永住許可要件の1つ独立生計要件の基準は、世帯年収で判断されますか?
1,独立生計要件とは何ですか?
入管法は永住許可要件の1つとして、独立生計要件を定めています。独立生計要件とは、「独立の生活を営むに足りる資産又は技能を有すること」(入管法第22条第2項第2号)を意味します。すなわち、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることが必要とされています。
もっとも、入管法や入管庁の審査要領では、具体的に年収○○〇万円以上と規定されているわけではありません。実務上では、この独立生計要件をクリアするためには、外国人が一人暮らしをしている単身世帯の場合で、年収300万円以上が目安と考えられています。一方で、永住申請するためには原則10年以上日本に在留していることが要件となっているので、長期間日本で生活している外国人が永住申請します。したがって、永住申請する外国人は、日本で結婚し家族と共に生活している場合が少なくありません。この場合は、同居する家族の収入も独立生計要件の判断に考慮されることになります。もっとも、同居の家族の収入がアルバイト収入の場合は、世帯年収に考慮することはできません。
2,家族滞在ビザでアルバイトしている家族の収入を考慮できますか?
永住申請する外国人の家族が、家族滞在ビザで日本に在留している場合は、原則としては就労することは認められていません。もっとも、資格外活動許可を取得した場合は、週28時間までアルバイトをすることが認められています。同居の家族の収入がアルバイトの場合は、独立生計要件の基準となる世帯年収に考慮することはできません。また、「家族滞在」ビザに原則として就労を認めていない趣旨は、家族を扶養するために日本に呼び寄せることを認めたことにあります。
なお、資格外活動許可を得てアルバイトをしている家族が、週28時間以内の規定労働時間を超えて働いていた場合は、永住申請の審査に消極的に作用します。申請人の家族に対する監督責任が問われます。
3,配偶者ビザの家族の収入を考慮できますか?
申請する外国人の家族が、配偶者ビザで日本に在留している場合は、就労制限がありません。よって、正社員・アルバイトを問わず、また業種や職種を問わずに就労することが認められます。この場合は、アルバイト収入以外の正社員や役員報酬として得た収入は、世帯年収として考慮することが出来ます。
4,申請人や家族が非課税の場合は、どうなりますか?
配偶者ビザは日本人や永住者と結婚した場合に付与されるビザなので、申請人や家族が配偶者ビザを取得している場合は、日本に定着して生活し日本との関係が深いと判断されるので、永住申請に有利に働きます。しかし、申請人である外国人自身と配偶者の双方が住民税非課税の場合は、永住申請が困難になってきます。永住申請の独立生計要件は、課税証明書に記載された年収額によって判断されます。そのため、課税証明書は必須の提出書類とされ、申請人が「配偶者」ビザを有している場合は、直近3年分の課税証明書を提出する必要があります。申請人と配偶者の双方が非課税の場合は、独立生計要件の判断に不利益に働きます。
さらに、永住許可要件の1つに「その者の永住が日本国の利益に合すること」(法第22条第2項本文)という国益要件があります。この国益要件の判断には、税金を適切に納め日本の国益に資することも考慮されるので、申請人と配偶者の双方が非課税の場合は、この国益要件の観点からも消極的に働きます。税金対策として実際には扶養していない家族も扶養に入れているケースもありますが、このような場合は永住申請が許可される可能性はありません。このような場合は、扶養家族を正確に申告し、課税さるようになってから3年経過してから申請することが好ましいと考えます。
なお、申請人である外国人が非課税で配偶者が課税されている場合は問題ありません。
「記事監修」 加納行政書士事務所 運営HP:ビザ申請サポートNavi https://visasupportnavi.net/ 代表 特定行政書士 加納 裕之 「学歴」 同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士前期課程修了(修士(法学)) 明治大学法科大学院修了 「専門分野」 入管取次・ビザ申請、在留資格、永住・帰化、外国人問題、国際公法 |