目次
1,DMW(旧POEA)とは何ですか?
DMWとはフィリピン移住労働省(Department of Migrant Workers)のことで、頭文字をとった略称です。DMWはフィリピン国外で就労するフィリピン人の権利保護や福利厚生の促進を目的としたフィリピン国家機関です。かつては旧POEAが同じ役割を担っていましたが、2022年のフィリピン省庁再編により、POEAを含む7つの機関がDMWに統合されました。
日本企業がフィリピン人を雇用する際には、下記MWOを通してDMWに適正な雇用主をして認定を受ける必要があります。
2,MWO(旧POLO)とは何ですか?
MWO(旧POLO)とは移住労働者事務所のことで、上記DMWの海外出先機関のことです。日本にはMWO東京(在東京フィリピン共和国大使館 移住労働者事務所)とMWO大阪(大阪フィリピン総領事館 移住労働者事務所)の2つがあります。
DMWの日本出先機関であるMWO東京・大阪は、日本で働くフィリピン人の権利保護を目的としています。したがって、日本企業がフィリピン人を雇用する際には、原則としてMWOに申請することが必要です。
3,OECとは何ですか?
OECとは、海外雇用許可証(Overseas Employment Certificate)のことで、フィリピン人はこのOECがない場合は、フィリピン国外で働くことが出来ません。このOECを取得するためには、上記2のMWOへ申請が必要になります。
OEC申請には、DMWのシステムに適正な雇用主として、日本企業の情報が登録されている必要があります。そして、DMWシステムに登録されるためには、MWOに登録の申請をする必要があります。
日本企業がフィリピン人を雇用するためには、OECを取得するために、これらの手続きが不可欠となっています。なお、OECの有効期限は60日です。
4,OEC免除申請とは何ですか?
OECは海外で就労するフィリピン人が出国するたびに取得が必要になります。OEC免除申請をしていない場合は、フィリピンに一時帰国するたびにOECを取得することになります。そこで、一度OECを取得したフィリピン人が一時国する際には、OEC免除申請を行う必要があります。
OEC免除申請は、有効期限の切れたOECと照合する必要があるため、フィリピン人本人がBM Onlineから行います。もっとも、OEC免除申請は出国時と同じ雇用主であり就業場所も同じ場合のみ行うことが出来ます。雇用主や就業場所が変わっている場合は、再度OECを取得しないと出国できません。
5,フィリピン人を直接雇用できますか?
(1)原則として送出し機関から雇用
フィリピン政府は、原則として外国企業によるフィリピン人の直接雇用を禁止しています。よって、フィリピン人を採用する場合は、フィリピン政府の許可を受けた現地の送出し機関を介することがほとんどです。
このフィリピン政府公認の送出し機関のことを、PRA(Philippine Recruitment Agency)といいます。日本企業がフィリピン人を雇用する際には、まずPRAを探して契約することから始まります。このPRAはDMWの公式ホームページから検索することが出来ます。
(2)直接雇用が認められる例外
なお、専門家や熟練労働者などは、一部の特例によって直接雇用が許可されています。しかし、年齢や資格、学歴などの本人要件や、受入企業に対しても、給与や福利厚生といった雇用契約内容に関する規定や雇用人数の制限があります。こうした要件を充足した場合のみ例外的に直接雇用が認められており、この要件を満たすことは簡単ではないため、ほとんどの場合が送出し機関経由でフィリピン人雇用を行うことになります。
6,フィリピン在住のフィリピン人雇用はどうすれば良いですか?
フィリピン在住のフィリピン人雇用は、以下の手順で進むことになります。
①DMWの公式ホームページから送出し機関を探し契約を結ぶ ↓ ②申請書類を作成し、MWO東京またはMWO大阪に承認申請 ↓ ③MWOの審査を通過したら、MWOの承認印が押印された提出書類が返却される ↓ ④MWOで面接 ↓ ⑤面接に通過したら、返却された書類一式を送出し機関に提出する 送出し機関を通してDMWシステムに情報が登録される DMWの認証印が押印された書類が返却される ↓ ⑥DMWシステムに情報が反映された後、送出し機関がフィリピン人の募集を開始 ↓ ⑦候補者を現地またはオンラインで面接 ↓ ⑧内定者が決まったら、在留資格認定証明書交付申請 ↓ ⑨交付された在留資格認定証明書(COE/Certificate of Eligibility)の原本をフィリピン人に郵送 ↓ ⑩申請人本人(フィリピン人)が在フィリピン日本国大使館で査証申請 ↓ ⑪フィリピン人が送出し機関に申請し、海外労働福祉庁実施の出国前オリエンテーションの受講 ↓ ⑫フィリピン人が送出し機関に申請し、出国前健康診断の受信(ビザの発給、出国前オリエンテーション、健康診断は同時進行可) ↓ ⑬フィリピン人本人がBM Online(Balik-Manggagawa Online Processing System)のアカウントを作成し、OEC発行の申請(在留資格によっては、送出し機関を通して申請)、 ↓ ⑭OEC発行後、フィリピン人本人が出国審査でOECを提示 ↓ ⑮日本入国 入国審査で在留資格認定証明書とパスポートを提示 審査が終わると在留カード交付(成田、羽田、中部、関西、新千歳、広島、福岡以外の空海港から入国の場合は、後日交付) ↓ ⑯就労開始 |
7,日本在住のフィリピン人雇用はどうすれば良いですか?
フィリピン人留学生など、何らかの在留資格をもって日本に在留しているフィリピン人を雇用する場合も、在留資格によってはMWO申請とOEC取得が必要になります。以下の在留資格のフィリピン人を雇用する場合は、MWO申請が必要になります。
例えば、フィリピン人留学生を通訳翻訳などで採用した場合は、技術人文知識国際業務への在留資格変更許可申請とMWOへの申請が必要になります。MWOへ申請していない場合は、フィリピンに一時帰国したら出国することが出来なくなります。
MWO申請が必要となる在留資格
就労が認められる在留資格(活動制限あり) ・外交 ・公用 ・教授 ・芸術 ・宗教 ・報道 ・高度専門職 ・経営・管理 ・法律・会計業務 ・医療 ・研究 ・教育 ・技術・人文知識・国際業務 ・介護 ・興行 ・技能 ・特定技能 ・技能実習 ・就労が許可された特定活動 |
MWO申請が不要となる在留資格
①就労が認められる在留資格(活動制限あり) ・企業内転勤 ②身分・地位に基づく在留資格 ・永住者 ・日本人の配偶者等 ・永住者の配偶者等 ・定住者 ③就労の可否は指定される活動によるもの ・就労が許可されていない特定活動 |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |