1,年齢差が大きい場合審査が厳しくなる理由は何ですか?

 年齢差が大きい国際結婚の場合、配偶者ビザの審査は厳しくなります。その背景には、年齢差が大きい国際結婚の場合、配偶者ビザの取得後に婚姻の実態がなくなる例が多いという実情があります。つまり、偽装結婚の割合が高いという傾向があります。残念ながら、戸籍売りをする日本人もいます。配偶者ビザは就労制限がなく、風営関係で就労することも可能です。このように就労制限がないことから、偽装結婚の多くは就労を目的としています。このような実情から、年齢差が大きい配偶者ビザ申請に対しては、入管に慎重に審査されることになります。

 では、どの程度の年齢差があった場合に注意が必要か、が問題となりますが、年齢差15歳以上の場合は注意してください。さらにそれ以上、20歳以上の差があった場合は要注意です。

2,年齢差が大きい場合、「婚姻の信ぴょう性」審査が厳しくなりますか?

 年齢差が大きい国際結婚の場合は、配偶者ビザの許可要件の1つ「婚姻の信ぴょう性」要件の審査が慎重になります。その理由は、上記1で検討した通り、年齢差が大きい国際結婚には偽装結婚が多い、ということに求められます。以下では、婚姻の信ぴょう性要件について検討します。

(1)婚姻の信ぴょう性

 配偶者ビザは日本人と結婚すれば当然に付与されるものではありません。婚姻の信ぴょう性や生計要件、素行善良要件といった配偶者ビザの許可要件を充足していない場合は、当然に不許可となります。

 配偶者ビザは日本国法および外国人の国籍国法に基づく婚姻関係があることは大前提として、「婚姻の信ぴょう性」が要求されます。「婚姻の信ぴょう性」とは、婚姻の実体があること、すなわち真摯な婚姻意思に基づく婚姻であることが必要です。

(2)婚姻の信ぴょう性の趣旨

 配偶者ビザの許可要件の1つに「婚姻の信ぴょう性」が要求されている趣旨は、就労を目的とした偽装結婚や悪質なブローカーが介在した国際結婚を防止することに求められます。配偶者ビザは他の就労ビザと比べても、就労制限がなく永住申請や帰化申請の要件が緩和されているなど、優遇されている在留資格です。このように優遇されている在留資格であるため、外国人が日本人を騙すケースや日本人が戸籍売りなどをするケースといった偽装結婚によって、配偶者ビザの取得を試みる外国人は少なくありません。

3,年齢差が大きい場合、どうしたら良いですか?

(1)婚姻の信ぴょう性の立証責任

 上記で検討した通り、年齢差が大きい場合は婚姻の信ぴょう性との関係で疑義が生じやすくなります。しかし、婚姻の信ぴょう性が認められる場合、つまり真摯な婚姻意思に基づく結婚であることが認められれば、配偶者ビザを取得することは可能です。この婚姻の信ぴょう性の立証責任は申請者側にあります。したがって、真摯な婚姻意思に基づく婚姻であることを証明できなかった場合は、不許可になります。年齢が大きい場合は、婚姻の信ぴょう性に疑義が生じやすくなっているので、婚姻の信ぴょう性の立証は難しくなることは避けられません。

(2)理由書の作成

 年齢差が大きい場合は、質問書とは別に、理由書を作成することが不可欠になってきます。配偶者ビザでは質問書の提出が必須となります。この質問書は婚姻の信ぴょう性の立証において、大きな影響を持つ必須書類です。しかし、質問書の記載欄は大きくなく、この記載欄では十分に説明するには小さすぎます。そこで、質問書とは別に、理由書を作成し説得力ある説明をしていく必要があります。そして理由書や質問状に記載した事項を証明する写真等の立証資料はかならず提出して、説得力を持たせてください。

 質問書には、質問事項の一つに、結婚に至った経緯の質問事項があります。この質問事項は、婚姻の信ぴょう性の立証において最も重要な質問事項となりますので、特に注意してください。この質問事項では、出会った経緯、出会いから交際に至った経緯、交際から結婚に至った経緯をできる限り詳しく説明する必要があります。〇年〇月頃、何処でどういった理由で知り合ったか、交際に至るまではどのような形で連絡し交際し交際に至ったか、交際から結婚に至るまでも同じようにデートで訪れた場所などを詳しく説明してください。もちろん、これを裏付ける写真やメールなどの交信履歴のコピーを提出することは不可欠です。年齢差が大きく、これらの資料も提出できないというのであれば、偽装結婚であると疑われても不思議ではありません。そして、質問書に加えて、結婚に至った理由書を作成して、婚姻の信ぴょう性に関し説得力を持たせることが必要になります。

(3)理由書に記載した事項を裏付ける立証資料の提出

 理由書において説明した事項を立証する証拠の提出は不可欠です。デートに行った時の写真、メールの交信履歴、通話記録などです。

 交際中に電話やメールを一切しておらず、メールの交信履歴や通話記録すら提出できないというのであれば、偽装結婚と疑われてしまいます。日本と海外の遠距離であったとしても、SNSの交信、メールや電話等での連絡も一切せずに結婚に至ったという事は、常識的に考えられないと思います。

 交際期間中に遊びに行った公園や遊園地で撮影した写真がある場合には、必ず提出してください。また、可能な限り双方の相手方親族と顔合わせを行い、その写真を提出してください。あくまで個人的見解ですが、デートや旅行の写真以上に有効なものはないと思っています。

4,まとめ

 年齢差が大きい国際結婚の場合、配偶者ビザの審査は厳しくなります。その背景には、年齢差が大きい国際結婚の場合、偽装結婚の割合が高い傾向があるという実情があります。よって、年齢差が大きい場合は婚姻の信ぴょう性との関係で疑義が生じやすくなりますしかし、婚姻の信ぴょう性が認められる場合、つまり真摯な婚姻意思に基づく結婚であることが認められれば、配偶者ビザを取得することは可能です。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法