在留資格「経営・管理」と「投資・経営」の違い:旧制度からの変更点を徹底比較
目次
1. はじめに:なぜ在留資格の名称が変わったのか?
かつて日本での起業や事業経営を目指す外国人にとっての在留資格は「投資・経営」でした。しかし、2015年4月1日の入管法改正により、この名称は「経営・管理」へと変更されました。単なる名称変更と思われるかもしれませんが、実はその背景には、より多様な経営形態への対応と、制度の明確化という重要な意図が隠されています。本記事では、新旧制度の違いを徹底的に比較し、現在の「経営・管理」ビザ取得を目指す方が知っておくべきポイントを解説します。
2. 旧制度「投資・経営」の概要
「投資・経営」ビザは、その名の通り、日本への「投資」と事業の「経営」を主な要件としていました。具体的には、外国人投資家が日本に会社を設立し、一定額以上の投資を行い、その事業を自ら経営することを想定していました。
主な要件(旧制度の傾向):
- 投資額の明確性: 資本金500万円以上の投資が一般的でした。
- 事業所の確保: 日本国内に事業を営むためのオフィスなどの確保が求められました。
- 事業計画の具体性: 事業の継続性・安定性を証明する事業計画書の提出が必要でした。
- 経営への従事: 申請者自身が事業の経営に直接関与することが求められました。
当時の制度は、比較的明確な投資基準が設けられており、ある程度の規模の事業を想定していました。しかし、その一方で、より小規模な事業や、必ずしも多額の「投資」を伴わない「経営」の形態には対応しきれない側面も指摘されていました。
3. 新制度「経営・管理」への変更点と意義
2015年の法改正で「投資・経営」から「経営・管理」へと名称が変更された最大のポイントは、「投資」の概念が強調されすぎないよう、「管理」という側面が加わったことです。これにより、より幅広い経営形態に対応できるようになりました。
主な変更点とポイント:
- 「投資」要件の柔軟化: 資本金500万円という基準自体は引き続き「一つの目安」として残っていますが、この金額に満たない場合でも、事業の安定性・継続性や、雇用創出への貢献などが総合的に判断されるようになりました。例えば、サービス業やIT関連事業など、必ずしも多額の設備投資を必要としない事業形態にも対応しやすくなりました。
- 「管理」業務の明確化: 従来の「経営」に加えて「管理」の概念が導入されたことで、必ずしも事業主として会社を立ち上げるだけでなく、企業の役員や事業部長として、事業の「管理」に携わる外国人材も対象となることが明確になりました。これにより、より多様な働き方に対応できるようになりました。
- 中小企業・ベンチャー企業への配慮: 設立間もない中小企業やベンチャー企業における外国人の経営参画も視野に入れられるようになりました。これにより、日本のイノベーション創出にも寄与することが期待されています。
- より詳細な事業計画の重要性: 投資額以外の要素がより重視されるようになったため、事業計画書の具体性や実現可能性の重要性が増しました。市場調査、競合分析、収益予測、資金計画などをより詳細に記載する必要があります。
4. 「経営・管理」ビザ取得の要件(現行制度)
現在の「経営・管理」ビザを取得するためには、以下の主要な要件を満たす必要があります。
- 事業の適法性・安定性・継続性:
- 日本で行う事業が適法であること。
- 事業計画に基づき、事業が安定的に継続・発展する見込みがあること。
- 事業を継続するための十分な事業資金が確保されていること。
- 事業所の確保:
- 日本国内に事業を営むための事務所(店舗、オフィスなど)を確保していること。バーチャルオフィスや自宅の一部を事務所とすることは原則として認められません。
- 詳細はこちらの記事もご参照ください:【重要】「経営・管理」ビザ取得の鍵は「事務所要件」にあり!申請前に知るべき重要ポイント
- 事業規模の要件(以下のいずれかを満たすこと):
- 500万円以上の投資: 事業に投じる金額が500万円以上であること。これは資本金だけでなく、事業所の賃貸費用や設備投資費用などを含みます。
- 2人以上の常勤職員の雇用: 常勤の日本人または永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の在留資格を持つ職員を2人以上雇用すること。これは、日本の雇用創出に貢献するという観点から非常に重要です。
- その他: 上記に準ずる事業規模があると認められる場合。
- 申請者の適格性:
- 申請者自身が、事業の経営または管理に実質的に従事すること。
- 事業の経営または管理に関する3年以上の経験を有すること(大学院で経営又は管理に関する科目を専攻した期間を含む)。
- 日本人と同等以上の報酬を受けること。
5. 「経営・管理」ビザ申請時の注意点とポイント
- 事業計画書の徹底的な作成: 事業の実現可能性、収益性、雇用計画などを具体的に示す事業計画書は、審査において最も重要な書類の一つです。専門家のアドバイスも積極的に活用しましょう。
- 資金の出所の明確化: 投資資金の出所は厳しく審査されます。合法的な方法で得られた資金であることを証明できるよう、送金記録や残高証明書などを準備しておく必要があります。
- 税務・法務の専門家との連携: 会社設立、許認可取得、税務処理など、日本で事業を行う上で必要な手続きは多岐にわたります。行政書士や税理士、弁護士などの専門家と連携し、適切なアドバイスを受けることが成功への近道です。
- 事業内容の具体性: どのような事業を行うのか、誰をターゲットにするのか、競合との差別化ポイントは何かなど、事業内容を具体的に説明できるように準備しましょう。
6. まとめ:より多様な「経営・管理」の形へ
在留資格「投資・経営」から「経営・管理」への変更は、単なる名称変更ではなく、日本の入国管理制度が、より多様な形態の事業活動や、外国人材の活躍の場に対応しようとする姿勢の表れです。
現在、日本で事業を立ち上げ、またはその経営・管理に携わろうとする外国人の方にとって、「経営・管理」ビザは非常に重要な存在です。旧制度からの変更点を理解し、現行制度の要件を正確に把握することで、スムーズなビザ取得を目指しましょう。ご自身の状況に合わせた最適な戦略を立てるためにも、まずは信頼できる専門家への相談をお勧めします。
関連情報:
- 法務省入国管理局ウェブサイト:在留資格「経営・管理」について
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![]() 「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「資格」 行政書士(特定付記)、TOEIC805点 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |