1,介護ビザ(在留資格「介護」)とはどんなビザですか?

 介護ビザとは在留資格「介護」のことで、就労ビザの1つです。出入国管理及び難民認定法は、在留資格「介護」について「本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動」(入管法別表1の2)と定め、外国人が介護分野で就労することを認めています。

介護ビザでは、介護福祉士の資格を保有する外国人が、介護及び介護の指導を行う業務に従事する活動が認められます。技能実習や特定技能は認められる在留期間が最長5年と上限が設けられています。これに対し、介護ビザでは在留の上限は設けられていません。介護ビザでは、期間更新が認められる限り、永続的に在留することが認められます。

2,介護ビザの許可要件は何ですか?

 介護ビザを取得するためには、以下の許可要件を充足する必要があります。

・介護福祉士の国家資格を有すること
・本邦の公私の機関(介護施設など)との契約があること
・日本人と同等額以上の報酬
・介護又は介護の指導を行う業務に従事すること

(1)介護福祉士の国家資格を有すること

 かつては、介護分野で就労が認められる外国人は、EPA協定国(フィリピン、インドネシア、ベトナム)の特定活動ビザの外国人と身分系ビザ(永住者、永住者の配偶者、定住者、日本人の配偶者等)外国人の2種類に限られていました。

 入管法改正によって在留資格「介護」が新設され、上記以外の外国人にも介護福祉士の国家資格を取得することによって、介護分野で就労するための道が開かれています。介護福祉士の国家資格を取得して介護ビザを取得するためには、以下のようなルートがあります。

①介護福祉士養成施設での取得

 外国人が養成施設によって介護福祉士の資格を取得する為には、まず「留学」ビザを取得して留学生として日本に入国する必要があります。そして、介護福祉士養成施設(専門学校や大学など)を卒業して介護福祉士の国家資格を取得します。なお、平成29年度以降は、養成施設卒業者も、介護福祉士の資格を取得する為には、国家試験合格が必要です。もっとも、令和8年度までの卒業者に対しては、卒業度5年間の経過措置が設けられています。

②実務経験による取得

 3年以上介護等の業務に従事した実務経験を有し、450時間以上の実務者研修を経た者には、介護福祉士の国家試験を受験することが認められます。よって、技能実習生や特定技能外国人(介護分野)で入国し、介護施設で3年以上就労し実務者研修を経た場合は、介護福祉士の国家試験を受験することができます。その他、資格外活動許可を取得し介護施設で3年以上就労し実務者研修を経ることも考えられます。このような過程を経て、介護福祉士の国家試験に合格し介護福祉士の国家資格を取得できます。

③福祉系高校卒業による取得

 2009年以降に福祉系高校に入学した者で、定められた科目や単位を取得している場合、介護福祉士の国家試験を受験することができます。

④経済連携協定(EPA)による取得

 経済連携協定では、介護福祉士候補者として外国人を受け入れています。このEPAとは、経済活動の連携強化を目的とした日本国と相手国との間の取決めのことで、現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から外国人を受け入れています。EPAに基づき介護福祉士候補者として入国し、介護福祉士養成施設卒業又は実務経験を経ることによって、介護福祉士の国家資格を取得することができます。

(2)本邦の公私の機関(介護施設など)との契約があること

 日本の介護施設や病院などと雇用契約を締結していることが必要となります。

(3)日本人と同等額以上の報酬

 報酬は、同種同等の仕事をしている日本人と同等額以上の報酬を介護ビザで就労する外国人に支払う必要があります。また、社会保険の負担など報酬以外の待遇についても日本人と同等以上である必要があります。介護ビザに限らず、外国人を雇用する際には日本人と同等以上の待遇が必要となります。外国人であることを理由に報酬を下げることは、外国人差別と見なされ、ビザは下りません。

(4)介護又は介護の指導を行う業務に従事すること

 介護ビザの場合は、技能実習や特定技能と異なり、介護分野で従事する業務に制限はありません。よって、介護ビザでは夜勤や訪問介護することも可能です。具体的に介護分野で従事できる業務には、病院、介護施設等で入浴と食事の介助など、またケアプランの作成、訪問介護などが挙げられます。

3,介護ビザ申請に必要な書類は何ですか?

 介護ビザ申請時に必要な書類は以下の通りです。

「必要書類」

①在留資格変更許可申請書 1通
②写真(縦4cm×横3cm)1葉
③パスポート及び在留カード 提示
④介護福祉士登録証(写し) 1通
⑤労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書 1通
⑥申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(労働条件通知書(雇用契約書)等)1通  
※派遣契約に基づいて就労する場合(申請人が非派遣者の場合)
⑦契約機関の登記事項証明書
⑧契約機関の概要を明らかにする次のいずれかの文書
(1)勤務先の沿革、役員、組織、事業内容等が詳細に記載された案内書 1通
(2)その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書 1通
⑧技能移転に係る申告書  
※在留資格「技能実習」からの資格変更の場合のみ必要です

4,介護ビザ以外にも介護分野で働ける就労ビザはありますか?

 介護ビザ以外の介護分野で働ける就労ビザには、以下の3種類が挙げられます。なお、身分系ビザ(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)は就労制限がないため就労することができますが、就労ビザではないため割愛します。

・在留資格「技能実習(介護職)」
・在留資格「特定技能(介護)」
・在留資格「特定活動(EPA)」

(1)在留資格「技能実習(介護職)」

 技能実習制度とは、外国人技能実習生が、本国において習得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を日本で達成することを目的としています。技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行わることになります。外国人技能実習生は、日本の企業や個人事業主などの技能実習者と雇用契約を結び、在留が認められる期間は最長5年間とされています。このように、在留資格「技能実習」は、技術移転による国際協力を目的とした制度であるため、介護ビザと異なり帰国が前提のビザとなっています。

①在留期間通算5年の上限

 上記の通り、技能実習は技術移転による国際協力を制度趣旨としているため、技能実習ビザで認められる在留期間が通算で5年という上限が定められています。また、自動的に5年間在留が認められるわけではなく、1~2年ごとに試験があり、合格すれば最長5年間まで更新が認められます。

 まず、入国の1年後に試験があります。この試験に合格すると更新が認められ実習を継続することができます。さらに2~3年後にまた試験があります。この試験に合格すると更新が認められ、更に2年間の実習を継続することができます。

技能実習ビザは帰国することが前提となっていますが、上記の通り技能実習良好修了者は特定技能ビザへの変更申請を行うことができます。また、技能実習によって介護福祉士国家試験の受験資格を取得し、この国家試験に合格して介護福祉士の資格を取得した場合には、介護ビザへの変更も可能です。

②技能実習から介護ビザ変更の注意点

 上記の通り、介護福祉士の国家資格を取得した場合は、技能実習から介護ビザへ変更申請することも可能です。しかし、前述の通り、技能実習は帰国して母国に技術や知識を移転することを目的としているため、帰国することが前提のビザとなります。よって、技能実習から介護ビザへの変更申請が許可されるためには、「技能実習で学んだ技能等について本国への移転に勤められること」が要件となります。日本在留を継続しながら、技能移転をどのように実現していくのか、理由書などで合理的に説明していくことが重要です。

(2)在留資格「特定技能(介護)」

 特定技能制度は、日本社会における人手不足状況を背景に、人手不足が顕著な産業分野において、一定の専門性や技術を有し即戦力となりうる外国籍労働者を受け入れていくことを目的とした制度です。介護分野も、この人手不足が顕著な産業分野に該当します。特定技能ビザは、この人手不足に対応し日本経済社会の持続可能性を維持していくことを目的としています。

 在留資格「特定技能(介護分野)」を取得するためには、特定技能介護分野の技能検定試験及び日本語試験に合格している必要があります。なお、技能実習2号を良好に修了した者については、上記試験は免除されます。特定技能ビザの場合は、介護ビザと異なり介護福祉士の国家資格を取得していない場合でも、介護分野で就労することが認められることがメリットといえます。しかし、特定技能ビザには、介護ビザと異なり、以下のような在留期間の上限が設けられています。

「在留期間通算5年の上限」

特定技能ビザには、在留期間の上限が設けられています。特定技能ビザで日本に在留できる期間は、通算で5年間です。よって、在留期間5年間を経過した場合は、特定技能ビザの在留期間更新許可申請は認められません。もっとも、実務経験を経て介護福祉士の国家試験を受験することができます。この試験に合格し、介護福祉士の国家資格を取得した場合は、在留資格「介護」への変更申請も可能になります。

(3)在留資格「特定活動(EPA)」

 経済連携協定では、介護福祉士候補者として外国人を受け入れています。このEPAとは、経済活動の連携強化を目的とした日本国と相手国との間の取決めのことで、現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から外国人を受け入れています。EPAに基づき介護福祉士候補者として入国し、介護福祉士養成施設卒業又は実務経験を経ることによって、介護福祉士の国家資格を取得することができます。

①入国要件の日本語能力

 この制度では、入国要件として日本語能力試験に合格していることが必要です。インドネシア、フィリピンの場合は日本語能力試験N5以上、ベトナムの場合は日本語能力試験N3以上に合格していることが必要です。なお、インドネシア人及びフィリピン人候補者の約9割は、就労開始時点でN3程度の日本語水準に到達しています。

 さらに、入国後も日本語や介護に関する基本的な研修を経たうえで、介護施設で介護福祉士候補者として雇用されます。この研修の前後で、介護福祉施設とのマッチングが行われます。 

②介護ビザへの変更

 この制度で入国した場合は、入国してから4年目に介護福祉士の国家試験を受験することになります。国家試験に合格し、介護福祉士の国家資格を取得すれば、介護ビザへ変更申請が可能になります。介護ビザでは更新に上限がなく、永続的な就労が可能となります。また、永住申請の可能性も見えてきます。

 なお、残念ながら国家試験に不合格となった場合は、帰国することになります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了
「資格」
 行政書士(特定付記)、TOEIC805点
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法