1,帰化とはどのような制度ですか?

 帰化とは、外国籍の方が日本国籍を取得すること、すなわち外国人が日本人となることです。帰化が認められるためには、国籍法に定められた帰化要件を満たし、法務局に帰化許可申請を行い、許可してもらう必要があります。そして、法務局に帰化許可申請を行い、許可不許可に係る結果の通知が来るまで、およそ1年程度の審査期間がかかります。

 帰化許可申請に当たり必要とされる書類は膨大な量となり、書類は100枚以上となる場合もあります。膨大な書類の収集にも時間と手間がかかり、添付書類に不足や間違いのないように準備する必要があります。

 このように帰化申請では書類の作成や収取に時間と手間がかかりますが、これは申請が受理されるか否かの問題であり、申請が受理されたから当然に帰化が許可されるわけではありません。帰化許可申請において許可権者は法務大臣であり、法務大臣には帰化申請を許可するか否か広範な裁量権が与えられています。

 帰化申請をお考えの方は、まずは国籍法上の帰化要件を満たしているか否かを確認する必要があります。そして書類を収集していくことになりますが、帰化申請に必要な書類は、申請人によって必要書類が変わってきます。つまり申請人の状況に応じ書類の収集を行っていくことが必要となります。

2,帰化許可要件は何ですか?

 会社を退職しても帰化許可がされるかについて、まずは帰化許可要件について検討します。帰化許可要件は、国籍法第5条に定められています。原則としては、外国人が日本国籍を取得するためには、以下の要件を充足している必要があります。

「帰化許可要件」

①住所要件 引き続き5年以上日本に住所を有し5年のうち3年以上就労経験があることが要求されています。
 「引き続き」とは在留が継続していることを意味します。出国日数が多い場合、具体的には連続して90日以上、連続していない場合でも年間で150日以上出国している場合は、実務上「引き続き」とは認められないと考えられています。
②能力要件 18歳以上であって、能力の準拠法である本国法上も成人に達していることが要求されています。
③素行要件 素行が善良であることが要求されています。
 いかなる者を素行善良とみるかについては、社会通念によって判断されます。
④生計要件
 自己または生計を共にする配偶者やその他の親族の資産や収入によって生計を営めることができることが要求されています。
⑤重国籍防止要件 重国籍防止要件とは、帰化しようとするものが国籍を有せず、又は日本国籍取得によって現国籍を失うべきこととすることが要求されています。
⑥思想要件 日本国憲法施行の日以前において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないことが要求されています。
⑦日本語能力要件 基本的な日本語能力が要求されます。
 日本の小学校3年生レベル程度の日本語能力が必要です。

3,年金を受給している場合でも帰化申請できますか?

(1)生計要件との関係

 年金を受給している場合でも帰化申請できるかは、上記2②で検討した生計要件に関わる問題となります。年齢は問題となりません。生計要件の充足には、収入に見合わない借金をしないことや、生活保護を受けていないことが必要です。年金を受給している場合に、直ちに生計要件が否定されるということはありません。

 この生計要件を充足しているか否かは、世帯年収を基準として判断されます。つまり、申請人本人のみに限らず、同居する親族全員の収入で審査されます。よって、申請者自身の収入が低い場合や専業主婦などで無収入である場合も、配偶者やその他同居の親族の収入によって、安定継続して生計を維持していくことができる場合は、生計要件を充足します。生計要件は、必ずしも申請人本人に備わっていることは必要ありません。よって、年金を受給している場合でも、申請人が就労して収入を得ている場合や、同居の家族が十分な収入を得ている場合は生計要件を充足することは可能です。

(2)生計要件充足に必要な年収

 生計要件は、申請人の同居の家族の人数や生活費、養育費、借金の有無など、個々人の生活状況を総合的に勘案し判断されます。よって、生計要件を充足するために必要な収入は、申請人個々人によって異なってきます。一般的には、単身世帯で年収300万円以上、扶養者がいる場合は扶養者一人につき+30~60万円は必要と考えられています。何よりも、申請人個々人の収入に見合った生活を営んでいることが大切だと考えます。

4,まとめ

 年金を受給している場合でも帰化申請できるかは、上記2②で検討した生計要件に関わる問題となります。年齢は問題となりません。生計要件は、自己または生計を共にする配偶者やその他の親族の資産や収入によって生計を営めることができることが要求されています。この生計要件を充足しているか否かは、世帯年収を基準として判断されます。年金を受給している場合でも、申請人が就労して収入を得ている場合や、同居の家族が十分な収入を得ている場合は生計要件を充足することは可能です。

 
「記事監修」
 加納行政書士事務所
 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
  特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法

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