目次
1,フィリピンのMWO(旧POLO)申請とは何ですか?
フィリピンのMWO申請とは、フィリピン人が「海外雇用許可証」(OEC(Overseas Employment Certificate))を取得するために必要な手続きのことです。フィリピン人を雇用する際には、フィリピン人がOECを取得している必要があります。海外で働くフィリピン人がOECを取得していない場合は、フィリピン人はフィリピンを出国することができません。
このMWO申請は、フィリピン人を本国から採用する場合に限らず、留学ビザなど何らかの在留資格をもって日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合も必要となります。フィリピン人がOECを取得していない場合でも、適切な就労ビザを取得している場合は、日本で就労しても日本の法律上は何ら問題ありません。しかし、OECを取得しないで日本で就労しているフィリピン人がフィリピンに一時帰国した場合は、フィリピンから出国することができなくなります。日本の法律上は問題がない場合でも、フィリピンの法律がフィリピンでは適用されます。
OECを取得するためには、雇用主がDMW(フィリピン移住労働省(Department of Migrant Workers))システムへ登録されている必要があります。そして、雇用主がDMWシステムへ登録されるためには、MWO申請を事前に行い承認される必要があります。
2,DMWシステムとは何ですか?
上記1で検討した通り、OECを取得するためには、MWO申請を行いDMWシステムに雇用主が登録されている必要があります。このDMWシステムには、DMW「雇用主の情報」と「有効な(有効期限が切れていない)Job Oder」の両方が登録されることになります。このDMWシステムに登録されると、「Position」を選択して検索することによって、「雇用主の情報」と「Job Order」の状況が表示されることになります。
DMW Registration/Accreditation ・DWMシステムに雇用主の情報を登録すること Job Order/Manpower Request ・DMWに求人票を登録すること |
3,どんな場合にMWO申請が必要になりますか?
基本的には、フィリピン人を雇用する会社や団体は全てMWO申請を行うことが必要となります。以下では、既に日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合とフィリピン在住のフィリピン人を雇用する場合とに分けて検討します。
(1)既に日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合
フィリピン人留学生など、何らかの在留資格をもって日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合も、在留資格によってはMWO申請とOEC取得が必要になります。以下の在留資格のフィリピン人を雇用する場合は、MWO申請が必要になります。
例えば、フィリピン人留学生を通訳翻訳などで採用した場合は、技術人文知識国際業務への在留資格変更許可申請とMWOへの申請が必要になります。MWOへ申請していない場合は、フィリピンに一時帰国したら出国することが出来なくなります。
MWO申請の有無 | 代表的な在留資格 |
MWO申請が必要な在留資格 | ・高度専門職、技術人文知識国際業務、特定技能など就労が認められる在留資格(ただし、企業内転勤を除く) ・就労が許可された特定活動 |
MWO申請が不要な在留資格 | ・企業内転勤 ・永住者、定住者、日本人の配偶者等といった身分・地位に基づく在留資格 ・就労が許可されていない特定活動 |
(2)フィリピン在住のフィリピン人を雇用する場合
①原則として送出し機関から雇用
フィリピン政府は、原則として外国企業によるフィリピン人の直接雇用を禁止しています。よって、フィリピン人を採用する場合は、フィリピン政府の許可を受けた現地の送出し機関を介することがほとんどです。
このフィリピン政府公認の送出し機関のことを、PRA(Philippine Recruitment Agency)といいます。日本企業がフィリピン人を雇用する際には、まずPRAを探して契約することから始まります。このPRAはDMWの公式ホームページから検索することが出来ます。
このRPAと契約を締結した後にMWO申請を行い、DMWシステムに登録されるとPRAがフィリピン人の募集活動を行うことになります。
②直接雇用が認められる例外
なお、専門家や熟練労働者などは、一部の特例によって直接雇用が許可されています。しかし、しかし、年齢や資格、学歴などの本人要件や、受入企業に対しても、給与や福利厚生といった雇用契約内容に関する規定や雇用人数の制限があります。こうした要件を充足した場合のみ例外的に直接雇用が認められており、この要件を満たすことは簡単ではないため、ほとんどの場合が送出し機関経由でフィリピン人雇用を行うことになります。
4,MWO申請はどんな流れになりますか?
MWO申請からOEC取得して日本で就労を開始する場合は、以下の手順を踏むことになります。
①送出し機関(PRA)の選定 | DMWのウェブサイトからフィリピン政府公認の認定送出し機関(PRA)を検索する |
②Recruitment Agreement(RA)を締結 | フィリピン政府公認の送出し機関(PRA)とRecruitment Agreement(RA)を締結。締結したRAは、日本の公証役場で手続きが必要(アポスティーユは不要)。 |
③MWOへ申請書類の提出(書類審査) | 所定の様式に則って申請書類を作成し、MWO東京またはMWO大阪に提出。審査結果は通常15営業日以内に連絡がある。 |
④MWO申請の承認 | MWOによる書類審査の結果、フィリピン人材を受け入れる企業として適正であると判断された場合のみ、MWOの承認印が押印された提出書類一式が雇用主に返送される。 |
⑤DMWシステムへの反映 | MWOで承認された提出書類一式をフィリピン政府公認の認定送出し機関(PRA)に転送。PRAがDMWシステムへMWO承認情報が反映されたことを確認する。 |
⑥人材募集・面接 | DMWシステムへMWO承認情報が反映された後、PRAはフィリピン人材の募集活動を開始することが出来ます(DMWシステムへの反映が確認できるまで募集活動を行うことが出来ません)。雇用主は、候補者が集まり次第、現地に赴くもしくはオンラインにて面接を実施します。 |
⑦在留資格認定証明書交付申請 | 面接内定者の在留資格認定証明書交付申請を地方出入国在留管理局へ行う。在留資格が認定されると、在留資格認定証明書(COE)が交付される。 |
⑧査証(ビザ)発給申請 | 在留資格認定証明書(COE)の原本をフィリピンに転送。就労者本人がフィリピン日本大使館に出向き、在留資格認定証明書(COE)の原本とパスポートを提出することで査証(ビザ)発給申請を行う。査証(ビザ)が発給されると、パスポートに捺印が行われる。 |
⑨PDOSの受講 | 就労を目的としてフィリピンを出国するためには、OWWA(フィリピンの海外労働者福祉庁)が実施する出国前オリエンテーション(PDOS/Pre-Departure Orientation Seminar)を受講する必要があります。申込手続きはPRAを通じて行い、PDOS受講時にOWWA受講時にOWWAメンバーシップへの登録手続きも行います。 |
⑩出国前健康診断の受診 | 原則として、フィリピンの医療機関で出国前の健康診断受診が必要です。申込手続きはPRAを通じて行います。査証(ビザ)発給申請と出国前オリエンテーションの受講および健康診断の受診は同時並行で行うことが可能です。 |
⑪BM Onlineのアカウント作成 | BM Online(Balik-Manggagawa Online Processing System)のアカウントを作成し、個人情報(顔写真を含む)やEメールアドレスの登録を行う。BMはカタログ後のバリクマンガガワの略であり「復帰労働者」を意味しています。 |
⑫OEC発行申請 | 査証(ビザ)が発給され、出発前オリエンテーション及び健康診断を終えた後、就労者本人がBM Onlineからアカウントを作成し、OEC(海外雇用許可証)発行申請を行います。DMWにOEC発行手数料(オンライン決済が可能)を支払うことにより、BM OnlineからOECをPDFで出力することが可能になります。発行されたOECは、フィリピン出国時の出国審査で提示する |
⑬OEC発行 | OEC発行手数料の納付が確認されると、BM OnlineからOECの印刷が可能になります。出国審査のカウンターでプリントアウトいたOECを提示すれば就労を目的としてフィリピンから出国することが出来ます。なお、OECの有効期限は60日間となっているため、60日以内にフィリピンを出国する必要があります |
⑭フィリピン出国 | 航空券や宿泊施設の手配に加え、必要最低限の生活備品の購入など、フィリピン人材を受け入れるための準備を進める。入国する空港又は港での入国審査で、在留資格認定証明書と査証が貼られたパスポートを提示し、無事審査が終わると在留カードが渡される。 |
5,フィリピンに一時帰国したのち再入国する場合はどうなりますか?
日本で就労を開始した後にフィリピンに一時帰国し再入国する場合は、以下の手順を踏むことになります。
(1)再入国の手順
①日本での就労を開始した後、(帰省等で)フィリピンへ一時帰国 | OECの有効期限は60日間です。そのため、日本で就労を開始して1年経過した後、OECの免除申請を行わず、再入国許可(みなし再入国許可を含む)制度を利用してフィリピンに一時帰国してしまうと、OECの有効期限切れ状態になるためフィリピンを出国することが出来なくなります。日本を出国する前にOECの免除申請が必要です。 |
②OEC免除申請 | 日本で一定期間就労した後、再入国許可(みなし再入国許可を含む)制度を利用してフィリピンへ一時帰国を希望する場合は、再入国許可申請に加え、OEC免除申請が必要です。日本を出国する前に、BM Onlineから必要な手続きを行うことで、OEC免除証明書をBM Onlineから出力することが出来るようになります。 |
③日本に戻って就労再開 | フィリピン出国時の出国審査でOEC免除証明書を提示する事で問題なく出国することが出来ます。ただし、OEC免除申請は、日本を出国する前後において「同一雇用主かつ同一就労場所に戻る場合」にのみ適用される制度です。雇用主が変更になる場合や就労場所が変更となる場合は、新たにOECの取得が必要になります。 |
(2)OEC免除申請
基本的にOECはフィリピンを出国する度に必要になります。もっとも、OEC免除申請を行うことによって再取得することが免除されます。
OEC免除申請とは、既に取得した有効期限切れのOECを、一定の条件を満たしていることを理由に再取得するための手続きを免除する申請です。OECの取得自体が免除される手続きではありません。OEC自体を取得しないでフィリピンを出国することはできません。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザの申請・取得サポート|ビザ申請サポートNavi東京 【加納行政書士事務所】 (visasupportnavi.net) 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |