目次
1,技術人文知識国際業務ビザ申請の申請理由書とは何ですか?
技術人文知識国際業務ビザの申請において、申請理由書の提出は必須ではありません。しかし、無事に許可を取得する為には必要と考えます。理由書には、入管が用意する書式などはなく、書き方は任意となっています。特に、雇用理由書は非常に重要となります。採用した外国人が、在留資格「技術人文知識国際業務」の許可要件を充足している、という事を疎明するために必要となります。
技術人文知識国際業務ビザ申請においては、許可要件を充足していることを立証する資料の収集や提出が必要となります。例えば、最終学歴の卒業証明書、成績証明書、会社の登記事項証明書、決算報告書、取引明細、実績といった立証資料です。そして、申請理由書においては、これらの提出資料が、技術人文知識国際業務の許可要件の充足性の立証において、どのような意味を有するのか、どのように許可要件を充足しているのか、を説明していくことが重要です。特に雇用理由書では、採用後に従事する業務内容を説明し、学歴等の申請人能力との関連性から、雇用理由を説明していくことが重要と思われます。
在留資格を取得するためには、申請人が許可要件を充足し、それを証明し、審査官を説得する必要があります。理由書のよって、雇用の必要性、学歴と業務との関連性や会社の概要を説明することによって、説得力を持たせる必要があります。そのため、技術人文知識国際業務ビザの申請においては、申請理由書の作成提出が必要になってきます。
2,技術人文知識国際業務ビザで従事できる業務は何ですか?
下記の表に挙げるように、「技術」の分野では理系の業務、「人文知識」では文系の業務に従事することが認められます。「国際業務」の分野では、外国の文化や感受性を基盤とした仕事に従事することが認められます。
技術 | ・システムエンジニア ・開発・設計技術者 ・研究職 など |
人文知識 | ・営業 ・マーケティング ・経営企画 ・財務・経理 など |
国際業務 | ・通訳・翻訳 ・英会話講師 ・貿易実務 ・デザイナー など |
技術人文知識国際業務ビザを取得するためには、各分野の専門知識や技術を体系的に納めていることを証明する必要があります。したがって、専門的な知識や技術を必要としない単純労働(飲食や小売りの接客、工場のライン工、建設現場作業員など)に、技術人文知識国際業務ビザで従事することは認められません。
3,技術人文知識国際業務ビザの許可要件は何ですか?
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の許可要件は、次の6点となります。
①学歴又は実務経験要件 ②仕事内容が学歴で学んだ内容又は実務経験との関係で関連性があること ③公私の機関(会社等)と申請人との間に契約があること ④会社の継続性・安定性(経営状態) ⑤日本人と同等以上の報酬 ⑥素行善良 |
①学歴又は実務経験要件
学歴要件として大学又は日本の専門学校を卒業している必要があります。大学は大学院・短大も含み国内外を問いません。専門学校は日本の専門学校に限られ専門士を取得している必要があります。
実務経験要件は10年の経験が必要です。ただし「国際業務」に限っては3年の実務経験があれば足ります。実務経験の立証は難しく在職証明を取り寄せることが不可欠です。転職等を繰り返し、在職証明をとれない場合は立証が不可能と思われます。
②仕事内容が学歴で学んだ内容又は実務経験との関係で関連性があること
学歴要件と仕事内容との関連性は、卒業証明書や成績証明書の履修内容と仕事内容に関連性があることが必要です。仕事内容を理由書で説明し学校での履修内容との関連性を卒業証明書や成績証明書を用いて立証していく必要があります。実務経験と仕事内容との関連性は、在職証明や実績を示す資料で立証していきます。
③公私の機関(会社等)と申請人との間に契約があること
会社と申請人との間に雇用契約が結ばれていることです。派遣契約や請負契約も含みます。契約は継続的なものでなければならず、在留活動が継続して行われることが見込まれることが必要となります。公私の機関には法人のみならず、個人であっても,本邦で事務所,事業所等を有する場合は含まれます。
④会社の継続性・安定性(経営状態)
会社の経営に安定性と継続性が認められることが必要です。会社の決算書を入管に提出する必要があります。
赤字の場合でも許可が認められる可能性はあります。しかし、審査が厳しくなることは避けられません。中小企業診断士など企業評価能力のある専門家の鑑定書や事業計画書を提出し将来性を立証する必要があります。新設会社で決算書を提出できない場合は事業計画書を提出することとなります。
⑤日本人と同等以上の報酬
報酬は労働の対価として受け取る給付を意味し、手当は含まれません。報酬額は業界・業種や会社にもよりますので明確な基準はありませんが、同じ仕事をする日本人従業員と同等以上であることが必要です。外国人を理由に報酬額を下げることは消極的要素となります。
⑥素行善良
前科前歴がないことです。交通違反も含みます。オーバーステイやオーバーワークも不利に働きます。該当する方は「反省文」を書きましょう。
4,技術人文知識国際業務ビザの理由書には何を書けば良いですか?
技術人文知識国際業務ビザの理由書では、申請人が従事する業務が上記2で検討した技術人文知識国際業務に該当すること、また申請人や会社が上記3で検討した許可要件を充足していることを説明していくことが重要となります。以下詳しく検討していきます。
(1)申請人の業務内容
技術人文知識国際業務ビザを取得するためには、申請人が従事する予定の業務が、上記2で検討した技術人文知識国際業務で認められた業務の範囲内であることが必要です。上記3の許可要件を充足していても、従事する業務が技術人文知識国際業務では認められない単純労働などの場合は、許可は下りません。
そこで、理由書では申請人がどんな業務に従事する予定であるか説明してきます。従事する予定の業務が技術人文知識国際業務ビザで認められた業務であることを説明します。そして、申請人の経歴や能力、会社の事業内容などの説明と合わせて、雇用の必要性があることに説得力を持たせていくことが重要です。
(2)学歴要件や職歴要件に関する事項
上記3①で検討した通り、技術人文知識国際業務ビザを取得するためには、学歴要件又は職歴要件をクリアする必要があります。そのため、学歴要件又は職歴要件を充足していることを説明するため、申請人の最終学歴から現在までの職歴を説明していきます。
また上記3②で検討した通り、学歴又は職歴と従事する予定の業務との間には関連性があることが必要です。上記4(1)で説明した業務内容と関連性があることを説明します。業務内容と関連する学歴や職歴があることで、業務を遂行する能力があることに説得力を持たせます。
(3)会社の事業内容や概要
上記3④で検討した通り、技術人文知識国際業務ビザを取得するためには、会社の継続性や安定性が要求されます。審査官は、企業の安定性に注目して審査します。会社のパンフレットやホームページの写しを提出するなどと共に、過去から現在そして今後の事業展開を説明していきます。これらを説明することによって、会社の継続性や安定性に関して説得力を持たせることが必要です。
(4)日本語能力
日本で就労する以上は、一定程度の日本語能力があることが必要となります。それぞれの業務に必要な日本語能力があることを説明します。特に翻訳や通訳の業務に従事する場合は、日本語能力は重視されます。翻訳や通訳業務を遂行できる日本語能力があることを証明する学歴や職歴、資格などを説明します。日本語能力検定N1などの資格がある場合は説得力が増します。
(5)採用理由
採用理由においては、上記(1)~(4)で説明した業務内容、学歴又は職歴、業務と学歴との関連性、会社の事情内容を踏まえて、会社の事業運営において、申請人の能力が必要であることを説明します。審査官に対して雇用に至った経緯や雇用の必要性をアピールして説得力を持たせます。
5,理由書を書く際に注意する点は何ですか?
技術人文知識国際業務ビザの申請理由書は、在留資格該当性や許可要件を充足していることを説明し説得力を持たせるために提出するものです。この観点から、以下では理由書を書く際の注意点を検討していきます。
(1)業務内容と学歴又は職歴との間に関係性を持たせること
これまで検討した通り、技術人文知識国際業務ビザを取得するためには、学歴又は職歴と業務内容との間に関連性があることが必要です。大学等での履修内容と関連性のない業務に従事する場合や、従事する業務と関する職歴がない場合は技術人文知識国際業務を取得することができません。よって、申請理由書で記載する学歴や職歴、業務内容との間には関連性を持たせることを意識して記載していくことが重要です。
(2)雇用の必要性を明確にする
雇用の必要性を明確にしていく必要があります。技術人文知識国際業務ビザの許可要件は充足していることを前提として、申請人が業務を遂行する上で必要な知識や技術を有していること、従事する業務には専門的な知識や技術が必要であることを説明し、雇用の必要性を明確にして説得力を持たせることが必要です。
(3)「どんな外国人が」「どんな会社で」「どんな業務をするか」を明確にする
技術人文知識国際業務ビザの審査では、「どんな外国人が」「どんな会社で」「どんな業務をするか」が審査されます。そこで、「どんな外国人が」「どんな会社で」「どんな業務をするか」を明確にする観点から、業務内容や学歴又は職歴、会社の事業内容を記載していくことが重要です。審査官は以下の点について、判断することになるため、この点を注意して「どんな外国人が」「どんな会社で」「どんな業務をするか」を明確して説明していく必要があります。
・業務内容が専門的な知識や技能が必要なものであること ・業務内容と申請人の学歴や職歴で得た知識・技能は一致していること ・申請人の業務量が十分あること(1日8時間、週40時間) ・報酬は日本人と同等額以上であること |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |