1,スタートアップビザとはどんなビザですか?

 スタートアップビザとは、日本で起業を目指す外国人に、起業準備のための一時的な在留を認める在留資格です。スタートアップビザは、近年欧米を中心に制度整備が進んでいます。日本おいても、優秀な外国人の起業準備を受入れることを目的として、一部の自治体において受け入れています。

(1)スタートアップビザの種類

 日本版スタートアップビザには、内閣府が管轄する「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」と経済産業省が管轄する「外国人起業活動促進事業」に基づく2種類があります。どの事業を利用するかによって、在留資格が「経営・管理」と「特定活動」とで異なってきます。経営管理ビザでは6か月の在留、特定活動ビザでは最長1年間の在留が認められます。このような制度によって、外国人が企業準備のために日本に一時的に在留することを認めています。

管轄内閣府経済産業省
在留資格「経営・管理」「特定活動」
在留期間6か月最長1年(6か月で更新)
証明書創業活動確認証明書起業準備活動確認証明書
対象地域10自治体16自治体
制度の開始2015年7月2018年2月

(2)経営管理ビザとスタートアップビザの違い

 一般的に、外国人が日本で企業経営を行う場合は、経営管理ビザを取得します。しかし、経営管理ビザを取得するためには、500万円以上の資本金や事業所要件などをクリアする必要があり、取得するためのハードルは高くなっています。そして、経営管理ビザを申請するためには、許可要件を満たした会社設立が整っている必要があります。

 これに対し、スタートアップビザの場合は、起業準備のため一時的な在留を認める制度なので、経営管理ビザを取得するための条件が整っていない段階でも取得することができます。もっとも、スタートアップビザの場合は、起業準備を目的としたビザのため、報酬を受けることを目的とする活動はできません。

2,スタートアップビザの許可要件は何ですか?

 スタートアップビザは、起業準備を目的としたビザです。つまりは、在留資格「経営・管理」の取得を目的とします。よって、最終的には在留資格「経営・管理」を取得できる見込みがあるか否かが重要となります。

「経営管理ビザの許可要件」

①事業の事業所を確保していること
②資本金が500万円以上であること(若しくは、2人以上の常勤職員が従事していること)
③事業の継続性があること

「スタートアップビザの許可要件」

①「経営・管理」の要件を充足する見込みがある
②事業の内容が具体的である
③起業準備の計画が具体的に決まっている
④日本滞在中の生活費が賄える

3,スタートアップビザの対象となる自治体はどこですか?

 日本版スタートアップビザには、内閣府の「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」と経済産業省の「外国人起業活動促進事業」が管轄している2種類があります。各々の制度が対象となる自治体は以下の通りです。

内閣府の「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」

東京都・神奈川県・京都府・新潟市・福岡県・北九州市・仙台市・愛知県・広島県・今治市

経済産業省の「外国人起業活動促進事業」

自治体対象事業
福岡市・知識創造型産業(フィンテック・半導体・ソフトウエア開発など)
・健康・医療・福祉関連産業(創薬ベンチャー・医療技術開発など)
・環境・エネルギー関連産業(クリーンエネルギー開発など)
・物流関連産業(グローバルSCMサービス・国際宅配など)
・貿易関連産業(市内産品の海外販路開拓に資する事業など)
愛知県・IT分野において高成長を目指す事業
・革新的技術・技能を用いて高成長を目指す事業
岐阜県・IT・IoTなど関連分野
・観光分野
神戸市・高度技術を活用した事業(IT・健康・医療・福祉・環境・物流など)
・既存産業の高付加価値化イノベーションを開発する事業
・その他、神戸市長が必要と認めたもの
大阪市・成長ものづくり分野
・第4次産業革命関連分野
・グリーン・エネルギー分野
・ヘルスケア・ライフサイエンス分野
・慣行・スポーツ・文化・まちづくり分野
三重県・IoT・ITビジネス
・食関連ビジネス
・観光関連産業
・次世代エネルギー関連産業
・次世代ヘルスケア関連産業
・生活関連サービス関連事業
・貿易関連産業
北海道・地域を支える農林水産業の成長産業化を促進する事業
・地域資源を生かした食関連産業の振興を促進する事業
・観光産業の先進地・北海道の実現を促進する事業
・高い付加価値を生み出すものづくり産業の振興を促進する事業
・市場規模やニーズの変化に応じた産業の創造を促進する事業
・そのほか、知事が必要と認めたもの
茨城県・ライフサイエンス(医療・製薬など)を中心に研究開発型の事業
・IT分野やロボティクスなど革新的技術・技能を用いて高成長を目指す事業
・そのほか、知事が特に認めたもの
横浜市・IoT分野およびライフイノベーション分野
・革新的技術を用いた事業
・知識集約・付加価値創造事業
・そのほか、新産業創造を目指す事業
仙台市・知識創造型産業(半導体・ソフトウエア開発・ロボット関連など)
・健康・医療・福祉・教育関連産業(創薬ベンチャー・語学教育関連事業など)
・環境・エネルギー・防災関連産業(クリーンエネルギー開発・防災サービスの提供など)
・貿易・観光関連産業(市内産品の海外販路開拓に資する事業・外国人観光客の誘致に関する事業など)
大分県・自動車関連
・電子・電気・機械関連
・素材型・造船関連
・健康・医療・福祉関連
・環境・エネルギー関連
・食品・農林水産関連
・サービス産業 ・情報関連
・航空関連
・物流関連
京都府・ものづくり(伝統産業・先端産業など)
・AI・IoT・情報通信 ・コンテンツ ・ライフサイエンス・ウエルネス
新潟県規定なし
兵庫県・高度技術を活用した事業(IT・ロボット・健康医療・福祉・環境・物流・水素などの新エネルギー・航空など)
・既存産業の高付加価値化やイノベーションを誘発する事業
・中小企業の経営基盤の強化・持続的な発展に資する事業(AI・IoT・ロボットなど)
渋谷区・健康・医療・福祉 ・環境・エネルギー ・食品・農業・林業・水産業 ・情報技術 ・文化・芸術 ・ファッション
浜松市・第2期はままつ産業イノベーション構想で規定する7つの成長分野
①次世代輸送用機器
②健康・医療
③新農業
④環境・エネルギー
⑤光・電子
⑥デジタル
⑦ロボティクス
・革新的技術
・サービスを用いて成長を目指す事業
・そのほか、市長が認める分野対象事業
加賀市・知識創造型産業(半導体・ソフトウエアの開発など)
・健康・医療・福祉関連産業(創薬ベンチャー・医療技術開発など)
・環境・エネルギー関連産業(クリーンエネルギー開発など)
・物流関連業(国際宅配・ドローン物流開発など)
・貿易関連(市内産品の海外販路開拓に資する事業など)
・観光関連業(外国人観光客の誘致に関する事業など)
・そのほか、加茂市長が認めたもの

4,スタートアップビザ申請の手順はどうなりますか?

手順1 創業活動確認証明書又は起業準備活動確認証明書の取得

 スタートアップビザを取得するためには、対象となる自治体から創業活動確認証明書又は企業準備活動確認証明書を取得する必要があります。内閣府の「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」と経済産業省の「外国人企業活動促進事業」とで、対象となる自治体は異なります。必要書類を用意したら、開業予定地となる自治体に申請します。

 創業活動確認証明書又は起業準備活動確認証明書の申請には、一般的に以下の書類が必要となります。自治体によって、この他にも必要な書類もあるので、各自治体のHPで確認してください。

「必要書類」

・起業準備活動確認申請書(内閣府の制度を利用する場合は、創業活動確認申請書)
・企業準備活動計画書(内閣府の制度を利用する場合は、創業活動計画書)
・申請者の履歴書
・誓約書
・上陸後または在留資格の変更後1年間の申請者の住居を明らかにする書類
・上陸後または在留資格の変更後1年間の申請者の滞在費を明らかにする書類
・卒業証明書の写し
・就労証明書など
・申請者のパスポート

手順2 スタートアップビザ申請

各自治体の審査をクリアすれば、創業活動確認証明書又は企業準備活動確認証明書が交付されます。証明書を取得したら、申請書と共に地方出入国在留管理官署に提出して、スタートアップビザの在留資格認定証明書交付申請をしてください。入管の審査をクリアすれば、起業準備を目的とした在留資格「経営・管理」又は「特定活動」を取得できます。

手順3 経営管理ビザへの変更又は更新

 起業準備を目的とした在留資格「経営・管理」で認められる在留期間は6か月です。この間に起業準備が完了した場合は、経営管理ビザの更新を行ってください。

 起業準備を目的とした在留資格「特定活動」でも、6か月の在留が認められますが更新することが可能です。更新した場合は、さらに6か月の在留が認められます。よって、合計で1年間の起業準備を目的とした在留が認められます。起業準備が完了し、経営管理ビザの要件を充足できるようになったら、経営管理ビザへ変更申請してください。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住、帰化、外国人問題、国際公法