目次
1,留学ビザとは、どんなビザですか?
留学ビザとは在留資格「留学」のことで、外国人が中長期の期間日本の教育機関で教育を受ける場合に必要なビザとなります。入管法は教育ビザに関し「本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編成に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動」(入管法別表第1の4)と定め、外国人が日本の教育機関で教育を受ける活動を認めています。
2,留学ビザで就労できますか?
上記1で検討した通り、留学ビザの目的は日本の教育機関で教育を受ける活動です。したがって、留学ビザでは原則として就労は認められていません。適切な就労ビザに変更することなく、留学ビザの外国人が就労した場合は不法就労となります。入管法は、不法就労を罰則をもって禁止しており、これに違反した場合は在留資格の取り消しや退去強制処分に処される可能性もあります。
もっとも、「資格外活動許可」を取得した場合は、週28時間以内の就労が認められています。例外として、夏休みなどの長期休暇の時間は1日8時間・週40時間が認められています。留学生がアルバイトなどで就労する際には、この「資格外活動許可」を取得する必要があります。
3,資格外活動許可とは何ですか?
活動制限のない身分系の在留資格(永住者や日本人の配偶者等など)を除いて、留学ビザをはじめ、ほとんどの在留資格には認められる活動内容に制限があります。上記2で検討した通り、留学ビザや家族滞在ビザでは、就労そのものが原則として認められていません。このように、活動範囲が定められた在留資格を有している外国人が、認められた活動範囲を超える活動を行うことを希望する場合に取得する許可が、「資格外活動許可」となります。
資格外活動許可には、以下のように「包括許可」と「個別許可」の2種類に分けられます。
・包括許可 「1週間のうち28時間以内」という条件付きで、逐一勤務先等の指定がされない、包括的な資格外活動が許容される許可 |
・個別許可 予定する資格外活動が、上記の包括許可の時間制限を超える場合や客観的に稼働時間の管理が困難な場合等に取得する許可。活動先の機関名や活動期間等が個別に指定され、指定された範囲内のみでの資格外活動が許容される。 |
留学生がアルバイトをする際に必要となる資格外活動許可は、「包括許可」となります。
4,資格外活動許可の要件は何ですか?
上記の「資格外活動許可」のうち、留学生がアルバイトをする場合に必要な許可は「包括許可」となります。そして、資格外活動許可(包括許可)を取得するためには、以下の要件を充足している必要があります。
「包括許可」の要件
・現在持っている在留資格の活動を妨げないこと ・現在持っている在留資格の活動を維持していること ・法令(刑事・民事を問わない)に違反しないこと ・風俗営業関連の事業に従事しないこと ・収容令書や意見聴取通知書などを受けていないこと ・素行は不良でないこと ・公私の機関との契約に基づいて在留資格に該当する活動を行っている者は、当該機関が資格外活動を行うことについて同意していること |
5,留学生を雇用する場合に気を付ける点は何ですか?
(1)在留カードと学校に在籍していることの確認
留学生は資格外活動許可を取得した場合は就労することも認められますが、上記4で検討した通り本来の在留資格に基づく活動を行っていることが条件です。よって、留学生を雇用する場合は、留学ビザが有効であるか確認する必要があります。留学ビザが失効している場合は、就労をすることはできません。また、学校に在籍していない場合も就労をすることはできません。在留カードの期限が切れているにもかかわらず就労した場合は、不法就労となります。学校に在籍していない場合も同様です。
入管法は不法就労を罰則をもって禁止しており、違反した場合は雇用主も不法就労助長罪(最長3年の懲役、最大300万円の罰金)に問われます。このような不利益を避けるためにも、留学生を雇用する場合は、在留カードが有効であること、学校に在籍していることを確認する必要があります。
(2)資格外活動許可の確認
資格外活動許可は申請しないと取得することはできません。留学ビザを持っているからといって、当然に資格外活動許可を取得しているわけではありません。留学生を雇用する場合は、資格外活動許可を取得しているか確認する必要があります。
資格外活動許可を得ているか否かの確認は、在留カードとパスポートを確認することによって可能です。資格外活動許可を取得している場合は、在留カードの裏面に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」というスタンプが押してあります。また、パスポートには資格外活動許可の紙が貼られています。
(3)就労時間(週28時間以内)の管理
資格外活動許可で認められる就労時間は、週28時間以内です。具体的には、各日にちを起算点として連続する7日間で28時間以内です。例外として、夏休みなどの長期休暇の期間は、1日8時間・週40時間就労することが認められます。留学生を雇用する場合は、雇用主はこの就労時間の管理を徹底する必要があります。上記制限を1分でも超えて就労した場合は、不法就労となります。
(4)ダブルワークしていないか確認
資格外活動許可で認められた週28時間の就労時間を超えるオーバーワークは、不法就労となることは上記で検討しました。そして、留学生が2つアルバイトを掛け持ちしていた場合は、2つのアルバイトを合わせた就労時間が週28時間以内である必要があります。ひとつのアルバイトにつき週28時間以内ではありません。
2つのアルバイトを合わせ週28時間以内の就労時間を超えた場合は、1つのアルバイトが28時間以内であっても不法就労となります。この場合は、2つのアルバイト先の雇用主の各々が不法就労助長罪に問われます。このような不利益を避けるためには、ダブルワークの確認やダブルワークをしないことの誓約書を用意する、などが重要です。
(5)外国人雇用状況の届出
外国人を採用した場合や退職した場合は、外国人雇用状況の届出を行う必要があります。外国人留学生をアルバイトで雇用した場合も同様に必要となります。提出期限は、勤務開始の翌月末となります。例えば、4月1日が勤務開始なら5月31日までに届出を提出する必要があります。
この外国人雇用状況の届出は、雇用主に義務づけられています。違反した場合(不届や虚偽の届出)は、30万円以下の罰金(外国人1人につき)が科される可能性があります
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |