目次
1,企業内転勤ビザとは、どんなビザですか?
企業内転勤ビザとは、在留資格「企業内転勤」のことです。企業内転勤ビザは、企業内の人事異動により外国の事業所から日本の事業所に転勤する専門技術者を受け入れ、国際展開する企業活動に対応することを目的としています。「外国の事業所」とは、日本企業の事業所又は外資企業の事業所のどちらでも問題ありません。また、株式会社などの民間企業にとどまらず、独立行政法人等の公的法人も含まれます。
なお、企業内転勤ビザで認められる在留期間は「5年、3年、1年、3月」のいずれかです。付与される在留期間は、申請者の就労予定期間・希望する在留期間・転勤の契約期間・所属機関の規模や安定性などを総合的に審査したうえで決定します。付与される在留期間の決定には、法務大臣に裁量権が与えられています。
2,企業内転勤ビザ外国人が転職した場合はビザ変更が必要ですか?
企業内転勤ビザ外国人が、日本国内の他の会社に転職した場合は「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
上記1で検討した通り、企業内転勤ビザは国境を超えた企業内の異動の必要性に対応するために認められた在留資格です。よって、外国の本店や支店で勤務している外国人を、転勤を目的として日本に招聘することを前提としているため、同一企業内の転勤者の場合に有効な在留資格となります。
企業内転勤ビザ外国人が日本国内の他の会社に転職した場合は、同一企業内の転勤者に該当しなくなります。よって、適切な就労ビザに在留資格を変更する必要があります。企業内転勤ビザで従事することが認められる業務は、技術人文知識国際業務ビザを同じ内容となります。よって、転勤によって業務内容に変化がない場合は、企業内転勤ビザから技術人文知識国際業務ビザに変更します。
3,企業内転勤ビザから変更できるビザは何ですか?
(1)転職先が決まっている場合
企業内転勤ビザの外国人が、日本の他の会社に転職した場合は、企業内転勤に該当しなくなるため、他の適切な就労ビザに変更する必要があります。就労ビザ(就労系の在留資格)は、各在留資格によって従事することが認められている業務が法律上定められています。よって、転職先で従事する予定する業務に対応する就労ビザに変更する必要があります。各就労ビザによって従事することが認められていない仕事に転職した場合は、当該業務を認める在留資格が法律上ないということなので、転職することができず、在留資格該当性が無いということになり、帰国することになります。
なお、企業内転勤ビザで従事することが認められる業務は、技術人文知識国際業務ビザと同じになります。よって、転職によって会社が変わった場合でも、職種に変更がない場合は、企業内転勤ビザから技術人文知識国際業務ビザへ変更することになります。
(2)転職先が決まっていない場合
転職先が決まっていないにもかかわらず、退職した場合は、退職した旨を速やかに出入国在留管理庁に申告しなければなりません。この場合でも、正当性が認められる場合は、ただちに在留資格が取り消されることはありません。正当性が認められる場合とは、自己都合の退職ではない場合やハローワークに通って就職活動をしている場合が該当します。正当性が認められない場合は、在留資格が取り消される可能性があります。また、退職後長期間、転職先が決まらない場合も、在留資格を取り消される可能性があります。
(3)身分系ビザへの変更
永住者や日本人の配偶者等などの身分系ビザへの変更許可要件を充足している場合は、身分系ビザへ変更することも認められます。身分系の在留資格は就労制限がないため、どんな仕事に転職することもできます。
4,企業内転勤ビザから技術人文知識国際業務ビザへ変更する場合の必要書類は何ですか?
企業内転勤ビザと技術人文知識国際業務ビザは認められる業務範囲が共通するため、企業内転勤ビザ外国人が転職した場合は、技術人文知識国際業務ビザへ変更することが一般的です。以下では、企業内転勤ビザから技術人文知識国際業務ビザへ変更する場合の必要書類について検討します。
(1)企業カテゴリー
出入国在留管理庁は、外国人の所属機関(企業など)の規模や性格に応じてカテゴリー分けをしています。各カテゴリーによって、申請に必要となる書類は異なってきます。所属機関カテゴリーは以下の通りです。
カテゴリー1 | 次のいずれかに該当する機関 ①日本の証券取引所に上場している企業 ②保険業を営む相互会社 ③日本又は外国の国、地方公共団体 ④独立行政法人 ⑤特殊法人・認可法人 ⑥日本の国・地方公共団体認可の公益法人 ⑦法人税法別表第1に掲げる公益法人 ⑧高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業) ⑨一定の条件を満たす企業等 |
カテゴリー2 | ①前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収額が1,000万円以上ある団体。個人 ②在留申請オンラインシステムの利用申出の承認を受けている機関(カテゴリー1及び4の機関を除く) |
カテゴリー3 | 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) |
カテゴリー4 | 左のいずれにも該当しない団体・個人 |
(2)必要書類
すべてのカテゴリーで必要となる書類 |
①在留資格変更許可申請書 1通 |
②写真 1葉 |
③パスポート及び在留カード 提示 |
④勤務先が上記カテゴリーのいずれかに該当することを証明する文書 適宜 「カテゴリー1」 ・四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し) ・主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し) ・高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)であることを証明する文書(例えば、圃場金交付決定通知書の写し) ・上記「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(例えば、認定証等の写し) 「カテゴリー2」 ・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) ・在留申請オンラインシステムに係る利用申出の承認を受けていることを証明する文書(利用申出に係る承認のお知らせメール等) 「カテゴリー3」 ・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) ※提出可能な書類がない場合は、カテゴリー4に該当 |
⑤専門学校を卒格し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書 1通 |
⑥派遣契約に基づいて就労する場合(申請人が被派遣者の場合) 申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(労働条件通知書(雇用契約書)等) |
カテゴリー3の必要書類 |
①申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料 いずれか1通 ・労働契約を締結する場合 労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書 ・日本法人である会社の役員に就任する場合 役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し ・外国法人内の日本支店に勤務する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合 地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 |
②申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書 各1通 ・申請に係る技術又は知識を要する職務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書 ・学歴又は職歴等を証明する次のいずれかの文書 A)大学等の卒業証明書又はこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定書(レベル「A」、「B」又は「C」に限る。) B)IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書又は資格証書 ※専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書を添付している場合は不要 C)外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く。)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書 |
③事業内容を明らかにする次のいずれかの資料 いずれか1通 ・勤務先の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が記載された案内書 ・その他の取引先等が作成した上記1に準ずる文書 |
④直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書 1通 |
カテゴリー4の必要書類 |
①申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料 いずれか1通 ・労働契約を締結する場合 労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書 ・日本法人である会社の役員に就任する場合 役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し ・外国法人内の日本支店に勤務する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合 地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 |
②申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書 各1通 ・申請に係る技術又は知識を要する職務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書 ・学歴又は職歴等を証明する次のいずれかの文書 A)大学等の卒業証明書又はこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定書(レベル「A」、「B」又は「C」に限る。) B)IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書又は資格証書 ※専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書を添付している場合は不要 C)外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く。)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書 |
③事業内容を明らかにする次のいずれかの資料 いずれか1通 ・勤務先の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が記載された案内書 ・その他の取引先等が作成した上記1に準ずる文書 |
④直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書 1通 |
⑤前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料 ・源泉徴収の免除を受ける機関の場合 外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料 1通 ・源泉徴収の免除を受けない機関の場合 (ア)給与支払事務所等の開設届出書の写し 1通 (イ)次のいずれかの資料 いずれか1通 ・直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し) ・納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料 |
5,ビザ変更申請はどうすれば良いですか?
在留資格変更許可申請の手順 |
①転職先と雇用契約 ↓ ②書類の収集と作成 ↓ ③住所地の管轄する出入国在留管理官署で在留資格変更許可申請 ↓ ④審査 ↓ ⑤許可不許可の結果通知 |
申請先 |
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署 |
申請時期 |
在留資格変更許可申請の標準処理期間(平均的な審査期間)は、2週間から1か月とされています。しかし、あくまで平均的な審査となるので、長い時は2か月以上の審査期間を必要とする場合もあります。転職後でも、ビザ変更が許可されるまでは、就労することは認められません。よって、転職が決まったらすぐに在留資格変更許可申請を行うことが好ましいと考えます。 |
6、企業内転勤ビザで他の会社で働いたらどうなりますか?
上記で検討した通り、企業内転勤ビザは同一企業内の転勤者に認められたビザです。よって、転職して勤務する会社が変わった場合は、在留資格の変更が必要となります。ビザの変更が許可される前に転職先で就労した場合は、たとえ職種に変更がなかった場合でも資格外活動となります。入管法は、資格外活動違反に対しては罰則を定めています。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |