1,ビジネス目的で短期滞在ビザを取得できますか?

(1)短期滞在ビザ概要

 短期滞在ビザとは短期滞在査証のことで、査証の交付を受けた場合は、15日、30日、90日のいずれかの期間、日本に滞在することが認められます。査証免除対象国以外の国籍をもつ外国人が日本に入国する際には、短期滞在ビザを取得する必要があります。短期滞在ビザは、原則として帰国が前提のビザになります。

 短期滞在ビザの申請は、母国(現地)の日本国大使館または領事館で申請することになります。基本的には、日本で申請するものではありません。申請方法は外国の日本大使館によって異なる部分もあり、現地の代理機関を通して申請すると決められている場合もあります。

(2)短期商用ビザ

 短期滞在ビザはビジネス目的でも取得することができます。例えば、日本企業が外国の取引先や子会社の外国人を、会議や商談、マーケット調査などを目的として日本に呼ぶ場合には、短期商用ビザを取得することになります。

2,短期商用ビザで就労できますか?

 短期商用ビザでは原則として就労することは認められません。短期商用ビザ外国人が日本で就労した場合は、外国人は不法就労罪、招聘した会社は不法就労助長罪に問われる可能性があります。

 短期商用ビザはビジネスを目的としたビザですが、外国との販路拡大やビジネス拡大などを目的として認められています。この点で、就労を目的とした就労ビザと短期滞在ビザは異なります。

 短期商用ビザは、就労ビザと比較して取得が容易です。そのため、短期商用ビザを悪用して外国人を招聘し、本来外国人に認められていない現場作業や単純作業などに従事させている事例も報告されています。もちろん、これは不法就労となり処罰の対象となります。このようなリスクを避けるためにも、招聘する日本の会社は、短期商用ビザと就労ビザとの違いを把握しておく必要があります。

3,短期商用ビザと就労ビザの違いは何ですか?

 短期商用ビザと就労ビザ(就労可能な在留資格)との大きな違いは、就労の可否です。就労ビザでは日本で就労することが認められますが、短期商用ビザでは就労が認められません。短期商用ビザはビジネスを目的とした短期滞在ビザですが、日本で報酬が発生する活動を行うことは認められません。短期商用ビザでは、短時間であっても、賃金や報酬が発生する活動を行った場合は、不法就労となります。

「短期商用ビザと就労ビザの違い」

短期商用ビザ就労不可(日本で賃金や報酬が発生する活動を行うことはできない)
就労ビザ(就労可能な在留資格就労可(日本で賃金や報酬が発生する活動を行うことができる)

4,短期商用ビザで認められない就労の判断基準は何ですか?

 短期商用ビザでは、これまで検討した通り、就労が認められていません。そこで、いかなる活動が就労に該当することになるのか、その判断が問題となります。以下では、いかなる場合に就労に該当するかについて検討していきます。

(1)就労の概念

就労を伴う活動とは、対価(給与や賃金など)が発生する活動です。そして、給与や賃金とは、労務提供の対価として支払われる報酬を意味します。よって、実費は給与や賃金に含まれません。したがって、外国人を短期滞在ビザで招聘するにあたり、必要な渡航費や宿泊費、その他の滞在費を支払うことは問題ありません。

なお、短期滞在ビザでの活動で発生した経済的利益に対する給与や賃金などの対価の支払いは、日本企業が支払う場合はもちろん、外国の企業が支払うことも認められません。

(2)報酬を支払わなくても就労に当たる場合

 短期商用ビザで招聘した外国人に給与や賃金を支払わない場合でも、就労に当たる場合があります。例えば、外国人に給料を支払っていない場合でも、日本に招聘した会社の金銭的・経済的利益に貢献している場合は、就労に該当します。つまり、外国人が業務に従事することによって、会社が報酬請求など経済的利益を得ている場合は給与を支払っていない場合でも就労に当たります。日本人を雇用した場合は報酬が発生する業務に、短期商用ビザを悪用して無報酬で従事させて受入企業が経済的利益を得ている場合は、報酬に該当します。もっとも、業として行っていない場合は、少額の「謝金」を支払っても短期商用ビザの活動範囲内と認められる場合もあります。

無報酬でも就労に当たる例無報酬で就労に当たらない例
 外国人技術者を招聘して機械などを設計して販売し会社が経済的利益を得る場合外国企業から購入した機械を組み立てるために、購入先の外国人技術者を招聘する場合
有料セミナーの講師として登壇し、会社が受講料を徴収して経済的利益を得る場合ノウハウ修得などを目的として有料セミナーに出席し聴講する場合

(3)その他、就労に該当しない例

就労に該当しない場合就労に該当する場合
・アンバサダーとしてシンポジウム参加
・販路拡大のための商談
・会議のため外国子会社の社員を招聘
・モーターサイクルショーといった展示会への外国企業の参加
・日本で採用するための採用面接への招聘
・日本工場でライン工として従事
・飲食業の日本支店で接客業務に従事
・建設現場の作業員として従事
・給与や賃金を支払い業務に従事
・外国人の就労によって会社が報酬請求権など経済的利益を得る場合

5,まとめ

 短期滞在ビザとは短期滞在査証のことで、査証の交付を受けた場合は、15日、30日、90日のいずれかの期間、日本に滞在することが認められます。短期滞在ビザはビジネス目的でも取得することができます。 短期商用ビザでは原則として就労することは認められません。短期商用ビザと就労ビザ(就労可能な在留資格)との大きな違いは、就労の可否です。

「記事監修」
 加納行政書士事務所
 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
 特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法

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