目次
1,企業内転勤ビザとは、どんなビザですか?
企業内転勤ビザとは、在留資格「企業内転勤」のことです。企業内転勤ビザは、企業内の人事異動により外国の事業所から日本の事業所に転勤する専門技術者を受け入れ、国際展開する企業活動に対応することを目的としています。「外国の事業所」とは、日本企業の事業所又は外資企業の事業所のどちらでも問題ありません。また、株式会社などの民間企業にとどまらず、独立行政法人等の公的法人も含まれます。
なお、企業内転勤ビザで認められる在留期間は「5年、3年、1年、3月」のいずれかです。付与される在留期間は、申請者の就労予定期間・希望する在留期間・転勤の契約期間・所属機関の規模や安定性などを総合的に審査したうえで決定します。付与される在留期間の決定には、法務大臣に裁量権が与えられています。
2,企業内転勤ビザの「転勤」の範囲は何ですか?
企業内転勤ビザは、企業内の異動の必要性に対応するために認められたビザです。よって、企業内転勤ビザを取得するためには、「転勤」と認められる必要があります。企業内転勤ビザの「転勤」と認められるためには、異動する会社間に資本的な関連性があることが必要です。「転勤」と認められる場合であれば、同一会社内での異動のみならず、子会社などの系列会社への出向も含みます。会社間の異動の場合は、会社間に資本的関係性がある必要があります。具体的には、以下の会社間での異動が「転勤」に該当します。
①本店(本社)と支店(支社、営業所、事業所)間の異動 ②親会社と子会社間の異動 親会社が子会社の議決権の過半数を有している場合が該当します。 ③親会社と孫会社間の異動 ひ孫会社は原則として含まれません。もっとも、親会社からひ孫会社まで一貫した100%の出資がある場合は子会社と見なされます。 ④子会社と孫会社間の異動 ひ孫会社については③と同様です。 ⑤子会社間の異動 ⑥孫会社間の異動 ⑦関連会社への異動 関連会社と認められる為には、議決権の20%以上を有している必要があります。子会社の関連会社は含みません。また、関連会社間の異動は含みません。 |
3,企業内転勤ビザ外国人が転職した場合に必要な手続きは何ですか?
企業内転勤ビザ外国人が、日本国内の他の会社に転職した場合は「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
上記1で検討した通り、企業内転勤ビザは国境を超えた企業内の異動の必要性に対応するために認められた在留資格です。よって、外国の本店や支店で勤務している外国人を、転勤を目的として日本に招聘することを前提としているため、同一企業内の転勤者の場合に有効な在留資格となります。
企業内転勤ビザ外国人が日本国内の他の会社に転職した場合は、同一企業内の転勤者に該当しなくなります。よって、適切な就労ビザに在留資格を変更する必要があります。企業内転勤ビザで従事することが認められる業務は、技術人文知識国際業務ビザを同じ内容となります。よって、転勤によって業務内容に変化がない場合は、企業内転勤ビザから技術人文知識国際業務ビザに変更します。
4,技術人文知識国際業務ビザへの変更に必要な書類は何ですか?
企業内転勤ビザと技術人文知識国際業務ビザは、従事することができる業務内容が共通ウするため、以下では企業内転勤ビザから技術人文知識国際業務ビザへの変更に必要な書類について検討します。入管は、企業の規模や性格によって1~4にカテゴリー分けしています。各カテゴリーによって、変更申請に必要な書類は異なっています。以下では各々について必要書類を検討します。
すべてのカテゴリーに共通 |
・在留資格変更許可申請書 ・証明写真(縦4cm×横3cm) ・パスポート(窓口で提示) ・在留カード(窓口で提示) |
カテゴリー1に該当する機関 |
・四季報の写し、または日本の証券取引所への上場を証明する文書(写し) ・主務官庁からの設立許可を証明する文書(写し) ・イノベーション創出企業であることを証明する文書(例:補助金交付決定通知書の写し) ・各省庁が規定する「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(例:認定証等の写し) |
カテゴリー2に該当する機関 |
・前年分の職員給与所得に関する源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) ・在留申請オンラインシステムに係る利用申出の承認を証明する文書(例:利用申出の承認のお知らせメール等) |
カテゴリー3に該当する機関 |
・前年分の職員給与所得に関する源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) ・申請人の活動内容を明らかにするいずれかの資料 (1)労働条件通知書 (2)役員報酬を定める定款の写しまたは役員報酬を決議した株主総会の議事録 (3)地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 ・申請人の学歴又は職歴を証明するいずれかの資料 (1)申請に係る技術または知識を要する職務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書 (2)学歴または職歴等を証明するいずれかの文書(例:卒業証明書、在職証明書など) ・登記事項証明書 ・事業内容を明らかにするいずれかの資料 (1)勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書 (2)その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書 ・直近の年度の決算文書の写し(※新規事業の場合は事業計画書) |
カテゴリー4に該当する機関 |
・前年分の職員給与所得に関する源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにするいずれかの資料 (1)外国法人の源泉聴取に対する免除証明書、その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料 (2)給与支払事務所等の開設届出書の写し (3)直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書 (4)納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料 ・申請人の活動内容を明らかにするいずれかの資料 (1)労働条件通知書 (2)役員報酬を定める定款の写しまたは役員報酬を決議した株主総会の議事録 (3)地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 ・申請人の学歴又は職歴を証明するいずれかの資料 (1)申請に係る技術または知識を要する職務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書 (2)学歴または職歴等を証明するいずれかの文書(例:卒業証明書、在職証明書など) ・登記事項証明書 ・事業内容を明らかにするいずれかの資料 (1)勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書 (2)その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書 ・直近の年度の決算文書の写し(※新規事業の場合は事業計画書) |
5、企業内転勤ビザで他の会社で働いたらどうなりますか?
上記で検討した通り、企業内転勤ビザは同一企業内の転勤者に認められたビザです。よって、転職して勤務する会社が変わった場合は、在留資格の変更が必要となります。ビザの変更が許可される前に転勤先で就労した場合は、たとえ職種に変更がなかった場合でも資格外活動となります。入管法は、資格外活動違反に対しては以下の罰則を定めています。
第70条:3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金、または併科 |
第73条:1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは200万円以下の罰金、または併科 |
6,系列企業内の転職の場合でもビザ変更が必要ですか?
これまで検討した通り、企業内転勤ビザは同一企業内の転勤者を対象としたビザです。そして、上記2で検討した転勤の範囲が、同一企業内の転勤に含まれます。よって、系列企業に転職した場合は、企業内転勤ビザを変更する必要はありません。
系列企業とは、上場企業が財務諸表を作成する際に定めた「財務諸表等規則」において、「親会社」「子会社」「関連会社」と定義された企業が該当します。財務諸表等規則の定義から外れる場合は、企業内転勤ビザの対象外となります。この場合は、適切な就労ビザへの変更が必要となります。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |