永住申請と転職の関係|審査で不利になるケースと有利になるケースを徹底解説
目次
はじめに
日本で長期的に生活を希望する外国人にとって「永住権(永住許可)」は、もっとも安定した在留資格の一つです。
しかし、永住申請を考えている最中に 転職 をすると「審査に不利になるのでは?」「収入や勤務先の変更で影響はあるのか?」と不安に思う方が多いでしょう。
本記事では、行政書士としての実務経験を踏まえ、転職が永住申請に与える影響について徹底解説します。あわせて、申請に向けて注意すべきポイントや、必要な対策も解説していきます。
1. 永住申請の基本要件
まず、転職の影響を考える前に、永住許可の基本条件を整理しておきましょう。出入国在留管理庁が定める代表的な要件は以下の通りです。
- 在留期間に関する要件
- 原則として10年以上日本に在留していること(就労資格または居住資格で5年以上含む)
- 日本人配偶者等・定住者などの場合は、より短期間で申請可能(例:3年以上の婚姻期間+1年以上の在留)
- 素行善良要件
- 犯罪歴がないこと
- 税金・年金・社会保険料をきちんと納めていること
- 独立生計要件(経済的安定性)
- 安定した職業・収入があり、日本で生活できること
- 年収目安:一般的に 300万円〜400万円以上 が望ましいとされる
詳しくは 出入国在留管理庁|永住許可申請をご確認ください。
これらの中で、転職が特に影響するのは 「独立生計要件」 です。
2. 転職が永住申請に与える主な影響
(1) 収入の安定性に影響
- 永住審査では「過去数年の収入」が重視されます。
- 転職によって一時的に収入が下がった場合や、試用期間中で安定性が不透明な場合、不利に働く可能性があります。
- 特に「年収が300万円を大きく下回る」「扶養家族が多い」場合は注意が必要です。
(2) 勤続年数の短さ
- 長期間同じ会社で安定して働いていることはプラス評価になります。
- 逆に、頻繁な転職や短期間での離職は「安定性に欠ける」と見なされるリスクがあります。
(3) 在留資格の適合性
- 転職先の仕事内容が在留資格(例:技術・人文知識・国際業務)と一致していないと、「資格外活動」や「不法就労」と判断される恐れがあります。
- したがって、転職後は必ず 在留資格と職務内容の整合性 を確認する必要があります。
(4) 社会保険・税金の手続き遅延
- 転職時に社会保険や住民税の切替手続きが遅れると、審査で「納税義務を怠っている」と見なされかねません。
- 特に永住申請では「過去数年分の納税証明書・社会保険料納付証明」が必須のため、転職直後は注意が必要です。
3. 転職後すぐに永住申請してよいか?
結論から言うと、転職直後の永住申請はリスクが高い と言えます。
- 入管は「現在の職場で安定的に働いているか」を重視するため、最低でも 半年〜1年程度は勤務実績を積んでから申請 する方が安心です。
- 収入証明(源泉徴収票や給与明細)を提出する際も、一定期間の安定収入があることが有利に働きます。
永住申請を急ぐ必要がない場合は、転職後1年ほど勤務してから申請 するのがベストです。
4. 転職がプラスに働くケース
必ずしも転職がマイナスになるわけではありません。以下のようなケースでは、むしろプラス評価を受ける可能性があります。
- 転職によって年収が大幅に上がった場合
- 大手企業や安定企業に就職した場合
- 専門性が高く社会的に需要のある職業に就いた場合
この場合は「安定性・将来性が増した」と評価され、永住許可に有利に働きます。
5. 永住申請に向けた転職時の注意点
- 年収水準を下げないようにする
- 年収が大幅に下がる転職は避ける
- 社会保険・税金の加入を確認する
- 雇用形態が「正社員」で社会保険完備が望ましい
- 職務内容と在留資格の一致
- 例:技術・人文知識・国際業務ビザなら事務職・エンジニア・通訳など
- 短期離職は避ける
- 1社あたり1年以上の勤続が安心
6. 転職と永住申請の実務上の流れ
① 転職時の届出
- 転職後は14日以内に「契約機関に関する届出」を入管へ提出する必要があります。
参考:出入国在留管理庁|契約機関に関する届出
② 永住申請時の提出書類
- 源泉徴収票(過去1〜2年分)
- 住民税の課税証明書・納税証明書(過去数年分)
- 在職証明書(転職先から発行)
③ 審査期間
- 永住申請は通常 6ヶ月〜1年程度 かかるため、その間の勤務状況も見られます。
7. 専門家に相談すべきケース
- 転職直後にどうしても永住申請をしたい
- フリーランスや契約社員に転職した
- 年収が下がったが扶養家族がいる
- 在留資格と仕事内容の適合性が不安
このような場合は、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
Q&A:転職と永住申請に関するよくある質問
Q1. 転職したら永住申請は必ず不利になりますか?
A. いいえ。安定性や収入が確保されていれば問題ありません。むしろ収入増や大手企業への就職はプラスに働きます。
Q2. アルバイトや契約社員でも永住申請は可能ですか?
A. 難しいですが不可能ではありません。ただし、社会保険加入や収入の安定性が重視されるため、正社員の方が有利です。
Q3. 転職直後でも永住申請できますか?
A. できますが、安定性が証明できないため不許可リスクが高いです。少なくとも半年〜1年は勤務実績を積むのが望ましいです。
Q4. 転職を繰り返していると不利になりますか?
A. 頻繁な転職は「安定性に欠ける」と判断されやすいです。やむを得ない事情がある場合は説明資料を添付しましょう。
まとめ
- 転職は永住申請に 大きく影響する要素 のひとつ
- 影響するのは主に「収入の安定性」「勤続年数」「社会保険加入状況」
- 転職直後は不利になりやすいため、半年〜1年以上の勤務実績 を積んでから申請が望ましい
- 収入増・安定企業への転職ならプラス評価も可能
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参考リンク
行政書士の視点からの結論
転職は永住申請に「必ずしもマイナス」ではありません。ただし、収入・社会保険・勤続実績を確実に整えることが何より重要です。
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |