留学ビザ(在留資格「留学」)の留学生は転校できますか?転校した場合どうすれば良いですか?

1,留学ビザとはどんなビザですか?

 留学ビザとは在留資格「留学」のことで、外国人が中長期の期間日本の教育機関で教育を受ける場合に必要なビザとなります。入管法は留学ビザに関し「本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編成に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動」(入管法別表第1の4)と定め、外国人が日本の教育機関で教育を受ける活動を認めています。

 このように、留学ビザは日本の大学や専門学校などの教育機関で、外国人が教育を受けることを希望する場合に、出入国在留管理庁が日本に在留して「教育を受ける活動」を許可する制度です。留学ビザを取得しなければ日本に留学することはできません。

 留学ビザを取得するための大前提としては、日本の教育機関に在籍又は入学許可を得ていることが必要です。多くの学校では、学校が留学生である外国人の代理人となって地方出入国在留管理官署に申請しています。申請の際には、一定の必要書類を提出することが求められます。必要書類は、学校側と留学生である申請者本人のそれぞれ必要になります。

 なお、留学ビザの目的は日本の教育機関で教育を受けること、つまり勉学です。よって、原則として留学ビザは就労が認められていません。アルバイトをする場合には、資格外活動許可を取得する必要があります。卒業後又は退学後に日本で就労を希望する場合には、留学ビザから就労ビザへ変更する必要があります。

2,留学ビザの留学生は転校できますか?

 留学ビザの留学生でも、原則として自由に他の学校へ転校することができます。もっとも、留学ビザの留学生が、日本の高校、日本語学校、専門学校、大学などに在籍している場合で、他の学校へ転校した場合は、地方出入国在留管理局へ届出る義務があります。この届出は、提出期限内に届け出る必要があります。この届出を怠った場合は、罰則規定があります。留学生が転校した場合は、速やかに地方出入国在留管理局へ届出てください。

3,留学生が転校した場合に必要な手続きは何ですか?

 上記2で検討した通り、留学ビアの留学生が転校した場合は、地方出入国在留管理局へ届出る義務があります。以下では、留学生が転校した場合に必要な手続きについて検討します。

(1)「所属機関等に関する届出」

 上記で述べた、留学生が転校した場合の届出とは、「所属機関に関する届出」を地方出入国在留管理局へ提出しなければならないということです。留学ビザや就労ビザなど、在留資格を持って日本に在留している外国人の多くは、何らかの所属機関に属しています。そして、この所属機関に変更があった場合は、「所属機関に関する届出」を行うことが義務付けられています。留学ビザの留学生の場合は、転校つまり所属する学校に変更があった場合は、「所属機関に関する届出」を行う必要があります。

在留資格所属機関「所属機関等に関する届出」を提出するとき
留学高校、日本語学校、専門学校、大学などの教育機関転校、退学したとき
技術・人文知識・国際業務会社転職、離職したとき
家族滞在配偶者配偶者と離婚したとき

(2)「所属機関等に関する届出」の種類

 「所属機関等に関する届出」には、所属機関の変更の内容に応じて、「活動機関に関する届出」「契約機関に関する届出」「配偶者に関する届出」の3種類あります。必要な届出は在留資格によって異なってきます。この届出の期限は、所属機関に変更があった日から14日以内です。各々の届出に関して、以下の表をご参照ください。

 活動機関に関する届出契約機関に関する届出配偶者に関する届出
在留資格「教授」
「高度専門職1号ハ」
「高度専門職2号」
「経営・管理」
「法律・会計業務」
「医療」
「教育」
「企業内転勤」
「技能実習」
「留学」
「研修」
「高度専門職1号イ」
「高度専門職1号ロ」
「高度専門職2号」
「研究」
「技術・人文知識・国際業務」
「介護」
「興行」
「技能」
「家族滞在」
「日本人の配偶者等」
「永住者の配偶者等」
所属機関の変更の内容活動機関の名称・所在地に変更が生じた場合や、活動機関の消滅、活動機関からの離脱・移籍があった時契約機関の名称・所在地に変更が生じた場合や、契約機関との契約の終了・新たな契約の締結があった時配偶者としての身分を有する方は、その配偶者と離婚又は死別した場合

(3)留学生の転校は14日以内の「活動機関に関する届出」

 留学ビザの留学生が転校した場合に必要な手続きは、「活動機関に関する届出」になります。転校して所属機関である学校の移籍や離脱などの変更があった場合に提出してください。

 この「活動機関に関する届出」は、変更があった日から14日以内に行う必要があります。転校した日から14日以内で、転校前に届け出ることはできません。届出期限は14日以内と非常に短く、また罰則規定もあるため、転校後の学校の手続きなど忙しくなる前に、転校したら先ず「活動機関に関する届出」を行うことが好ましいと考えます。

4,「活動機関に関する届出」は、どうやって届出れば良いですか?

 留学生が転校した場合に必要な「活動機関に関する届出」の方法には、インターネット、窓口、郵送の3つの方法があります。以下、各々の届出方法について検討します。

 インターネット窓口郵送
必要書類なし届出書 在留カード届出書
届出先出入国在留管理庁電子届出システム最寄りの地方出入国在留管理官署東京出入国在留管理局在留管理情報部門届出受付担当

(1)インターネットでの届出

 インターネットで届け出る場合は、出入国在留管理庁届出システムを利用して届出ます。インターネットで届け出る場合は、入管に出頭する必要がなく、24時間、365日、オンラインで届出ができるため、非常に便利です。はじめて届出システムを利用する場合は、利用者情報を登録する必要があります。入管のホームページに「システムの操作マニュアル」が日本語と英語語で用意されているので、操作が分からない場合はご参照ください。

「初めての方」
①出入国在留管理庁電子届出システムにアクセスして、「認証ID発行」をクリック
②氏名、生年月日、住所、国籍、在留カード番号、メールアドレス等の情報を入力
③利用者情報が登録され、認証IDが発行される。
利用者情報登録が完了したら、届け出ます。
「IDを取得した後の手順」
①認証IDとパスワードでログイン
②「中長期在留者メニュー」の「活動機関の届出」で対象となる届出を選択
③「離脱」を選択して、転校前に在籍していた学校の情報を入力
④「移籍」を選択して、新しい学校の「移籍」情報を入力
「離脱」と「移籍」の両方の処理を行う必要があります。

(2)窓口及び郵送での届出

 窓口及び郵送によって届け出る場合は、届出書の提出が必要になります。届出書の様式は、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。窓口でも郵送でも提出する届出書は同じです。以下各々検討していきます。

①窓口での届出

 窓口で届出を行う場合は、管轄する入管の窓口に届出書と提出してください。届出書を提出する際には、在留カードを提示する必要があります。受付の曜日や時間帯が設定されている場合もあるので、提出予定の入管にあらかじめ電話で確認することが好ましいと思います。

②郵送での届出

郵送で届出を行う場合は、東京出入国在留管理局在留管理情報部門届出受付担当に届出書を郵送してください。郵送先は以下の通りです。

郵送先
〒160-0004 東京都新宿区四谷1丁目6番1号四谷タワー14階 
東京出入国在留管理局在留管理情報部門届出受付担当

③届出書の記載項目

 届出書の様式には、「離脱」「移籍」「離脱と移籍」の3種類あります。留学生が転校する場合は、在籍学校からの「離脱」と転校先学校への「移籍」に該当します。よって下記③の「離脱と移籍」の届出をしてください。

届出書の様式
①「離脱」の届出
②「移籍」の届出
③「離脱と移籍」の届出

 届出書には、下記の4つの記載項目があります。

記載項目記載事項備考
①届出人の情報転校する外国籍の方の氏名、性別、生年月日、在留カード番号、在留資格 
②届出事由A、離脱する活動機関の情報(転校前)在籍していた学校を退学した年月日、在籍していた学校の名称、住所「新たな活動機関における活動の内容」は空欄
②届出事由B、移籍する活動機関の情報(移転先)転校する年月日、転校先の学校の名称、住所 
③届出人の署名転校する留学生ご本人が署名必ず自署で署名する
④届出人の連絡先届出人にチェック、連絡の取れる電話番号代理人の方が届け出る場合、代理人の情報も記載

5,届出義務を怠った場合はどうなりますか?

 これまで検討した通り、留学ビザの留学生が転校した場合は14日以内の「所属機関等に関する届出」が義務付けられています。この届出を怠った場合は、以下のような不利益処分が科される可能性があります。

(1)罰金刑

 これまで検討してきた留学ビザの留学生に義務付けられている届出は、出入国管理及び難民認定法によって定められている法律上の義務です。そして、この義務を怠った場合に、同法は罰則を定めています。

 具体的には、届出を行わなかった場合は、20万円以下の罰金刑に科されます。さらに、虚偽の届出を行った場合は、1年以下の懲役または20万円以下の罰金が科されます。虚偽の届出を行ったとして、懲役刑に処せられた場合は、日本からの退去強制処分に処せられる可能性もあります。退去強制処分に処せられた場合は、処分の日から5年間は日本に入国できません。

(2)ビザ更新が難しくなる

 これまで検討した通り、留学ビザの留学生が転校した場合に行う「所属機関等に関する届出」は入管法上の義務です。したがって、この届出を怠ったということは、入管法に違反しているということになります。在留中に入管法に違反しているので、ビザの更新許可申請の審査では、当然不利益に働きます。

 更新が許可されたとしても、3年や5年といった長期の在留期間が認められることはないと考えます。良くてせいぜい1年、半年の在留期間しか認めてもらえない可能性は覚悟すべきでしょう。

6,転校後、留学ビザの更新申請できますか?

 転校した後でも、留学ビザの在留期間更新許可申請は可能です。もっとも、転校している場合は、転校していない場合と比較して、留学ビザの更新の際には、以下の点に注意を払う必要があります。

 上記1でも検討した通り、留学ビザは日本の教育機関で教育を受けることを目的としています。そして、留学ビザを取得した際は、転校前の教育機関で教育を受けることを前提として審査され、許可されています。転校後の学校で教育を受けることを前提として許可されていません。転校後に在留期間更新許可申請をした場合は、転校後の教育機関で教育を受けることを前提として、更新の許可不許可が審査されます。よって、転校後に留学ビザの更新申請をする際には、理由書などを作成し、転校先の教育機関で教育を受ける意思を明らかにする必要があります。

 理由書では転校先の学校での勉学意欲を示すことが必要です。理由書で「転校前に学んだ内容」「転校する理由」「転校後の学校で学ぶ内容」「将来の展望」などを説明することが重要です。また、前の学校を中退している場合は特に注意が必要です。「なぜ中退したのか」「中退にやむを得ない事情があるのか」「また中退するのではないか」といった疑義が生じやすくなるので、これらの理由を明確にすることで疑義が生じる可能性を払拭する必要があります。

転校や中退に、病気などのやむを得ない事情がある場合は、診断書などを提出することも重要です。また、転校後の学校での勉学意欲を示す為、前の学校での成績証明書や出席証明書を提出することも有益と考えます。

7,転校期間中にアルバイトできますか?

 留学ビザは原則として就労が禁止されていますが、資格外活動許可を取得することによって週28時間以内のアルバイトが認められます。しかし、留学ビザと資格外活動許可を取得している場合でも、所属していた学校を卒業や退学などによって、学校に所属しなくなった場合はアルバイトすることはできません。資格外活動許可は、本来の在留資格に基づく活動を行っていることを前提に、許可される制度です。よって、卒業や退学によって学校に所属しなくなった場合は、本来の在留資格に基づく活動を行っていない状態となり、資格外活動つまりアルバイトができなくなります。

 留学中、前の学校に在籍中にアルバイトをしていた場合で、卒業や退学によって前の学校に所属していない間は、次の学校に入学するまでは資格外活動許可を取得していてもアルバイトはしないで下さい。転校期間中のアルバイトは不法就労です。不法就労は犯罪行為です。転校先の入学手続きが完了するまでは、資格外活動許可を取得していてもアルバイトは絶対にしないで下さい。

8,転校した場合に必要な手続きや注意点は他にもありますか?

(1)転校期間は3か月以内

 留学ビザをはじめ在留資格は、外国人に各在留資格によって認められている活動を許可する制度です。この各在留資格によって認められている活動を3か月以上行っていない場合は、在留資格を認める必要がないとして、在留資格が取り消される可能性があります。留学ビザの目的は、日本の教育機関で教育を受けることを外国人に認めています。よって、3か月以上日本の教育機関に在籍していない場合は、留学ビザを取り消される可能性があります。したがって、転校する場合は、前の学校を退学してから3か月以内に、次の学校に入学してください。

 もっとも、3か月以上学校に在籍していない場合でも、「正当な理由」がある場合は取り消されることはありません。「正当な理由」として認められるか否かは、以下のような事情を考慮して判断されます。

①在籍していた教育機関が閉校した等の事情があり、他の教育機関に入学するために必要な手続きを進めている場合
②最初に入学した学校を卒業した留学生が、他の学校への入学手続きを進めている場合

(2)居住地の変更届出

 他県の学校への転校など、引っ越しを伴う場合は、出入国在留管理庁長官に住居地の変更届出を行ってください。なお、新住居地の市区町村役場で転入・転居届を行うとき、在留カードを提出すれば、出入国在留管理庁長官へ住居地の変更届出も同時に行ったものとみなされます。手続は新住居地に移転した日から14日以内に行う必要があります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」
 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))
 明治大学法科大学院修了  
「専門分野」
 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法