技術人文知識国際業務ビザ(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)で経理や財務の仕事はできますか?

1,技術人文知識国際業務ビザとはどんなビザですか?

(1)概要

 技術人文知識国際業務ビザとは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」」のことで就労ビザの1つです。就労系の在留資格では、もっともポピュラーな就労ビザです。技術人文知識国際業務は、それぞれの分野において専門性が要求される業務に従事することが認められます。そのため、学歴や職歴の要件を満たし、業務に必要な専門的な知識や技術を有していることを証明する必要があります。

 出入国管理及び難民認定法は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」について「理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要する業務に従事する活動」と定め、該当する業務に従事することを認めています。

(2)在留期間

 技術人文知識国際業務ビザでは、以下の期間在留することが認められます。はじめて技術人文知識国際業務ビザを取得した場合は、認められる在留期間は1年となることがほとんどです。更新を繰り返し、在留状況が良好な場合は、3年、5年と認められる在留期間が延びていきます。

・5年
・3年
・1年
・3か月

(3)従事できる業務

 下記の表に挙げるように、「技術」の分野では理系の業務、「人文知識」では文系の業務に従事することが認められます。「国際業務」の分野では、外国の文化や感受性を基盤とした仕事に従事することが認められます。

技術・システムエンジニア
・開発・設計技術者
・研究職 など
人文知識・営業
・マーケティング
・経営企画
・財務・経理 など
国際業務・通訳・翻訳
・英会話講師
・貿易実務
・デザイナー など

 技術人文知識国際業務ビザを取得するためには、各分野の専門知識や技術を体系的に納めていることを証明する必要があります。したがって、単純労働(飲食や小売りの接客、工場のライン工、建設現場作業員など)に、技術人文知識国際業務ビザで従事することは認められません。

2,技術人文知識国際業務ビザの許可要件は何ですか?

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の許可要件は、次の6点となります。

①学歴又は実務経験要件
②仕事内容が学歴で学んだ内容又は実務経験との関係で関連性があること
③公私の機関(会社等)と申請人との間に契約があること
④会社の継続性・安定性(経営状態)
⑤日本人と同等以上の報酬
⑥素行善良

①学歴又は実務経験要件

 学歴要件として大学又は日本の専門学校を卒業している必要があります。大学は大学院・短大も含み国内外を問いません。専門学校は日本の専門学校に限られ専門士を取得している必要があります。

 実務経験要件は10年の経験が必要です。ただし「国際業務」に限っては3年の実務経験があれば足ります。実務経験の立証は難しく在職証明を取り寄せることが不可欠です。転職等を繰り返し、在職証明をとれない場合は立証が不可能と思われます。

②仕事内容が学歴で学んだ内容又は実務経験との関係で関連性があること。

 学歴要件と仕事内容との関連性は、卒業証明書や成績証明書の履修内容と仕事内容に関連性があることが必要です。仕事内容を理由書で説明し学校での履修内容との関連性を卒業証明書や成績証明書を用いて立証していく必要があります。

 実務経験と仕事内容との関連性は、在職証明や実績を示す資料で立証していきます。

③公私の機関(会社等)と申請人との間に契約があること

 会社と申請人との間に雇用契約が結ばれていることです。派遣契約や請負契約も含みます。契約は継続的なものでなければならず、在留活動が継続して行われることが見込まれることが必要となります。

 公私の機関には法人のみならず、個人であっても,本邦で事務所,事業所等を有する場合は含まれます。

④会社の継続性・安定性(経営状態)

 会社の経営に安定性と継続性が認められることが必要です。会社の決算書を入管に提出する必要があります。

 赤字の場合でも許可が認められる可能性はあります。しかし、審査が厳しくなることは避けられません。中小企業診断士など企業評価能力のある専門家の鑑定書や事業計画書を提出し将来性を立証する必要があります。新設会社で決算書を提出できない場合は事業計画書を提出することとなります。

⑤日本人と同等以上の報酬

 報酬は労働の対価として受け取る給付を意味し、手当は含まれません。報酬額は業界・業種や会社にもよりますので明確な基準はありませんが、同じ仕事をする日本人従業員と同等以上であることが必要です。外国人を理由に報酬額を下げるのは消極的要素となります。

⑥素行善良

前科前歴がないことです。交通違反も含みます。オーバーステイやオーバーワークも不利に働きます。該当する方は「反省文」を書きましょう。

3,技術人文知識国際業務ビザで経理や財務の仕事はできますか?

(1)経理や財務の在留資格該当性

 上記1(3)で検討した通り、技術人文知識国際業務ビザで経理や財務の仕事に従事することは認められます。ただし、経理や財務の仕事で技術人文知識国際業務ビザを取得するためには、簿記をはじめ専門的な知識を有していることを証明する必要があります。また、経理や財務の仕事内容についても、単に会計ソフトに入力するだけではなく、簿記などの専門知識を必要とする業務である必要があります。

(2)他の職種から経理財務に職種変更する場合

 上記の通り経理や財務は、技術人文知識国際業務ビザで許容される業務範囲に該当するため、ビザ取得後に、ほかの職種から経理や財務に職種変更することは問題ありません。ただし、在留期間更新許可申請の際には、経理や財務に関する専門知識を有しているか否かが審査されます。そして、更新申請の際に、経理や財務に関する専門知識を有していることを証明できなかった場合は、不許可となる可能性があります。

(3)職種変更と就労資格証明書の取得

 ビザ取得後に職種変更した場合は、ビザ取得時には別の分野の学歴や経歴など専門知識を有していることが審査され確認されてるが、変更した職種に関する学歴や経歴などの専門知識を有しているか否かは審査されていません。そこで、ビザ取得時の職種から経理や財務に職種を変更する際には、「就労資格証明書」を取得することが好ましいと考えます。

 就労資格証明書とは、転職などによって就労ビザを取得した時点での職種から業務内容に変更があった場合に、変更後の業務内容が当該在留資格によって認められた業務であるか否かを審査し、問題がないことを確認する書類です。この就労資格証明書を取得することによって、業務内容変更後の在留期間更新許可申請の際に、すでに変更後の業務内容が保有するビザで従事することが認められていることが証明できるため、更新申請が認められやすくなります。

4,職種変更後の更新の際に注意する点は何ですか?

 上記2で検討した技術人文知識国際業務ビザの許可要件は、在留資格認定証明書申請の際に充足していないとビザを取得することはできないことは当然として、在留期間更新許可申請の際にも充足していない場合は、更新が不許可とされてしまいます。

ビザ取得後に職種を変更する際には、学歴や経歴と変更する業務内容との間に関連性が認められるか注意する必要があります。技術人文知識国際業務ビザで許容された範囲の業務であれば、業務に変更があった場合でも直ちに不法就労となることはありません。しかし、更新申請の際には、業務内容に関連する学歴や経歴など専門知識を有しているか否か審査されます。そして、専門知識を有していることを証明できなかった場合は、更新不許可とされてしまう危険性があります。

 素行要件や会社の安定性などの技術人文知識国際業務ビザに係る要件も同様に、在留期間更新許可申請の際には審査の対象となります。これらの許可要件に係る事項に事情変更が生じた場合には更新申請の際には注意を払って説明していく必要があります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」  
同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  
明治大学法科大学院修了  
「専門分野」  
入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法