中国人が帰化する場合の要件は何ですか?
目次
1,中国人の帰化申請は多いですか?
現在、中長期の在留資格を持って、日本に在留する外国人の中で最も多いのが中国人です。令和5年6月末時点では、322万3,858人の外国人が日本に在留しています。このうち、中国人の在留者は788,495人で、全体の24.5%を占めています。
中長期の在留資格を持って日本に在留している外国人は、就労ビザや配偶者ビザ、留学ビザなどを持って様々な活動を日本で行っています。留学を目的として日本に来日し、日本の会社に就職し、日本で結婚して、日本で子供が生まれた、といった経緯をたどる中国人も少なくありません。右のような場合、結婚する前に日本国籍を取得したい、子供が生まれる前に日本国籍を取得し自身の戸籍に子供を入れたい、と希望する中国人も少なくありません。
2,中国人が帰化するためにはどうすれば良いですか?
帰化して日本国籍を取得するためには、居住地を管轄する法務局に帰化申請して、申請が受理され、審査を経て許可を得る必要があります。帰化許可を得るためには、帰化許可要件を充足し、必要書類を取得し、帰化申請書を作成して法務局に提出する必要があります。このためには、法務局への事前相談から始まり、帰化申請が受理されるまで何度も法務局へ足を運ぶ必要あります。また、帰化申請が受理された後も、その審査期間は1年にも及び審査の過程で追加資料を要求されることもあります。このように、帰化申請の手続きは、非常に手間と時間がかかります。
3,中国人が帰化する場合の許可要件は何ですか?
(1)住居要件
帰化許可要件の住居要件は、引き続き5年以上日本に住居を有していることを要求しています。
引き続きの意味 |
「引き続き」と認められるためには、継続して日本に在留し生活していることが必要となります。 |
「引き続き」と認められない例 |
日本の専門学校に留学して2年間日本に在留し、卒業後本国で1年間就労し、その後再度来日し、日本企業で3年間就労し在留した場合は「引き続き」の要件を満たしません。日本に在留していた2+3=5年間を継続して在留していなければ住居要件は充足されません。この場合は、一度本国に帰国し1年間就労していますので、在留資格が失効し、留学中の2年間は「引き続き」5年以上に計算されません。 |
出国の際の注意点 |
①1回の出国で連続して3か月以上日本を離れ外国にいた場合は、引き続きの要件が認められなくなる可能性が高くなります。この場合、カウントはリセットされ始めから計算し直しとなります。 里帰り出産や本国の親族の看病その他長期海外出張などで、1回の出国で連続して3か月以上出国している場合、住居要件が充足されないとして、帰化が認められなくなる可能性が高くなります。 ②1回の出国が連続して3か月未満の場合でも、1年間で通算して100日以上出国している場合「引き続き」の要件を満たさないと判断される可能性が高くなります。例えば、ひと月毎に日本の生活と海外の生活を往復していた場合、連続して3か月以上出国していた場合ではありませんが、100日以上出国していますので「引き続き」の要件を充足しません。 |
在留期間5年のうち3年以上就労していること |
5年の住居要件が認められるためには、5年間のうち3年間以上の期間、就労系の在留資格をもって就労していることが必要となります。アルバイトでは就労の要件を満たしません。正社員(派遣社員等も含む)として就労していることが必要です。転職していても就労と認められます。 例えば大学留学で4年間、大学院留学で2年間、4+2=6年間日本に引き続き在留していても、就労していないため住居要件を満たしません。 もっとも例外として、10年以上引き続き日本に在留している外国籍の方は、3年以上の就労期間がない場合でも、1年以上の就労期間があれば、住居要件を充足します。例えば大学留学で4年間、大学院留学で5年間、就労ビザで1年間、4+5+1=10年間で居住要件を充足することが認められます。家族滞在で日本の小中高校を過ごし、就労ビザで1年就労した場合も居住要件を充足できます。 |
(2)能力要件
18歳以上であることが、普通帰化の能力要件として必要とされます。もっとも、18歳未満の場合でも、ご両親と一緒に帰化する場合は、帰化申請をすることが認められています。
(3)素行要件
素行善良であることが帰化の要件として要求されています。素行善良であるか否かは、犯罪歴の有無や犯罪態様、納税状況、社会への迷惑の有無等を総合的に考慮し、一般通常人を基準として社会通念に従って判断されます。以下、注意点をご紹介します。
納税状況 |
各種税金を納税していることが必要です。帰化申請の場合、申請人本人のみならず、同居の家族全員について納税状況が審査されますので、注意してください。会社員場合、税金や社会保険料は引き落とされ給料を支払われるので問題となることは少ないです。しかし、会社員の方でも自身で住民性の支払い義務がある方、株や不動産投資等で副収入を得ている方は収入額次第では自身で確定申告を行う必要が生じてきます。この場合、申告を怠ると納税義務を果たしていないという事となりますので、副収入を得ている方は注意が必要です。 会社経営者の場合は、申請人個人の納税のみならず、会社の法人税を納付しているか否かも審査されます。 税金関係に滞納がある場合は、帰化申請をする前に納税を済ましておく必要があります。 |
年金の支払い状況 |
帰化申請の審査においては、納税状況のみならず年金の支払い状況も審査されます。最低でも、直近1年分の年金を支払っている必要があります。会社員の場合は、会社が厚生年金に加入している場合、年金を引き落とされた形で給料が支払われるので問題となることが少ないです。個人事業主の方や会社が厚生年金に加入していない場合、国民年金の支払い義務が生じてきますので、国民年金の方は直近1年間で支払いを滞納していないか確認が必要です。支払いに滞納があった場合、帰化申請前に直近1年分の年金を支払ってください。 |
交通違反の有無 |
帰化申請前、直近5年間の交通違反の有無について審査されます。素行要件に抵触する基準としては、過去5年間に5回以上の交通違反があった場合、素行善良であるとは認められなくなる可能性が高くなります。この5回の交通違反とは軽微な交通違反です。駐車違反や右折禁止などです。飲酒運転などの重大な交通違反の場合は、1回でアウトです。重大な交通違反の場合、相当期間経過しないと許可となる可能性はないと思います。 |
(4)生計要件
日本で生活するための生計を維持できる経済力があることが要件となります。
生計要件の判断基準 |
この生計要件は同居の家族を含めて生計を共にする世帯を基準に判断されます。帰化申請人本人の年収が低く生計を維持することが困難であっても、帰化申請人と同居している家族(配偶者や成人した子供)に生計を維持するに十分な収入がある場合、生計要件を満たすことが可能です。つまり、世帯として生計を維持することができれば生計要件を充足します。 生計要件を充足する収入の基準としては、手取りで18万円以上の安定した収入を得ているのであれば、要件を充足すると思います。扶養者がいる場合、世帯年収が問題となりますので、更にプラスαの収入が必要となります。世帯での生計を維持できるか否かが問題となります。 |
生計要件と貯金の関係 |
貯金額が多い場合でも、安定した収入がない場合、生計要件を満たすことは難しいです。生計要件の判断に当たっては、貯金の有無ではなく安定収入の有無によって審査されます。借入金がある場合、返済計画を立案し、借入金を返済しうるだけの収入を得ているか否かが重要となります。返済計画に沿って返済しているのであれば消極的に作用することはないと思います。 |
(5)重国籍防止要件
日本の国籍法は重国籍を認めていません。よって、日本国籍取得後、本国の国籍を離脱しなければなりません。したがって、帰化を申請する者は無国籍者であるか、帰化によってそれまでの国籍を喪失することが大前提となります。
もっとも、本人の意思によって本国の国籍を離脱することができないなど特別の事情がある場合、この要件を充足していなくても帰化が認められる可能性もあります。
(6)思想要件
日本政府を暴力で破壊や転覆することを企てたり主張するような者、あるいはそのような団体を結成したり、加入しているような者は帰化が許可されません。ようするにテロリストは日本人になれません。
(7)日本語能力
帰化許可の要件として日本語能力が要求されています。どの程度の日本語能力が必要か、が気になるところですが、日本人の小学校3年生程度の日本語能力が要求されます。場合によっては日本語テストが科される場合もあります。小学校3年生程度の日本語テストです。帰化には必ず担当官との面談があります。帰化をお考えの方は、普段から日本語の学習をしておく必要があると思います。
4,中国から取り寄せる必要がある書類は何ですか?
帰化申請で必要となる書類は、申請人の国籍によって異なってきます。中国人が帰化申請する場合、すべての必要書類を日本国内で取得することはできません。中国本土にある公証処で取得する必要のある書類が必ず必要になります。中国に帰国して取得する、又は中国の親族などに代理申請してもらい、国際郵便で日本に郵送してもらう必要があります。
中国で取得する必要のある書類は下記の通りです。これらの中国書類には、日本語翻訳文を付ける必要があります。日本語翻訳は要約では不可です。中国書類全体の日本語翻訳が必要となります。日本語翻訳書類には、必ず訳者の氏名、住所、翻訳年月日を記載してください。
中国本土で取得する書類(⑥を除く) |
①出生公証書(本人) |
②結婚公証書(本人・父母) 申請人が未婚の場合は、本人の結婚公証書は必要ありません。 申請人が日本人と婚姻している場合で、日本の婚姻手続を先に行った場合は、中国で結婚の登録がなされません。よって、この場合も結婚公証書は必要ありません。もっとも、日本の戸籍謄本(婚姻日が記載されたもの)が必要となります。 |
③離婚公証書(本人・父母) 申請人や父母が離婚している場合は、離婚公証書が必要となります。 |
④死亡公証書 父又は母が亡くなっている場合に死亡公証書が必要になります。 |
⑤親族関係公証書(本人・父母・兄弟姉妹が記載されているもの) |
⑥国籍証明書 国籍証明書は駐日中華人民共和国大使館で取得できます。日本国籍を取得した時に中国国籍を自動的に喪失することを証明するものです。 |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |