海外在住の夫婦でも配偶者ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」)申請できますか?

1,配偶者ビザ取得の手順や必要書類は何ですか?

 外国籍の配偶者が日本人と結婚し、日本で生活するためには配偶者ビザを取得する必要があります。以下では、配偶者ビザ申請に必要な書類や取得手順について検討します。

(1)配偶者ビザ申請の必要書類

 配偶者ビザ申請の必要書類は、下記の通りです。

在留資格認定証明書交付申請書用紙は、出入国在留管理局や出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。
写真 縦4cm×横3cm申請人(日本へ入国を希望する外国人)の3か月以内に撮影した写真が必要です。証明写真のような背景のないもので、明確に顔が写されたものを提出してください。
注)写真の裏面には申請人の氏名を記載し、申請書の写真欄へ貼り付けてください。
日本人の配偶者の戸籍謄本申請人との婚姻事実が記載された、3か月以内の戸籍謄本が必要です。
申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書申請人が韓国籍等で戸籍謄本が発行される場合は、外国機関が発行した婚姻事実の記載がある戸籍謄本でも問題ありません。
日本での滞在費用を証明する資料 申請人の滞在費用を負担する方の直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書と納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)が必要です。
 また、住民税の課税証明書と納税証明書を提出できない場合は、預貯金通帳の写し・雇用予定証明書又は採用内定通知書(日本の会社発行のもの)又はそれらに準ずるものを提出する必要があります。
日本人の配偶者が記入する身元保証書日本に居住する日本人の配偶者が申請人の身元保証人になってもらいます。必要事項を記入して提出します。
日本人の配偶者の住民票の写し(世帯全員の記載があるもの)個人番号(マイナンバー)の省略された、他事項の記載がある発行日から3か月以内のもの
質問書出入国在留管理庁のホームページよりダウンロードが可能です。
スナップ写真夫婦で写っていて、容姿を明確に確認でき、アプリ等で加工がされていないもの
返信用封筒定型封筒に宛先を明記し、簡易書留用に404円分の切手を貼付したもの
身分を証する文書等申請人本人以外の方が提出する場合に、申請を提出できるかを確認するために必要です。 申請が提出できる方については、出入国在留管理庁のホームページをご確認ください。

(2)配偶者ビザ申請の手順

 配偶者ビザ申請の手順は以下のような流れになります。

①出入国在留管理局で在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書交付申請を行います。必要書類を集め、申請書に記入してください。完成した書類一式を、出入国在留管理局に提出し、申請を行います。
②審査
申請が受理されると、出入国在留管理局で審査されます。審査には1~3か月程度かかります。申請したその場では、結果が分かりません。結果が届くまで待って下さい。
③在留資格認定証明書交付
審査の結果許可されると在集資格認定証明書が交付されます。在留資格認定証明書は日本人配偶者その他手続きを行った者の下に、郵送で送られてきます。この在留資格認定証明書は海外在住の外国籍配偶者の下に郵送してください。
④駐外国日本国大使館又は領事館で査証申請
 海外在住の外国籍配偶者は母国所在の日本国大使館又は領事館で査証申請してください。送られてきた在留資格認定証明書を日本国大使館又は領事館に提出してください。
⑤査証取得査証審査が許可された場合、パスポートに査証が貼付され返却されます。3か月以内に入国してください。入国の際には査証が貼られたパスポートと在留資格認定証明書を必ず持参してください。

2,海外在住の夫婦でも配偶者ビザ申請できますか?

 夫婦共に海外に在住している場合でも、配偶者ビザ申請をすることは可能です。この場合の申請方法として以下の2つの方法が考えられます。

①日本在住の親族が協力者となって申請する
②日本人配偶者が帰国して申請する

 なお、海外に在住している場合でも配偶者ビザ申請はできますが、日本での居所などが何も決まっていない状態で申請することは難しいです。海外生活を継続しながら配偶者ビザを取得することは困難です。海外在住夫婦が、日本に帰国するために申請する場合を想定しています。

(1)日本在住の親族が協力者となって申請する場合

配偶者ビザ申請の流れ外国在住の日本人配偶者が書類を作成し、日本に居住する親族に書類を郵送します。親族は、在留資格認定証明書交付申請書に署名し、郵送されてきた書類一式を出入国在留管理庁に提出し申請します。 許可が下りた場合は、親族の下に在留資格認定証明書が郵送されてきます。この在留資格認定証明書は、外国在住の申請人の下に郵送してください。
日本の協力者が用意する書類日本の協力者は、以下の書類を用意する必要があります。
・住民票
・戸籍謄本
・課税証明書
・納税証明書
・残高証明書
・在職証明書(仕事をしている場合)
・身元保証書
・返信用封筒  
戸籍謄本は日本人配偶者及び親族双方の名義の書類を用意する必要があります。身元保証書についても、日本人配偶者が署名したものとは別に、協力者である親族は署名したものも必要になります。それ以外の書類については、協力者である親族名義の書類が必要になります。
海外在住の夫婦が用意する書類海外在住の夫婦は以下の書類を用意する必要があります。
・在留資格認定証明書交付申請書
・質問書
・身元保証書
・外国人配偶者の証明写真
・結婚証明書
・結婚証明書の日本語訳
・スナップ写真
・メッセージ履歴
・理由書
・外国人配偶者のパスポートのコピー  
 日本での生活を維持できる資力を証明するため、日本での就労先が決まっている場合は、会社から勤務場所や給与額などが記載された書類を取得して、上記の書類と共に入管に提出します。また、給与支払見込証明書を会社から取得できる場合は取得してください。
メリット・デメリット「メリット」  
親族に協力してもらうメリットは、配偶者ビザを取得してから一緒に帰国できることです。この場合は、日本人配偶者が先に帰国する必要はありません。
「デメリット」  
デメリットとしては、親族の負担や手間が大きいことが挙げられます。必要書類の収集のため何度も役所に出頭する必要があり、また海外への郵送など時間と手間がかかります。

(2)日本人配偶者が帰国して申請する場合

配偶者ビザ申請の流れ 日本人配偶者が帰国して申請する場合は、日本での生活環境を整えてから申請する必要があります。日本人配偶者名義の住民票を取得する必要があるため、日本に居住している状態にする必要があります。住居や勤務先が決まったら住民登録を行ったら、必要書類を収集し申請書と共に入管に提出して申請します。  許可が下りた場合は、在留資格認定証明書が日本人配偶者の下に郵送されてきます。外国在住の外国籍配偶者の下に在留資格認定証明書を郵送してください。
必要書類 日本人配偶者が先に帰国して申請する場合は、以下の書類が必要になります。
「日本人配偶者が用意する書類」
・在留資格認定証明書交付申請
・婚姻事実の記載がある戸籍謄本
・預貯金通帳の写し
・雇用予定証明書又は採用内定通知書など
・身元保証書
・日本人配偶者の住民票の写し(世帯全員の記載があるもの)
・質問書
・夫婦で写っているスナップ写真
「外国籍配偶者が用意する書類」
・縦4cm×横3cmの写真
メリット・デメリット「メリット」
 日本人配偶者が先に帰国する場合のメリットは、生活環境を整えてから申請するため、日本での生活に問題がないことの立証が容易になる点があります。住居などを決め身元保証人として外国籍配偶者を呼び寄せるため、生計要件を証明することができます。
「デメリット」
 デメリットとしては、外国籍配偶者と一緒に帰国することができないという点がります。また、生活環境の整備や手続きなどで、日本人配偶者の負担が大きくなることも挙げられます。

3,短期滞在ビザで一緒に帰国できますか?

 短期滞在ビザで一緒に帰国することはできます。しかし、短期滞在ビザから配偶者ビザへの変更は原則として認められていません。よって短期滞在ビザで一緒に帰国しても、一旦出国する必要が生じる可能性が高いです。

 例外として「やむを得ない事情」がある場合は、短期滞在ビザから配偶者ビザへの変更が認められる場合もあります。この「やむを得ない事情」とは、例えば外国籍配偶者が妊娠している場合など人道上の理由がある場合を指します。また、短期滞在で来日中に日本で婚姻届を提出した場合に変更が認められた事例もあります。

 もっとも、短期滞在からの変更は審査が厳しく、また短期滞在で認められる在留期間は90日と短いことから、配偶者ビザへの変更は困難です。

4,注意点は何ですか?

(1)3か月以内の入国

 在留資格認定証明書の有効期間は3か月です。よって証明書を取得してから3か月以内に入国する必要があります。入国の為には在外公館で査証を発給してもらう必要があります。査証申請は審査期間として1週間程度の期間を必要とします。在留資格認定証明書の有効期間が過ぎ失効してしまった場合は、また1から取り直しとなります。

(2)子供のビザ

 日本人配偶者の実子が日本国籍の場合は、日本人なのでビザを取得する必要はありません。日本のパスポートで一緒に帰国できます。

 日本人配偶者の実子が外国籍の場合は、在留資格「日本人の配偶者等」を取得する必要があります。「等」には日本人の実子が含まれます。

 外国籍配偶者の子供で日本人の実子ではない場合、つまり「連れ子」の場合は在留資格「定住者」を取得する必要があります。連れ子定住者が認められる為には次の要件を充足している必要があります。連れ子定住者の要件は、連れ子が未婚の未成年であり扶養に入ることが確定していることです。日本法では未成年であっても、母国では成年に達している場合は審査が厳しくなります。成人している場合は、連れ子定住者として認められません。留学ビザなどの他の適切な在留資格を検討する必要があります。

(3)住所の確定

 在留カードを取得したら、居住地の市区町村役場で住民登録をする必要があります。既に居所が決まっている場合は、14日以内に届出を出す必要があります。まだ居所が決まっていない場合は、90日以内に居所を決めて届出を行う必要があります。住民登録を怠った場合は、罰金に処せられたり、在留資格を取り消される場合があります。失念には気を付けてください。

(4)生計要件の立証

 配偶者ビザの許可要件の1つに生計要件があります。これは日本で安定継続的に生計を維持できることを要求しています。身元保証人となる日本人配偶者の収入が低い場合は、この生計要件を充足できない危険性があります。特に海外から帰国したばかりで仕事が決まっていないなどの場合は、親族からの支援が受けられることや預貯金残高、資産を保有していることなど、多方面から生計要件を立証していく必要があります。

(5)婚姻の信ぴょう性

 配偶者ビザの許可要件の1つに「婚姻の信ぴょう性」が要求されます。この婚姻の信ぴょう性の立証責任は申請者側にあります。つまり、申請者が真摯な婚姻意思に基づく婚姻であることを証明する必要があります。婚姻の信ぴょう性に疑義が生じた場合は、偽装結婚と疑われ不許可になります。

 婚姻の信ぴょう性に疑義が生じる場合としては、交際期間が短い場合や年齢差が大きい場合、SNSやマッチングアプリで出会った場合、が挙げられます。この場合は、出会いや結婚までの経緯といった婚姻の信ぴょう性に係る事項は、慎重に説明し立証していく必要があります。

「記事監修」
加納行政書士事務所
運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/  

代表
特定行政書士 加納 裕之  
「学歴」  
同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学))  
明治大学法科大学院修了  
「専門分野」  
入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法