で申請を続ける。
3.入管が偽装雇用を疑うチェックポイント
- 会社の事業実態がない(ホームページ・決算書・従業員数などで確認される)
- 外国人の学歴や職歴と職務内容が一致しない
- 給与が業界平均より極端に高い/低い
- 同じ会社から不許可者が多数出ている
- 外国人の労働契約が短期間で頻繁に変わる
入管は申請時に提出する雇用契約書、会社概要、決算報告、給与台帳などを徹底的に精査し、虚偽や不自然な点があれば偽装雇用を疑います。
4.偽装雇用が発覚した場合のリスク
4-1 外国人本人のリスク
- ビザ不許可、または在留資格取消し
- 強制退去処分、5年間の再入国禁止
- 将来の永住申請や配偶者ビザ申請に不利
4-2 企業側のリスク
- 不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)
- 入管からのブラックリスト登録
- 事業の信頼失墜・取引先からの信用低下
4-3 仲介業者・ブローカーのリスク
- 入管法違反で刑事罰
- 行政処分(登録支援機関の登録取消し等)
5.偽装雇用と「資格外活動違反」の違い
似ている概念ですが、違いは以下の通りです。
- 偽装雇用:最初から虚偽の契約でビザを取得する行為
- 資格外活動違反:正規のビザを持ちながら、許可範囲外の仕事に従事する行為
いずれも不法就労ですが、偽装雇用の方が「計画的・悪質」と判断されやすく、処分も厳しい傾向にあります。
6.偽装雇用を防ぐために企業が取るべき対応
- 在留カードの真偽確認
- 職務内容と在留資格の適合性を確認
- 給与水準を適正に設定
- 就労資格証明書の申請を積極的に利用
関連記事:外国人就労と在留カードの確認方法|企業担当者が知るべきチェックリスト【完全ガイド】
7.偽装雇用を防ぐために外国人本人ができること
- 自分の学歴・職歴と合ったビザを申請する
- 転職時には必ず「在留資格変更許可申請」を行う
8.行政書士が解説|実務でよくある相談事例
- 「就労ビザを取るために必要書類の提出だけしてほしい」と依頼される
→ 法的に完全NG。発覚すれば外国人・企業双方も処罰対象。 - 「アルバイト先で正社員にするから就労ビザを申請したい」
→ 実態が単純労働の場合は不許可の可能性が高い。 - 「給与を多めに記載して申請したい」
→ 入管は給与台帳や源泉徴収票を照合するため、虚偽は即発覚。
9.Q&A:よくある質問と回答
Q1. 偽装雇用は本人が知らなければ責任を問われない?
→ いいえ。知らずに関与した場合でも「在留資格取消し」の対象となる可能性があります。
Q2. ビザ不許可になったら再申請できる?
→ 原則可能ですが、偽装雇用が原因の場合は厳しく審査され、再申請しても許可は難しいです。
Q3. 企業が偽装雇用で摘発されたら外国人全員のビザに影響する?
→ はい。同じ会社に所属する他の外国人も「虚偽の可能性あり」と見なされ、更新・変更が厳格化します。
10.まとめ
偽装雇用は「バレなければ大丈夫」というものではなく、入管庁は徹底的にチェックを行い、発覚すれば外国人の在留資格取消し、企業への刑事罰、社会的信用失墜という重大なリスクを伴います。
- 外国人本人は「正しい職務内容」でビザを取得すること
- 企業は「在留資格と業務の適合性」を必ず確認すること
- 専門家(行政書士など)に相談し、適法な形で申請すること
この3点を守ることで、不許可リスクを避け、安心して外国人雇用を進めることができます。