企業内転勤ビザ(在留資格「企業内転勤」)外国人の給与の支払いはどうなりますか?支払うのは日本と外国どちらの会社ですか?
目次
1,企業内転勤ビザとはどんなビザですか?
企業内転勤ビザとは、在留資格「企業内転勤」のことで、就労ビザの1つです。企業内の異動の必要性から、外国人を海外から呼び寄せる場合などに必要となるビザです。企業内転勤とは以下の①~③のような場合が例として該当します。
①日本の法人に海外現地法人から外国人を出向させる場合 ②日本の本社(又は支社、営業所など)へ海外の支社、営業所(又は本社)から転勤させる場合 ③日本に子会社、支社、営業所などを新たに開設して、海外の本社から転勤や出向させる場合 |
2,企業内転勤ビザの「転勤」の範囲は何ですか?
企業内転勤ビザは、企業内の異動の必要性に対応するために認められたビザです。よって、企業内転勤ビザを取得するためには、「転勤」と認められる必要があります。企業内転勤ビザの「転勤」と認められるためには、異動する会社間に資本的な関連性があることが必要です。「転勤」と認められる場合であれば、同一会社内での異動のみならず、子会社などの系列会社への出向も含みます。具体的には、以下の会社間での異動が「転勤」に該当します。
・本店(本社)と支店(支社、営業所、事業所)間の異動 ・親会社と子会社間の異動 ・親会社と孫会社間の異動 ・子会社と孫会社間の異動 ・子会社間の異動 ・孫会社間の異動 ・関連会社への異動 |
3,日本と外国どちらの会社が給与を支払いますか?
企業内転勤ビザで日本で働く外国人に対する給与の支払いは、日本と外国どちらの会社が支払っても問題ありません。一般的な就労ビザの場合は、日本の企業と雇用契約を締結するので、雇い主である日本の企業が給与を支払う必要があります。これに対し企業内転勤ビザの外国人は、海外の現地法人や系列企業からの出向者が取得するビザなので、必ずしも日本の企業との間に雇用契約が締結されている必要はありません。よって、雇用関係にある海外の企業が給与を支払う場合でも問題ありません。
もっとも、日本の会社と労働契約と締結することが否定されるわけではありません。契約自由の下、日本の会社と労働契約を締結することも可能です。この場合は、日本の会社が企業内転勤ビザ外国人に給与を支払うことになります。
実際上は、企業内転勤ビザで日本で働く外国人の多くは、日本と外国の会社の双方と雇用契約を結んでいます。この場合は、外国人に対する給与の支払いは、日本と外国の会社の間で割合を決めて、当該外国人に対する給与を支払っています。
4,日本人と同等以上の給与を支払う必要がありますか?
(1)給与の意味
企業内転勤の基準省令では「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と定められています。よって、企業内転勤ビザで就労する外国人に対する給与水準は、日本人と同等以上の金額である必要があります。
ここで給与とは、労務提供の対価を意味します。よって、通勤手当や扶養手当など実費弁償にあたるもの(課税対象となるものは除く)は給与に含まれません。また、給与は最低賃金法に基づき、都道府県ごとに定められている最低賃金以上の金額を支払う必要があります。なお、基本給の他、勤勉手当や調整手当、ボーナス(賞与)などは給与に該当します。
(2)本国通貨による給与支払と為替レート
外国の会社が企業内転勤ビザの外国人に対して給与を支払う場合は、為替レート(為替相場)を考慮して日本人と同等以上の給与水準である必要があります。為替レートとは、円と外貨との交換比率のことです。代表的な円・米ドル相場以外にも様々な種類があり、外国会社本国の通貨と円との間の為替レートを考慮する必要があります。
本国通貨で給与を支払う場合に、本国通貨と円との間で円高が大きく推移した場合は、本国通貨による給与水準が実質的に引き下げられます。この場合、日本人と同等以上の給与水準に達することができなくなる可能性があります。本国通貨で給与を支払う場合は、為替レートを考慮した上で、日本人と同等以上の給与を支払う必要があります。
5,外国の会社から給与を受け取っている場合は確定申告が必要ですか?
企業内転勤ビザの外国人が、給与の一部もしくは全額の給付を外国の会社から受けている場合は、確定申告を行うことが必要となります。確定申告を行わなかった場合は、納付すべき税金に対して最高20%の無申告加算税が課されます。また、在留期間更新申請の際には、不利益に働く可能性は否めないので、気を付ける必要があります。
外国人従業員が日本の会社のみから給与の給付を受けている場合で、給与額が2,000万を超えない」「副業所得が年間20万円を超えない」などの場合は、年末調整されるため確定申告は必要ありません。
なお、確定申告とは、1月1日から12月31日までの年間所得を総合した上で納税額の報告・納付を行うことです。
6,企業内転勤ビザ外国人に雇用保険は適用されますか?
企業内転勤ビザの外国人が、日本企業と雇用契約を締結していない場合は、雇用保険が適用されることはありません。外国企業との雇用契約に基づき、転勤や出向によって一時的に日本で働く企業内転勤ビザ外国人の場合は、日本で失業して雇用保険を受け取るという前提を欠いています。
7,企業内転勤ビザ外国人も健康保険・厚生年金に加入しますか?
企業内転勤ビザで就労する外国人も、原則として健康保険や厚生年金に加入する必要があります。もっとも、日本国と社会保険協定を締結している国の場合は、例外として国内での加入が免除されます。
「社会保険協定」とは、社会保険料の二重払いを防止するため、日本国と外国との間で年金加入期間などを通算する協定のことです。社会保険協定は2024年1月時点で、日本は23か国と協定を締結しています。このうち、アメリカやドイツ、韓国、中国、フィリピンなどを含む22か国との協定が発効されています。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |