1,配偶者ビザ外国人の永住許可要件は緩和されますか?

 配偶者ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」)を保有している、日本人と結婚した外国人配偶者は、就労ビザなどを有している外国人が永住申請する場合と比べ、許可要件が緩和されています。本稿では以下、配偶者ビザ外国人が永住申請する場合の許可要件について検討していきます。

なお、確かに配偶者ビザ外国人の場合は永住許可要件が緩和されていますが、永住申請の審査が緩くなるわけではありません。許可要件を充足していることを、十分な立証資料を提出して証明していく必要があることは、他の在留資格から永住申請する場合と異なりません。

2,配偶者ビザ外国人の永住許可要件は何ですか?

「要件1」実態を伴った結婚生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること

 永住許可要件の1つに居住要件というものがあります。この居住要件を充足するためには、原則として「引き続き10年以上」日本に住居を有していることが必要です。これに対し、在留資格「日本人の配偶者等」を有している外国人の場合は、3年以上の「実態を伴った婚姻生活」がある場合は、1年以上日本に引き続き在留している場合は、居住要件を充足することが出来ます。なお、日本人の実子の場合は、1年以上引き続き日本に在留している場合は、居住要件を充足することが出来ます。

①「実態を伴った婚姻生活」

 配偶者ビザ外国人が永住許可要件の緩和を受けるためには、実態を伴った婚姻生活を送っている必要があります。この実態を伴った婚姻生活とは、同居を伴う婚姻生活を意味します。したがって、法律上結婚はしているが、別居しているなど婚姻の実態が認められない場合は該当しません。

実態を伴った婚姻生活がない場合は、永住申請はもちろん配偶者ビザの更新も不許可になります。なお、夫婦の双方に仕事があり、一方が単身赴任する必要があるなど、別居に合理的な理由がある場合は、この限りではありません。

②就労ビザで婚姻生活を3年以上継続し引き続き1年以上日本に住んでいる場合

 日本人と結婚し、婚姻生活を3年以上継続し引き続き1年以上日本に住んでいるが、配偶者ビザを取得しないで就労ビザで日本に在留している場合でも、実態を伴った結婚生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること、という居住要件を満たすことは可能です。

「要件2」配偶者ビザが最長の在留期間であること

 配偶者ビザの在留期間は最長5年ですが、当面の間は在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱うこととする、と入管は運用しています。よって、在留期間が「3年以上」であれば永住申請することが可能です。

「要件3」世帯収入が安定していること

 永住許可要件の1つに独立生計要件があります。この独立生計要件は、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有することを要求しています。そして、この独立生計要件を充足しているか否かは、世帯収入をもって判断されます。

 なお、入管の永住申請ガイドラインでは、配偶者ビザ外国人が永住申請する場合は、この独立生計要件は要件とされていませんが、実際上は世帯年収が低い場合は不許可となる可能性となる可能性が高くなります。

①必要な世帯年収

 独立生計要件を充足するために必要な年収額について明確な規定はありません。実務上は、独立生計要件を充足するために必要な年収は、最低でも単身者で300万円、扶養者がいる場合は1人当たり+30万円と考えられています。例えば、扶養者が2人いる世帯の場合は、300万+30万×2=360万円の年収が最低でも必要ということになります。この生計要件は申請前3年以上継続して満たしていることが必要です。

②世帯年収の範囲

 世帯年収の範囲に入れることが出来るのは、扶養に入っていない家族の年収です。つまり、夫婦の双方が働いているが、一方が他方の扶養に入っている場合は、扶養に入っている者の収入は世帯年収に数えることが出来ません。例えば、被扶養者がアルバイトで収入を得ている場合は、アルバイト収入を世帯年収に入れることはできません。

③外国人配偶者が専業主婦(主夫)の場合

 単身の外国人が永住申請する場合は、外国人本人が生計要件充足に必要な収入を得ている必要があります。日本人の外国人配偶者の場合は、永住申請の生計要件は世帯年収によって判断されるため、申請人である外国人に収入がない場合でも、日本人配偶者が収入要件を満たすことが出来るのであれば問題ありません。

「要件4」公的義務(年金・税金・健康保険等)を適正に履行していること

 永住申請が許可されるためには、公的義務(年金・税金・健康保険等)を適正に履行していることが必要です。適正に履行しているといえるためには、未納がないことはもちろんのこと、滞納もないことが必要です。滞納があった場合は、後から納付した場合でも、公的義務を適正に履行しているとは認められません。

①会社経営者や個人事業主の場合

 会社員の場合は、給料から天引きされるため問題となることは少ないです。しかし、会社経営者や個人事業主の場合は、自身で確定申告や年金・健康保険の支払いを行う必要があるので、注意が必要です。また会社経営者の場合は、自身の公的義務の履行状況のみではなく、経営する会社の法人税などの公的義務を適正に履行している必要があります。

②未納滞納がある場合

 公的義務(年金・税金・健康保険等)の履行状況については、直近3年間の支払い状況が審査の対象となります。よって、未納滞納がある場合は、その時点から3年間は永住申請しても許可の可能性はありません。未納滞納がなくなった時点を起算点として3年経過してから永住申請する必要があります。

「要件5」公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこととは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症などに感染していないことを意味します。

「要件6」素行善良であること

 素行善良とは、犯罪行為などによる罰金刑や懲役刑などを受けていないことを意味します。また、この素行善良要件の審査では、交通違反も審査の対象となります。過去5年間に5回以上の軽微な交通違反がある場合は、素行善良であるとは認められません。飲酒運転など重大な交通違反の場合は、1回でアウトです。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」  
同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  
明治大学法科大学院修了  
「専門分野」  
入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法