赤字でも経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)を更新できますか?
1,経営管理ビザ更新の審査基準は何ですか?
経営管理ビザによって認められた在留期限が到来した場合は、経営管理ビザを更新する必要があります。初めて経営管理ビザを取得した場合は、認められる在留期間は1年であることが一般的です。在留期間の更新を繰り返すことによって、1年→1年→3年と在留期間が延びていきます。
もっとも、このように必ず認められる在留期間が延びていくわけではありません。在留期間更新許可申請では、更新の許可不許可について審査されます。この更新の際の審査基準を満たしていないと判断された場合は、認められる在留期間が延びていかないことは当然、不許可とされることもあります。
在留期間更新許可申請において、許可を得て長期の在留期間を認めてもらうためには、審査基準を満たすように会社経営を行っていくことが必要です。更新の際に審査されるポイントは以下の点になります。
経営管理ビザ更新の審査基準 |
・法人の決算書は黒字か否か ・売上が一定規模ある否か ・法人税その他会社経営上納めるべき税金を納めているか否か |
2,赤字でも経営管理ビザの更新はできますか?
上記1の経営管理ビザ更新の審査基準のように、「法人の決算書は黒字か否か」が審査の対象の1つになります。そこで、赤字決算の場合は、経営管理ビザの更新は認められないのか、が問題となります。
経営管理ビザは、外国人経営者が日本で会社経営を営むことを許可する制度です。よって、事業の継続性に疑義が生じる場合は、経営管理ビザが許可される可能性は低くなります。したがって、事業の継続性という観点からは、赤字決算よりも黒字決算の方が有利に働きます。
もっとも、赤字決算の場合は更新が許可されない、という訳ではありません。赤字決算の場合でも、更新が許可される場合もあります。
新設会社の場合で、初めて更新申請する場合は、売上規模や事業継続の将来性といった多方面から、更新の許可不許可について審査されます。設立1年目の会社の場合は、取引先や顧客数がまだ少ないことが、考慮されます。
会社設立2年目以降の場合は、1年目以上に会社の決算書が重視されます。しかし、1年目以上に決算書が重視されることは確かですが、2年目以降に赤字決算の場合でも、経営管理ビザの更新が許可されている事例もあります。例えば、一時的な設備投資で特別損失が発生した場合などは、将来を見越した設備投資であり黒字化する見込みであることを、事業計画書などで合理的に説明することができれば、事業の継続性の観点から問題ないと判断されることもあります。
3,役員報酬は更新の審査に影響しますか?
経営管理ビザの更新審査における黒字決算の重要性については、上記1,2で述べた通りです。そこで、黒字決算を維持するために、役員報酬を低く設定しても問題ないのか、について検討する必要があります。
上場企業などの大会社では、役員報酬は株主総会や取締役会で決定します。しかし、新設の中小企業では、実質的には経営者が自身の役員報酬を決定している場合が多いのが実情です。そこで、営業利益の少ないうちは、黒字決算を維持するために、役員報酬を5万円や10万円といった少額で設定している場合があります。この場合、経営管理ビザの更新という点からは不利益に作用します。
役員報酬を上記のように少額に設定した場合は、日本での生計を維持できるのかという疑義が生じます。また、適正な役員報酬を定めている会社ほど、事業の安定性が認められ継続が可能であると判断される可能性が高まります。十分な役員報酬を事業者が得ている場合は、所得税や住民税の課税対象となり、更新許可申請では適切に納税を行っていることを主張することができます。
このように、経営管理ビザの更新では、黒字決算という点だけでなく、申請者個人の生計を維持できるか、という点も重要となってきます。よって、役員報酬は最低でも月額20万円以上に設定することが必要です。
役員報酬:月額20万円以上 |
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |