1,留学ビザとは、どんなビザですか?

 留学ビザとは在留資格「留学」のことで、外国人が中長期の期間日本の教育機関で教育を受ける場合に必要なビザとなります。入管法は教育ビザに関し「本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編成に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動」(入管法別表第1の4)と定め、外国人が日本の教育機関で教育を受ける活動を認めています。

 なお、留学ビザの目的は日本の教育機関で教育を受ける活動です。したがって、留学ビザでは原則として就労は認められていません。

2、日本人と結婚した場合は留学ビザから配偶者ビザへ変更した方が良いですか?

 留学生が日本人と結婚した場合は、留学ビザから配偶者ビザへ変更するほうが好ましいと考えます。配偶者ビザは留学ビザと比較して強力な在留資格になっています。具体的には、留学ビザと対比して配偶者ビザの場合は、就労制限がなく、永住許可要件が緩和されます。

 留学ビザの場合は、資格外活動許可を取得した場合は週28時間以内の就労が認められます。これに対し、配偶者ビザの場合は就労制限がないため、自由に働くことができます。パチンコ屋でも働けます。

 永住申請に関しても、配偶者ビザの場合は、婚姻期間が3年以上あれば1年日本の居住している場合は永住申請できます。これに対して、留学ビザの場合は一般原則通り、引き続き10年以上日本に在留している必要があります。

「配偶者ビザへの変更のメリット」

・就労制限がなく自由な就労が可能
・永住許可要件の居住要件の緩和

3,留学ビザから配偶者ビザへ変更する際の注意点は何ですか?

 留学生が日本人と結婚した場合は、留学ビザから配偶者ビザへ変更することが認められます。ただし、留学ビザから配偶者ビザへ変更する場合は、配偶者ビザの許可要件を充足していることは当然として、留学生としての在留状況も審査の対象となることに注意が必要です。以下では、留学ビザから配偶者ビザへ変更する際の注意点について検討します。

(1)出席率や成績

 留学ビザから配偶者ビザへ変更申請する際には、留学生としての在留状況が審査の対象となります。留学ビザの目的は、日本の教育機関で教育を受けること、つまりは勉学です。よって、日本語学校や専門学校、大学等で勉強していたか否かは確認されます。つまりは、学校での出席率や成績が審査対象に含まれます。

 出席率や成績が悪い場合は、留学生としての活動を適切に行っていたかどうか疑義が生じます。それにもかわらず日本人と結婚して配偶者ビザへ変更申請した場合は、偽装結婚つまりは、学校を辞めたいが日本に在留したいので日本人と結婚する、といった疑義が生じる可能性があります。

 出席率に関しては、80%以上出席している場合は良好と見なされます。80%を下回る場合は、その合理的な理由を説明する必要があります。

(2)休学・退学している場合

 上記(1)検討した通り、留学ビザの目的は勉学です。休学や退学しているにもかかわらず、日本人と結婚して配偶者ビザへ変更する場合は、偽装結婚との疑義が生じやすくなります。

(3)アルバイト時間

 留学ビザの目的は、日本の教育機関で教育を受けることです。よって、留学ビザでは原則として就労は認められません。もっとも、資格外活動許可を取得した場合は、例外的に週28時間以内のアルバイトが認められています。下記の制限を超えてアルバイトした場合は、オーバーワークとなり不法就労です。入管法は不法就労罪を定め、罰則をもって不法就労を禁止しています。このような入管法違反は退去強制処分の対象となります。また、日本人と結婚したからといっても、留学ビザから配偶者ビザへの変更申請では不許可になります。

・授業期間中:週28時間まで
・長期休暇中:1日8時間(週40時間)まで ※退学後はアルバイト不可

(4)生計要件

 配偶者ビザの許可要件の1つに生計要件があります。生計要件は、日本で生計を維持できる経済力があることを要求しています。留学ビザから配偶者ビザへ変更する場合は、学生が結婚することを意味します。日本人配偶者に十分な経済力がある場合は問題ありませんが、日本人配偶者に十分な資力がない場合は、日本での生計をどのように維持していくのかが問題となります。

4,留学ビザから配偶者ビザへ変更する場合の必要書類は何ですか?

 留学ビザから配偶者ビザへ変更申請する際に必要となる書類は以下の通りです

「必要書類」

1,在留資格認定証明書交付申請書 1通
 入管HPからダウンロード可能
2,写真(縦4cm×横3cm) 1葉
3, 配偶者(日本人)の「戸籍謄本(全部事項証明書)」 1通
 申請人との婚姻事実の記載のあるもの
4,申請人の国籍国(外国)の機関から発行された「結婚証明書」 1通
5,日本での滞在費用を証明する資料
(1)申請人の滞在費用を支弁する方の「直近1年分の住民票の課税(または非課税)証明書」「納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)」 各1通
(2)入国して間もない場合などで(1)の資料を準備できない方は、以下の資料が必要です。
①預貯金通帳の写し 適宜
②「雇用予定証明書」または「採用内定通知書(日本の会社発行のもの)」 適宜
③上記に準ずるもの 適宜
6,配偶者(日本人)の「身元保証書」 1通  
 入管HPからダウンロード可能
7,配偶者(日本人)の世帯全員の記載のある「住民票の写し」 1通
8,質問書
 入管HPからダウンロード可能
9,夫婦間の交流が確認できる資料
(1)スナップ写真
(2)その他(SNS記録や通話記録)
10,パスポート
11,在留カード

5,留学ビザから配偶者ビザへ変更手順はどんな流れですか?

 留学ビザから配偶者ビザへの変更は、以下のような流れで進みます。

「変更の手順」

①必要書類の収集と作成

②地方出入国在留管理局へ提出

③審査 審査期間は2~3か月程度です。

④審査結果の通知
 審査結果はハガキで通知されます。
 許可の場合は、新しい配偶者ビザの在留カードが交付されます。

6,まとめ

 留学生が日本人と結婚した場合は、留学ビザから配偶者ビザへ変更するほうが好ましいと考えます。配偶者ビザは留学ビザと比較して強力な在留資格になっています。ただし、留学ビザから配偶者ビザへ変更する場合は、配偶者ビザの許可要件を充足していることは当然として、留学生としての在留状況も審査の対象となることに注意が必要です。

「記事監修」
 加納行政書士事務所
 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
 特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法