1,永住ビザ申請の審査に扶養人数は影響しますか?

 永住ビザの許可要件の1つに、独立生計要件があります。独立生計要件の審査においては、就労ビザの永住ビザ申請人の場合、過去3年分の年収が審査の対象とされ、配偶者ビザの永住ビザ申請人の場合、過去1年分の年収が審査の対象とされます。

 そしてこの年収の審査において、扶養している人数も関係していきます。すなわち、扶養している人間は何人いるのか、どのように扶養しているのか、という事が問題となります。年収は高いが、扶養している人数が増えれば、独立生計に必要な金額は高くなります。また扶養している人数が増えれば、所得税や住民税は安くなります。一方で、納税の面で日本への貢献度が低くなるという側面があります。

 単身者と家族を扶養している場合とでは、必要な生活費は異なってきます。そのため、年収が十分にあれば良いという訳ではなく、永住申請の独立生計要件を充足するために必要な年収額は単身者と家族を扶養している者とでは異なってきます。

2,扶養に入れることができる人は誰ですか?

 自身の扶養者として扶養に入れることができる者は、通常は同居の配偶者や子供になります。もっとも、配偶者や子供であっても、一定の収入を得ている場合は、扶養に入れることはできません。また、同居していない6親等内の血族と3親等内の姻族であっても、扶養する必要が認められる場合は不要に入れることができます。これらの被扶養者が外国に居住している場合であっても、扶養に入れることは可能です。

 近年では、被扶養者と認められるか否かは法改正により厳しくなっています。かつては、家族証明や送金事実がない場合でも扶養に入れることができ、税金対策として悪用されていました。現在では、外国に居住している親族の場合は、親族であることの証明や送金事実の証明などが必要となっています。

3,独立生計要件が満たされるためには、扶養人数が増えた場合どれだけの年収が必要ですか?

 申請人が一人世帯の場合、永住申請の独立生計要件を満たすために必要な年収は300万円を基準とされます。一方、扶養人数が増える場合、1人扶養人数が増えるたびに、年収は60万円から80万円をプラスして考える必要があります。例えば、夫婦2人世帯で妻を扶養している場合、独立生計要件を満たすためには最低でも360万円の年収が必要となります。さらに、夫婦及び子の3人世帯で妻と子を扶養する場合は、120万円プラスの420万円の年収が独立生計要件を満たすために必要となってきます。

4,扶養が適切であるか審査されますか?

 外国籍の方には海外居住の父母や祖父母、さらには兄弟姉妹まで扶養に入れている方もいます。確かに、上記2で検討した通り、扶養に入れることが認められていますが、永住申請との関係では、その扶養が適切な扶養であるか否かは審査の対象となります。

これが税金を非課税とすることを目的としていた場合、その扶養が適正だったのかが問題となります。この場合、海外の親族の就労状況に関する資料や送金記録の提出が求められるなど、厳しく審査されることになると思います。このような適正と言えない扶養状況の場合、海外居住の親族の扶養を外していくことが、永住ビザ申請にあたっては必要となります。

 扶養の必要がない者を扶養に入れている場合や、当初は不要の必要があり送金していたが扶養の必要性がなくなったにもかかわらず扶養を外していない場合は、永住申請前に扶養を外して修正していく必要があります。被扶養者の修正申告は、居住する自治体で行うことができます。また、会社勤務の場合は会社への届出も必要です。

 扶養の必要のない者を扶養に入れ、扶養家族が沢山いる場合は、独立生計要件を充足するために必要な年収額は大きくなり、その他永住申請の審査に悪影響がでることは否定できません。適切な扶養をしていないため不許可になっているケースもあります。したがって、適正な扶養人数を申告し、永住申請を考えている場合は早めに修正することが重要です。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」  
同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  
明治大学法科大学院修了  
「専門分野」  
入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法